オカンと教会 ~閑話~
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m(;∇;)m♪♪♪
「なるほどねぇ」
タバスの話を聞いて、幼女は納得する。
いわく教会は十五年ほど前にやってきて、勝手に活動を始め、人々から多額の金銭を巻き上げた。
教会とは基本的に寄進で成り立つものだ。婚姻や弔いなど、こちらから頼む事には対価が必要となるが、初添えや立志式のような行事は誰でも無料で参加出来る。
なのに此所の教会は、それら行事にも寄進を要求したのだ。
女神様の御慈悲で成り立つはずの儀式。しかし、これを行えるのは全属性を持つ司祭だけ。
御加護や祝福を子供らに与えるため、親や街は慎ましい蓄えから費用を捻出し、なんとかしていた。
さらにこの街は病が頻繁に流行る。
今なら分かるが、加護がない難民達は病にかかりやすかった。通常の体調不良でも、加護による自然回復がないため、悪化しやすく死に至る事も珍しくない。
こちらの人間は御加護がある事が前提なせいか、身体的に弱いのだ。
病原体による流感などではポーションも治癒魔法も効かず、バタバタと人々が亡くなる。
それらを教会は不信心な難民だから、神聖な治癒魔法が効かないのだと罵っていたらしい。
通常の治療にもポーション作成にも多額の寄進を要求し、払えない者は只病に耐えるしかなかった。
そんな中、稀に見る嵐に見舞われ、街は半壊状態になる。大勢の死者や怪我人が出て大混乱な時に、教会は平然と治癒に寄進を要求してきた。
どうせ不心得者の難民には治癒魔法が効かないのに、わざわざ手を貸してやるのだと。
聖職者云々より人として有り得ない行為である。
結果、多くの人々が亡くなり、教会側の言い分を信じてしまった人々が教会に傾倒し、なけなしな金銭を巻き上げられる形となった。
そんな切ない人々の中にタバスの母親もいた。
彼女は自分の食費や生活費を削って教会に寄進し、タバスの人生に幸が多からん事を毎日祈っていたらしい。
しかし無理が祟り、栄養失調と極度の過労からタバスの母親は倒れてしまう。
教会に治癒魔法を頼もうと、タバスは自分の有り金全部を持ち出し、母親のお金も家中探した。
だが家中探しても銅貨数枚しか出てこない。
訝るタバスは、ようよう事の起こりを母親から聞いたのだ。
戦争から幼いタバスを守るため、悪い事と知りつつも母は幾度となく罪を犯した。
罪の自覚がある者ほど教会の言葉に怯え、冷たい懺悔の意識が身に凍みる。
泣きながら母親は、ごめんなさいと謝った。
自分が咎人なばかりに。タバスには幸せになって欲しくて、なけなしなお金を工面して教会に寄進していたのだと、母親はハラハラ涙をこぼした。
教会に憤るタバスだが、背に腹は代えられない。
あるだけのお金を持ち、タバスは教会に駆け込んだ。しかし、教会は治癒を拒絶する。
若いタバスの蓄えでは、重度の栄養失調と極度の過労による母親の治癒には足りなかったのだ。
タバスは叫んだ。母は教会に通い、あるだけのお金を寄進していたはずだ。信心深い母に慈悲をくれと。
教会側は呆れたような顔でタバスを見た。
教会への寄進は神々への捧げ物であり、治癒に対する対価とは別物だと言う。
愕然とするタバスの目の前で、無情にも教会の扉は閉められた。
