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オリナス家のトワ

第15章

 「部屋に籠って、小さい絵を描いている?ーーそれって・・サポールト、彼の絵を入手できる?」


 「トワ様のですか?」


 「一枚でもいいので、見てみたい。お願い」

 

 「わかりました」


 その日の夜、サポールトが持って来た絵は、モモガロンが、思っていた通りだった。彼・・転生人だ。きっと、精霊を持っている。


 「それにしても・・・下手過ぎる。・・・これ、絵コンテなのかしら?」


 「サポールト、いつでもいいから、直接、シャドウ宰相にこのメモを渡して下さい」


 「マルサナ、そとのプールに水を張って、私の部屋の窓の近くに置いてくれる。それと、ヒロイが遊ぶと危険だから、職人たちに、至急、フェンスを作らせて下さい」


 「これで、万全だわ。さぁ、いつでもどうぞ! 」


 数日後、シャドウ宰相は、モモガロンの部屋の外にやって来た。

 「お待ちしていました。シャドウ宰相」


 「ああ、このプールにも水がたっぷりで、感謝するよ」

 「夜も遅いので、手短に話します。これです」


 モモガロンはトワの絵コンテをシャドウ宰相に見せた。


 「・・・・・・」


 「随分と下手な絵だが、これが何か?」


 (シャドウ宰相と私の、時代の接点ってあるのかしら?もしかして、ゲームもわからなかった?)


 「シャドウ宰相・・テレビゲームって、知っていますか?」


 「イヤ・・」


 「やっぱり、この前の説明で、ゲームキャラ<龍<猫って、話をしましたよね。その説明はわかりましたか?」


 「ああ、きっと、ゲームキャラと言う物は、空想・架空の存在なのだろうと、思った。それと、この訳がわからない絵は共通しているのか?」


 「はい、多分、これは絵コンテで、空想や架空の物語を絵で表して行く、最初の絵です。この絵から、物語が始まります」


 「ーーー物語はこの国でも、空想や架空な物ばかりだが?」


 「なんて説明したらいいのか・・、この絵がゲームキャラになる事もあります」


 「ーーーーーー」


 「誰の絵だ?」


 「貴族学校に通う、オリナス家のトワです」


 「彼は、君とは本当に遠い親戚だ」


 「そうです。多分、私と彼がいた時代は共通点があって、もしかしたら、同じ国かも知れません」


 「それでは、精霊持ちだろうな?」


 「そうでしょう。でも、おばあ様の家系で、私と同じ血が流れているとしたら?もしかしたら『白』の可能性はないでしょうか?」


 「もし仮に、悪の精霊持ちでも、絶対に、国王陛下に挑戦はしないと、思います」


 「どうして?」


 「聞く所によると、彼はただ一人のオリナス家の人間です。立場は、私と一緒です。馬鹿な考えはしないかと、いい方向に考えました」


 「うーーー。どうするか?」


 「どうしましょう?」


 「この事は国王陛下に報告してもいいか?君の精霊が教えてくれたとか、言って・・・」


 「そんな簡単に、国王陛下にご報告するのですか?」


 「簡単でもないが、彼は君とは親戚だし、白と黒だったら、今は、白を増やして行きたいのが本音だ」


 「彼を呼び出すのですか?・。・また、裸で?それは現代人には、ちょっとキツイと思います。誰でも、気が動転して、自分の精霊を完成型にして、戦いを挑むと思います」


 「そうか?」

 「そうです」


 「では、君が彼を呼び出してくれ。学生室でいい」


 「どうして、私がですか?何度もお願いしました。わたくしは、お国の為に、助けるつもりは本当にないです」


 「しかし、この案件は、君の持ち込み企画だから、---そういう事で、頼んだ。それでは夜も遅い、失礼するよ」


 「え!! ちょっと、持ち込み企画・・・って、あ~~親切心が仇となった。失敗だ・・・・」


モモガロンはその下手な絵コンテを持ち、立ちすくんだ。


 「こんな絵! ・・あ〜〜!! もう! 教えるんじゃなかった」


 モモガロンは、その絵を見て、決心したように、自分の机に向かった。


 モモガロンは、前世で、同人誌を作っている友達がいた。彼女は本格的な子で、彼女の家に遊びに行って、制作を手伝った事があった。その時代は、手書きが主流で、できる事といえば、少しの筆入れと、消しゴム消しくらいだったが、大学時代は時間を持て余す事もあり、手伝うことも好きだった。


