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秘密

第1章

 王都はずれにあるスワルトイ領土の学生寮。


 ドドドド~~~ン!!! ガシャ、ガシャガシャ!! ギギギギ・・すさまじい音が王都の町を襲う。

ダダダダダ・・・廊下を走る音が、近づいて来る。


 「お嬢様、お嬢様、起きて下さい。大丈夫でしょうか?」


 「お嬢様! お嬢様! お嬢様! 大丈夫ですか?」


 同じ貴族学校に通う、友人であり、護衛の2人は、急いで、モモガロンのもとに駆け付ける。


 モモガロンは飛び起きて、窓を開け、朝もやの中でも、はっきりの黒い煙が立ち込めている場所が数か所、確認できた。


 「お嬢様、危ないです。地下に避難しましょう。窓を閉めます」

 

 モモガロンは、ネグリジェのまま裸足で、地下に作られた作戦本部の部屋に入る。


 二人のメイドは急いでモモガロンの身支度にとりかかり、

 「お嬢様、お着換えです」

 「靴です」

 「お茶をどうぞ」


 モモガロンは、優雅にお茶を飲みながら、フカフカの椅子に腰かける。


 二人のメイドは、モモガロンと同じ年の、使用人兼護衛のシルガーとマルサナ、


 「今、サポールトとコベルは急いで情報収集の為に外に出て行きました」


 「王都の地図はある?」

 

 「はい、ご用意して有ります」


 「さっき、窓を開けて、確認できた、爆撃の後は、私が見た限りではこの4ケ所、他にも二人は確認した?」


 「はい、私が、丁度、厨房に入った時に音がしましたので、厨房の窓からは2ケ所、確認できました」


 「それは時間差があった?」

 「はい、ありました」

 「そうなると、この辺まで来る可能性があるわね」


 その時、「ドカーン」と言う音が学生寮の近くで鳴り響き、少しだけ地下のこの部屋も揺れた。


 3人の女の子たちはお互いを庇いあう様に、身を寄せ、揺れが収まるのを待った。


 「お嬢様、この後、どうなさいますか?」


 「この位の揺れなら、この寮は大丈夫、ただ、周りの木々が燃えると少し危ないけど、彼ら二人が外にいるのなら、きっと守ってくれるでしょう」


 「はい、」

 「朝食はある?」


 「はい、地下の食べ物だけでの食事になりますが、よろしいでしょうか?」


 「材料を見ましょう。有事があれば、この後、食料と水は貴重品に変わります。私達の分は、何があっても、お爺様がどうにでもして下さるでしょうけど、一応、点検しましょう」


 その後、モモガロンは材料の点検を、二人に指示して、自分でトマトリゾットを簡単に作った。



 モモガロンが転生したと気づいたのは、両親と一緒に襲撃され、一命を取り留めた時に記憶が戻った。


 従者を含め4人での外出の帰りに襲われ、崖から車ごと落とされたが、両親二人はモモガロンを守り抜いた。

 最後の最後まで、二人の腕の中で、モモガロンを守ったのだ。


 数日後に、目が覚めて、中身の人間が入れ替わっている事を思うと、助けてくれた本当のモモガロンの両親には、申し訳ない気持ちで一杯だった。


 しかし、あまりにもお喜びになるお爺様の姿を見て、本当の事は告げられなかった。


 涙を流し、モモガロンを抱きしめ、神に感謝する老人に真実は残酷な事だとわかる。


 「お・じ・い・さ・ま・・、私は本当は仕事に追われたOLです」


 自分が亡くなった時の事は、覚えている。仕事で嫌な事があって、思いっきりお風呂の掃除をしている時に、足を滑らせて・・・・、どうして、天井まで掃除しようなんて思ったのか・・本当に後悔した。


 料理は一人暮らしの時に、自炊経験があり自然に出来たので、リゾットくらいは簡単に作れた。


 ヴィッセルス国にはお米があり助かる。流石に醤油や味噌等はないが、お決まりの中世ヨーロッパの様な国だ。


 「お嬢様・・・お食事を作られたのですか?」


 「ええ、簡単に二人の分も作りましたので、食べましょう」


 二人は遠慮して、なかなか席に着かない。食事を共にしたことは、この長い共同生活で一度もなかった。


 「今日は非常時です。座って食べて下さい。この後、何が起こるかわかりませんよ」


 二人は催促されて、初めて席に座ってリゾットを食べた。暖かくて酸味が聞いていて、チーズが優しいリゾットは、きっと初めて食べたに違いない。

 

