青龍披露
第13章
モモガロンは、この世界に来て、初めて、だらけた生活を送っていたが、本当にこれではいけないと、前世の記憶が、モモガロンに教える。
そして、色々考えて、自室にプライベートのジムを作ることにした。
スワルトイ邸のお抱え職人は、本当に優秀で、モモガロンがいい加減に描く、現代の製品を、端正に制作してくれる。
例えは、ヨガマット、大きな鏡、手足を交互に動かせるマシーンなど、スポーツジム器具をモモガロンの部屋に設置した。
お爺様のお許しを得て、マルサナとシルガーと一緒に屋敷の外周を走るマラソンも始めた。
昼間、王宮で昼寝をしている為、朝の目覚めは、すこぶる快調で、体をほぐしてから、走り、入浴、ヒロイと遊ぶようになった。
周りの4人は、忙しい中でも、常にモモガロンに付き添い、トレーニングにも好意的発言が多い。
「お嬢様、全体的なトレーニングを好まれますか?」とマルサナは真剣な顔で聞く。
「具体的な希望はないのですが、国王のにゃあ様と過ごすには、今の体力では駄目だと思って、何かいい方法はある?」
「体力増進が目的でしたら、このマラソンはとてもよろしいかと思います。今のお嬢様には、1周が適量ですが、徐々に距離を伸ばして行きましょうか?」
「ええ、大体、この外周、どの位の距離なのかしら・・・1周ですでに限界に近いですけど・・・」
「大体、2km以上でしょうか」
「え・・・え・・、そんなに広いの、では、最初は半周でお願いします」
「では、半周からのスタートで、徐々に、1周を目指しましょう」
王宮通勤が始まってから、1ケ月が過ぎた頃に、モモガロンは国王陛下より、郊外の広い皇室専用の山の中に誘われた。
王宮で、悪の精霊が現れる事はあまりない。それは、本人が、王宮内に侵入しないと、出現しないからだ。だから、国王の視察の時が、狙われる。
ある意味、国王が餌を撒いて、討伐する感じになっている。
もしも、この国で、国王が破れてしまったら、一体、この国はどうなるのだろうか?
正に、ネットゲーム内にいる様な戦場で、市民は、暮らさなければならなくなるのか?それは地獄と言えるのではないか・・。
山の中は、本当に広大な平地に整地されていた、今回の移動に関しては、いきなりの申し出で、側近たちにも、内緒で進められた。
移動も、極めた質素な車での移動になった。質素な車はポロが付いているトラック型のボロ車で、思いっきり揺れて、途中で、気持ちが悪くなった。
「お嬢様、大丈夫でしょうか?」
モモガロンは青い顔をして、シルガーを見て、小さく頷いた。
その時、三毛猫くんが現れて、モモガロンに寄り添い、何とか目的地まで、たどり着いた。
今日は天候にも恵まれて、暖かい日差しで、その広い大地に足をつけた瞬間、気持ちいいと感じた。
「気分はどう?」と国王陛下は聞く。
「ええ、何故か、降りた瞬間に、随分よくなりました」
「うん」
「ここは、にゃあの聖地と言ってもいい。精霊たちの地としている」
「気分が良くなったら、君の精霊を私に見せてくれないか?」
「え!! ーーどうしてもですか?」
「ああ、どうしてもだ。君の精霊の状態を知る必要がある」
モモガロンは少し考えて、手に胸を当て、心の中で、自分の龍を呼び起こす。
「さぁ、出ておいで、聖なる地に姿を表して! 」
モモガロンの小さな体から光と共に、青い龍は姿を表した。それは、いつも一緒にいる4人も、初めて見る光景だった。
青龍は、モモガロンに寄り添い、フワフワと浮いている。
「青龍は少し小さくなった様に感じます。どうしたのかしら・・・?」
「やはり、きっと、にゃあ様が君の精霊から、少しづつエネルギーを、貰っているのではと、ずっと、思っていた。だから、君は午後には眠くなってしまう」
「ーーーそうなんだ」
「でも、私は別にいいですよ」
「え?」
「いいの?」まわりは騒つく
「はい、私は、特に精霊を使う予定はありません。どこかで、突然、勝負を申し込まれても、困るので、青龍が小さくなる事は、気にしません。私の望みは、殿下のにゃあ様が、このままダントツで強くて、勝ち続ける事。それは、私の願いであり、全国民の希望です」
「青龍は、いいのかな?」
「意志の疎通が、できるようになったら、聞いておきます」
「折角なので、皆様に、私と青龍が空を飛ぶところをお見せしましょう」
「お嬢様・・・特に、そんな事は・・・」
「大丈夫よね?ーーー私を乗せてくれる?」
青龍は頭を下げて、モモガロンを招き、モモガロンは、ドレスを捲って、青龍の背中に乗って、大空に舞い上がった。
「おおおおお・・・!! 」その場にいる全員は、声をあげ青龍に乗ったモモガロンを見送った。
「ねぇ、青龍・・・あなた、小さくなったけど、体は硬くなって、動きが機敏になっている・・・。もしかして、鍛えてるの?」
青龍は、長い首を後ろに伸ばし、モモガロンを見て、ペロリと、舌を動かした。
「ーーー私は、あなたを失いたくない。私には守らなくてはならない人がいるの、ごめんね。これからも、にゃあ様にエネルギーを取られて、小さくなっちゃうね」
「その代わり、2人で体を鍛えて、長生きしましょうね」
それから、モモガロンと青龍は、すべてを忘れてように、空を駆け巡り、交流を深めた。
「超、超気持ちいい〜〜〜!! 」
地上に降りてから、4人は急いでモモガロンの元に駆け寄り、
「お嬢様、大丈夫でしょうか?」
「ええ、大丈夫、いい子でしょう?彼・・・、私の気持ちを理解してくれています。感謝です」
「・・・・お嬢様・・」
シルガー達は、モモガロンの気持ちを知っているので、ただ、ただ、抱きしめて安全を確認していた。
「陛下、私の青龍は、きっと、納得してくれたと思います。これからも、にゃあ様が必要としてくれるのであれば、王宮を訪ねたいです。でも、これは、陛下の為でもなく、にゃあ様の為でも、ありません」
「1番は私自身の為で、次に、全国民の為です。だから、それ以上は、私は殿下の手助けはできません」
「私は青龍と共に、戦って、敗れ消える事はできません。ーーだから、何があっても助けません。わたくしが出来る事は、にゃあ様にエナジーを送る事、よろしいでしょうか?」
「うん、それでいい。それで十分です」
陛下がおっしゃるには、王都門が開いてから度重なる襲撃にあい、多少にゃあ様も疲れている様で、緊急的にモモガロンの青龍のエナジーを借りた。しかし、モモガロン自身の体力を奪っているのかもと、思い、それをずっと、気にしていたらしい・・。
「お嬢様は、本当に、それでよろしいのですか?」
「本当に、お体は、大丈夫なのでしょうか?」
「うん、大丈夫、まだ、若いし、元気だし。その代わりに、国王陛下の特別執務室を好きにしていいって、言ってくれたので、そこでは、体力をあげる為に好きにして良いって、お許しも頂いたから、そこは、良かったです」
「国王陛下は、お嬢様を大切に思ってくださり、私たちも嬉しいです。お嬢様、私たちは、本当に、あの青龍を使っって、戦うことがない事をお祈りしています。・・本当です」
「うん、わたくしは、ヒロイの為に生きなくては、ヒロイが成人するまでは、そばにいてやりたいです」
次の日からは、身軽なドレスを身につけ、モモガロンは王宮に向かった。