結果、タバスの必死の看護も虚しく母親は亡くなり、タバスは二度と教会に近寄らなくなった。
しかしこれが、ある意味、人々の眼を覚ましたのだ。
どんなに信心深く寄進しても、教会は掌を返すのだと学んだ人々は、しだいに教会から足が遠退き、やむにやまれぬ事情でもない限り教会には頼らなくなっていった。
タバスの母の死は無駄ではなかったのである。だからどうだという話だが。
それが今回の事にも繋がったのであろう。
教会関係者を追い出した時の街を揺るがす人々の歓声。
どれほど辛酸な苦渋を舐めてきたのか分かるという物だ。
皇帝からの派遣となれぱ無下にも出来ないし、儀式の関係もある。忌々しく思いつつも綱渡りのように最低限の付き合いを余儀無くされていた。
そんな所に現れたのが三人だった。
瞬く間に貧しい街に食糧を行き渡らせ、仕事を作り雇用を生み出し、人々に糧をあたえ子供らに教育を施した。
孤児院には教会も併設されている。皇帝から派遣される前は、自発的に作られたこの小さな教会に人々は通っていた。
女神様を祀りドラゴン様の教えを説く小さな教会。
残念な事に、アルス爺は二属性。司教の資格はないが、伊達に長くは生きていない。
ドラゴン様の知己でもあったアルス爺の話は、とても楽しく為になる。
件の教会が孤児院や街の人々を虐げるようになるまで、人々はそれなりに信心していたのだ。
教会に金銭をむしりとられる貧しい暮らしが街を変えてしまった。
とつとつと語るタバスを見つめ、シメジな女神様は優美に微笑んだ。キノコなのに何故か感じる高貴さ。
《貴殿方の祈りは届いておりましたよ。荒れ果てた大地に根を下ろし、村を作り子供らを慈しみ、街にまで発展させた。頑張りましたね。貴殿方は、わたくしの誇りです》
涙ぐむタバスに、女神様は撫でるように彼の頭で揺れた。努力が報われた瞬間だった。
これからは食べるに困らないし、慈悲深い司祭様もいる。アルス爺は治癒魔法で対価は取らないと宣言した。代わりに余裕があれば寄進してくれれば良いと。
これがあるべき聖職者の姿だろう。
驚く街の人々に、アルス爺は当たり前な顔で笑っていた。ストラジアでは常識じゃよ? と。
今は亡きストラジア。そこは楽園だったのではなかろうか? 街の人々は眼を見張る。
教会が利権を独占し、暴利を貪るこの世界は地球の中世と良く似ている。ならば欠点も同じだろう。
きっとストラジアという国は日本に似ていたのだ。ドラゴンの教えは八紘一宇とほぼ同じ。だからこそ女神様の守護があった。
天照大神。貴方と女神様は良く似ていらっしゃる。
自分の祖先にあたると言われる日本の一柱を思い浮かべ、千早はハッとした。
シメジ.....キノコ。菌糸類。
萌える大地の象徴に良く喩えられる菌糸類。大地そのもの全域を満たし、どこにでも必ず存在する。
天と地は表裏一体。
天照大神。シメジな女神様。そして皇に伝わる懐剣、天土。
まさか.....
じっとりと冷や汗をかき、幼女は女神様を振り返った。
すると女神様は既に千早の傍におり、嬉しそうに幼女の周りを高速で飛び回ると、踊るように跳ねながら頭にのる。
《ようやく気づいてくれましたね。こちらからの干渉は神々の不文律から出来ませんでしたが、貴女が自ら答えに辿り着くと、わたくしは信じておりましたっ♪》
マジかぁぁぁ.....