 「あの時、彼女の絵とストリーが好きで、通っていたけど、このコンテ・・・ヒドイ! でも、内容は、なんとなくわかる・・・こんな感じにしたいのかしら?ーーとにかく、やってみよう!これよりは、絶対に良いはずだ! 」


 一晩かけて、1枚の絵を完成させた。


 次の日に、サポールトにこの絵を持たせ、トワにスワルトイ領の学生出に来るように、伝言を頼んだ。



 トワは貴族学校では、友達もなく、ひたすら目立たない様に生活していて、いつも歩く道さえも日陰を好んでいた。


 校舎の壁、ギリギリをいつもの様に歩いていると、物凄く目力のある背の高い学生に、前方を塞がれた。

 (ここは、貴族学校だぞ! な、殴られる事は、無いはずだ・・・、多分・・)


 「き、きみ・・・、」トワはそれしか言わないで、通り過ぎようとしている。


 「トワ様、失礼は承知で、話しかける事をお許し下さい。私はスワルトイ領のサポールトと申します。モモガロン様より、コチラをお渡しするように、頼まれました」


 「モモガロンって、誰?知らない・・・じゃあ・・・」


 その時、すかさず、サポールトは1枚の絵を見せた。


 「これ・・、僕の・・、これ、どうしたの?」

 「モモガロン様がお描きになりました」

 「・・・・・・」


 トワはしばらく考えて、完成した1枚をじっと見ている。

 「何処に、行けばその人に会えるの?その人は、誰?」


 「では、明後日、領土棟のスワルトイ領の学生室に、お昼休みにいらして下さい。昼食をご一緒したいと、モモガロン様は、申しております。そちらで、お待ちしています」


 「ーーー、その人はどんな人?」


 サポールトは、トワの質問には答えず、その場を去った。


 サポールトは、トワが必ず来ると確信を持って、その事を、モモガロンに報告し、


 「では、内密に、シャドウ宰相にも、伝えて下さい」


 「・・しかし、もし、トワ様が来られなかった場合は?」


 「大丈夫よ、その時は、王宮から、彼に呼び出しが行くでしょう。その方が、本当はいいの・・」


 「ーーわかりました。この後、直ぐに、お伝え致します」


 「オタクのトワくん、来ても、来なくても大丈夫。ゆっくり、考えて下さい」



 2日後、スワルトイ邸の厨房に頼んでいた昼食を持参して、5人は学校へ向かった。トワは、相変わらず、壁や塀に沿って、歩き、初めてみる領土棟を見上げ、少し震えながら、従者に伝えた。


 「僕は、今日は、スワルトイ邸の学生室で、食事に招待されているから、昼食は要らないよ」


 トワの従者は、トワが小さい頃から付いているトワ専用の従者で、口をあわあわして、


 「ぼ・ぼっちゃん。それは、本当ですか?旦那様にはご相談致しましたか?」


 「ーーううん、僕は父上とあまり話さないから・・、した方が良かったのかな?どうする?行く?ヤメる?」


 「それは、なんとも・・判断しかねます。・・・行っても、行かなくても・・我がオリナス家の威信に関わります。坊ちゃん・・・せめて、前日にでも、私にご相談くだされば・・・」


 その時、後ろからシャドウ宰相が現れて、

 「オリナス家のトワ様ですね。さぁ、ご一緒に行きましょう。彼らがお待ちかねです」


 「え??」


 トワと従者が、躊躇っていると、シャドウ宰相が、

 「従者は、遠慮して下さい」と言って、強引にトワを連れて学生室に向かって歩き出した。


 従者は、ただ、見送るしかなく・・・思いっきり、今後の事を心配し始めた。


 「坊ちゃん、せめて、どうかその方が、誰か、ご存じでありますように・・・・」



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