危険な新学期
第14章
青龍を披露してから数日の間に、モモガロンは沢山の物を職人たちに発注した。
例えば、キャットウォーク、例えば、キャットタワー、モモガロンだけではなく、猫たちにも体力増進を図る狙いもある。
「さぁ、にゃあ様、皆さんも、動きましょう!! 」と言って、大きな猫じゃらしも、作ってもらった。
国王陛下の特別執務室は、こうして、モモガロン仕様の現代風な部屋へと模様替えして行った。
ある日、スワルトイ邸の職人に頼み、製麺機を作ってもらい、時間があるので、小麦粉を粉ね、生パスタを作っていると、シャドウ宰相がやって来て、一緒にランチをした。
二人で、前世のパスタの話をしていると、国王陛下もいらした。仕方なないので、もう一皿作り、お出しした所、それから、時間が許す限り3人での、昼食会が恒例になった。
「モモガロンの作る料理は、見た事もない料理ばかりだが、新鮮でおいしい」
「陛下・・、毒見の方とかは、いいのでしょうか?」
「う~~ん、僕が死んだら、困るのは君たちだろう?だから、大丈夫だ。いちいち気にしていたら、生きて行けないし、それに、にゃあの方が、危険を察するのが早い」
「そうなのですね。なんて賢いにゃあ様でしょう」
「それにしても、モモガロンは、にゃあ様の扱いが抜群にうまい。どうして、彼らのして欲しいことが、そんなにわかるのか?あのキャットタワーなんて、場所の取り合いが始まっていて、なぜ、あの場所がいいか、理解できない」
「陛下は、日頃、運動はなさっていますか?やはり、公務が多くて、そのような時間はありませんか?」
「いや、それなりに、訓練とトレーニングはしているつもりだ。モモガロンのように、部屋の中で、音楽に合わせて、鍛える事はしないが、普通にしていると思う」
「にゃあ様たちも、動きたいのではないでしょうか?体力増進です。昼寝ばかりでは飽きます」
(私のエナジー頼りでは困ります。)
「う~~ん、そうなのか・・・」
「国王陛下、最近は、どうですか?何かありましたか?新聞には陛下のご活躍が載っていませんでしたが・・?」
「ーーーモモガロンは、去年の爆破テロを覚えているか?」
「はい、一番の被害はバルガガ廷だと、聞きましたが、それは・・・・」
「どう思う?」
「最初は目くらましだと、思っていたのですが、もしかして、バルガガ伯爵の事を、すでにご存じだった人間がいたとか?」
「ああ、流石に鋭いな。あの爆破テロは4ケ所同時多発テロで、その後、移動中に、それぞれが自爆している。王都に爆薬を持ち込む事は、王宮の役人、官僚を使わなくては、どうにもできない」
シャドウ宰相が、
「王都門が開き、今回、国王は本気で、王宮内の情報源を探し出すおつもりだ」
「・・・・・・」
「でも、なぜ、バルガガ廷が狙われたのでしょうか?彼は国王陛下に反逆する者です」
「ーーーーーー」
「私が一番最初に思った事は、王都門を閉める事が目的だと・・。しかし、シャドウ宰相の占いで、王都門は鬼門ではないと出て、再び、門が開き、多少の悪の精霊達は、にゃあ様に挑戦してきますが、今のところは、大丈夫な状況です」
「その人の目的がわかりません」
「ああ、本当にそうだ。しかし、シャドウ宰相が言うには、にゃあ様が連戦しても、勝利出来ているのは、君のエナジーのおかげだと言っている。その人間にとって君の存在は、無視できない存在でもある」
「それって、私が狙われる可能性が出て来たと、言う事ですか?」
「今は、五分五分だ。もうすぐ新学期が始まる。他の4人にも言ったが、毎日が気を抜けない日になる。十分に気をつけてくれ」
「そんな・・・・。私を巻き込まないで下さい」