踊るシメジと落ち込む幼女。
周囲は訳もわからず、首を傾げていた。
場所を変えて再びギルド会議室。タバス、アルス爺、リカルドと、幼女の保護者二人。
口裏合わせが出来るメンバーで、千早は自分の推測が当たってるのか女神様に尋ねる。
女神様は歓喜の踊りを披露しながら頷いた。
聞けば神々にも魂は有り、星の崩壊とともに人の魂と交わるのだという。
人も神も魂は同じ。ただ神となるか人となるかは前世の行いしだい。新たな世界の創造神ともなれば、非常に徳の高い魂が選ばれる。
魂は卵子と同じで、たまに分かたれる事もあり、それが天照大神とシメジな女神様だったのだ。
なるほど。だから神話の続く日本では、神をクビになって人間になったり、人間が徳を積んで神になったりって話がある訳か。魂の理なわけだ。
《星が生まれた時、わたくしも生まれました。そして魂が分かたれた時、創造神が二柱では人心も分かたれると、小さな魂だった妹は別の世界の親神様の子に生まれなおしたのです。それが貴女の国の一柱。わたくしの世界と貴女の世界は姉妹同然なのです》
だからこそ地球のSOSに応じたのか。
しかし千早には、ふとした疑問が浮かぶ。
「いや、うちらの御先祖様が女神様の姉妹として、あたしはただの子孫だ。姉様ってのはおかしくね?」
女神様は、キョトンと幼女を見上げる。
《だって、神々の中で貴女だけですもの。わたくしと列なる魂の持ち主は。なので、妹で間違いありませんよ。わたくし御姉様ですから♪》
ん? 話が分からん。
「何故に神々の中に、あたしを混ぜる?」
《まだ完全ではないですが、千早ちゃんは神に並ぶ者ですよ?》
「何時から?」
《ダンジョンで肉体を再構築してからですわ》
「理由を聞いても?」
《ダンジョンは神々が作りたもう神秘の塊。神々の凝縮された神気で千早ちゃんの身体は構築されました。半人半神となったのですが、その人の部分が元々神に属する肉体だったため、この世界では、ほぼ神と言って間違いない存在となりました》
しかもその半分は別たれた妹神の血筋。女神様に次いで、高位の神格を持つと言う。
唖然とする千早に、絶句する周囲の人々。
《だからね。千早ちゃんは、わたくしの妹なのです♪》
ようやく姉と呼んでもらえた嬉しさからか、女神様はえらく饒舌だった。
場所をギルドの会議室にかえてて良かったわ。
千早は長く細い溜め息をはくと、絶句している人々をギンッと鋭く睨めつける。
「箝口令ッ! ここで聞いた話は絶対に他言しない事っ!! もしバレたら、あたし逃げるからねっ!!」
半泣きで叫ぶ幼女に、周囲は高速で頷いた。
このままでは、あたしのまったり異世界ライフが音をたてて崩れてしまうっ!
今更感満載な事を考えつつも、千早は異世界まったり観光ライフを諦めていなかった。
地球では神と至るに険しい試練と道がある。
地球の神々は半神となった愛しい子が、異世界で新たな神になると考えて案じられていた。
しかしそれは杞憂に終わる。
妹に激甘な女神様によって、千早は問答無用で神属とされていた。さらに自ら努力を重ね、レベルを上げて、神に相応しい力も手にいれていた。
現在の幼女のステータス。
チハヤ・スメラギ 五歳 レベル128
職業 主婦 調理師 農夫 牧場主 教師 断罪者 神々の弟子 ドラゴンの孫
称号 試練のダンジョンを初踏破せし者 世界を渡りし者 精霊に愛されし者 神々に愛されし者 疚しきを祓う者 世界を愛し者
体力75881 筋力13227 俊敏25741 器用17463
知力44953 魔力99805 知略67438 野心1556
固有スキル 鑑定 インベントリ 状態完全無効 全属性精霊支援極 全属性魔法極 自動回復極 結界魔法極 空間魔法極 全生産スキル極 全属性スキル極 全変質スキル極 全育成スキル極 女神の恩寵 神々の化身 神域 レベル最短記録×128 レベル最年少記録×128
祝福 地球の神々の愛し子 創造神ネリューラの妹 慈愛神リュリュトリスの微笑 叡智神グリスワルドの知己 賜金神ガイアシルダスの営地 戰軍神メリクリシュテアの剱先 護僮神アマラディアティの庭師
加護 地球の神々の加護 創造神ネリューラの加護 慈愛神リュリュトリスの加護 叡智神グリスワルドの加護 賜金神ガイアシルダスの加護 戰軍神メリクリシュテアの加護 護僮神アマラディアティの加護
世界平均レベルが21。その平均ステータスが300前後。それを踏まえあらためてみても、千早のステータスは人外を遥かに上回るステータスである。
これで、まったりな異世界ライフをのぞむ千早の思考が間違っているのだが、本人は気づかない。
はい。お久し振りに千早のステータス出しました。....人外だと思ってましたが、あらためて計算してみても人外ですね。初期の話に出てますが、レベル記録がモノを言っています。それがないなら、体力、魔力はここまで高くないです。三万前後かな。.....それでも人外ですね。
( ̄▽ ̄;)