 「美味しい!! 」二人は声を揃えて、賞賛した。


「すごく簡単だから、そんなに褒めなくても大丈夫です。目に入った物で作っただけですから‥」


 「食料はどうでしたか?」


 「はい、水はこの甕に入っているだけでしたが、ワインは200本程ありました。米、小麦、調味料は豊富にあり、後は缶詰や瓶等で、保存できるもの、チーズやバター、油は少しでした」


 「どういう意図で地下に保存しているのかしら?誰の指示でワイン200本も?」


 「・・・・・・」


 「私達も王都に来てから1ケ月です。地下の食料まで調べなかったのは痛手ですね。今後は少しずつ改善して行きましょう」


 「お嬢様、サポールトたちが戻って来ました」


 サポールトとコベルは急いで戻って、息を切らせながら、地下の会議室に入って来た。


 「お嬢様にご報告します。爆破は王都では、8ケ所、王宮の近くでは4ケ所、その4ケ所からの移動中に、もう4ケ所、襲撃したようです。我が寮の近くは生活区域ではなく、バルガガ邸が狙われたようです」


 「スワルトイ邸は無事でしたか?」


 「はい、スワルトイ邸の近くでは爆破がなかったようです。先程、スワルトイ家からの使者から確認があり、互いに無事だと、ご報告いたしました」


 「このような爆破テロを仕掛けた犯人たちはどうなったのですか?」


 「はい、国王は直ぐに王都門を閉めて、犯人確保に向かいましたが、移動中の4ケ所での爆破中に自害したようです」


 「隣国か内戦かそれでは調査に時間がかかりますね?」


 「ええ、王宮は今は大騒ぎでしょう。お嬢様、この寮は被害がありませんが、庭の木等は少し爆風の影響を受けて、木が折れたりしています。学校も当分は休校でしょう。この後はどうなさいますか?領土にお戻りになりますか?」


 「学校が休校なら、直ぐにでも帰りたいのが本心ですが、王都門は開くのでしょうか?」


 「ーーー隣国、国内、すべてを調べるとなると、1年以上はかかります。王都門が開くまでは時間がかかりますね」


 「学校が再開されるまで、部屋の点検、その後は庭等の整備、そして、地下室の充実に時間を当てましょう。王都門が開き領土に戻る時間がある時は、教えてください。急いで戻ります」


 「はい」


 5人は、その後、地上の部屋に戻り、眩しい太陽に目を細め、それぞれの仕事に戻った。


 「お嬢様、スワルトイ様から鷹が着きました」


 「お爺様、鷹は目立つからハトにして欲しいわ・・」


 しかし、その鷹が運んできた手紙は素敵な朗報で、お爺様と息子は、今、王都で過ごしていると書かれていた。


 二人とも無事で、心配はないと暗号文で記載されていた。



 モモガロンは現在の年齢は16歳、一年遅れて貴族学校に入学した。


 対外的には病気療養の為となっているが、15歳の時に妊娠して、3ケ月前に出産した。


 見知らぬ人と愛を交わし妊娠した夜の事は、あまり覚えていない。


 その日は、お爺様が60歳になる誕生会が領土の公邸で開かれ、大勢の人がスワルトイ邸には訪れていた。


 いつもの4人も朝からずっと忙しい、しかし、暗殺の標的になる可能性がある為に、モモガロンの存在はずっと隠されている。


 世の中の人々は、スワルトイ侯爵には跡取りがいないと、当然の様に噂をして、次の席を狙っていた。


 その夜、賑やかな灯りを遠くの庭から見ていたまでは、覚えていて、その後、水の音がする中で、誰かとダンスをして、微笑み合い、語り合い、愛し合った微かな記憶は残っている。


 しかし、その人物が誰なのか、どのような顔をしていたのかは、目が醒めた時には思い出せずにいた。


 「彼は、一体、誰だったの・・・・?」



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