「すまない。最初は、本当に、にゃあの為だった。しかし、君が、にゃあに無くてはならない存在だったとは、僕は、本当にその時は知らなかった。だから、この件が終わるまでは、十分、気をつけてくれ! 」
モモガロンは王宮からの帰り道。
「どうして、こんなことになったのかしら・・・ただ、にゃあ様が可愛くて、一緒にいるだけだと、思っていたのに・・・最悪だ!! 」
次の日からは新学期が始まった。
5人は、全員、引き締まった顔で、何も言わずに、登校した。
「ホラ、あの、5人、来たわよ」
相変わらずのヒソヒソ話が、5人を襲っていた。それには理由があり、2学年になっても、5人の席順はいつもフォーメーションだった。
「どうして、彼らの席は、学年が変わっても、クラスが変わっても、変化はないの?おかしいでしょう?」
「じゃあ、誰かが、あの5人に聞きに行けよ」
「そんな事・・、できるはずない。両親からは、スワルトイ家とは、関わる事を禁じられている」
「お父様が言うには、あのモモガロンって、スワルトイ公爵の奥様の遠縁らしいわよ。公爵様も、物凄く可愛がっていて、王都のスワルトイ邸では、公爵様の次の立場みたい」
「うっそ~~!! 」
「それって、スゴイ情報だよ。今まで、すべての貴族達は、スワルトイ家は公爵様の血縁しか、考えていなかった。まさにダークホースだ」
「でも、大奥様の血縁なら、一つ上の学年に、在籍しているのでは?確か・・・オリナス家のトワ、確か、オリナス家の嫡男だ。それなら、彼らは親戚なのか?でも、モモガロンの家は男爵家だと、誰かが言っていなかったか?」
「校内で、彼らが話している所は、見たことがない。まぁ、伯爵家と男爵家では、格式が違い過ぎて、モモガロンが、トワを頼る事はできないだろう」
「とにかく、レインやカイレキの事がある。彼らには、近づかない事が一番だ」
「もちろん、話しかける気なんて、さらさらありませんけどね。ホホホホ・・・」
「早く、いなくなって欲しいだけだ」
「もしもし・・・、聞こえていますけど・・・」
「お嬢様・・・」
「気にしない、それより、本当?おばあ様のご実家の人間が、この貴族学校にいらしゃるの?」
「はい、本当です。オリナス家のトワ様です」
「でも、お爺様、何も言っていなかったけど?」
「ーーー、はい、トワ様は少し変わっていらして、公爵様も、お嬢様には近づけたくないお方だと思います」
「??????」
「丁度、窓の下を、今、歩いている方が、トワ様です」
モモガロンはシルガーが目で教える方向を見た。
その男の子は、髪がボサボサで、顔が半分前髪で隠れているようなオタク系の男子学生だった。
「オリナス家は使用人がいないの?没落しているの?」
「いいえ、オリナス家は、今でも、ご立派な伯爵家です」
「今・・でも?」
「オリナス家とスワルトイ家は、昔は良好な関係を築いていました。しかし、両家とも、子孫が少ないのです。オリナス家は、トワ様しか爵位を受けづぐ資格がある人間がおりません」
「ヴィッセルス国は、男子でも、女子でも、直系しか爵位を受けづぐ事が出来ません。だから、ガーデニュー様と奥様が、事故に遭われた時に、オリナス家は公爵様を責めたそうです」
「どちらかの家に、ご兄弟がいらしたら、両家とも安泰だったのですが、今は、どちらとも厳しい状況です。だから、公爵様はオリナス家にも、モモガロン様の事は内密にしています。当然、ヒロイ様の事は極秘です」
「ヒロイを奪われる可能性があるの?」
「・・・・お嬢様でしたら、あのトワ様と素晴らしいヒロイ様なら、どちらを嫡男にしたいですか?」
「でも、彼・・勉強が出来そうな風貌よ」
4人は首を横に振る。
「運動がずば抜けていい?」
また、4人は首を振る。
「芸術家?」
「それは、近いかも知れません。彼は部屋に籠って、一日中、小さな紙に絵を描いている様です」