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オカンは異世界へゆく

ドタバタしつつも異世界についたオカン。開幕トラブル発生。オカンの異世界道中始まります。

 あとまたまたブクマいただきました、ありがとうございますっ♪♪

♪ヽ(´▽`)/



《だから今最奥なら、そのまま草部を連れ帰れっ!》

政府依頼(ガバメントオーダー)に従い全力をもって決行した結果であり、貴方の私情に従う謂れはありませんっ!!」

《一機動隊員である以上命令に従う義務があろう!》

「機動隊は自衛隊とは異なる組織です。さらに言うなら草部の辞表は既に受け取られています。奴は今ただの探索者です」

《誰が受けたぁぁぁっ! すぐに取り消せっ!!》


 ちなみに辞表を受け取ったのは初ダンジョンで指揮をとっていた上司。彼は今までの草部の功績を重んじ、快くとは言えないが草部の意思を尊重してくれたのだ。そんな機動隊上司を木之本は尊敬する。


 後ろで何やらキャン×キャンやっているのは見ない振り。千早は深夜一時を差す時計を静かに見つめていた。

 まだ人がいるかもしれない。後一時間ぐらい待つか。そう考えると、ドラゴンの首に凭れて小さく欠伸をする。

 

『寂しくなるのぅ』

「なんで? これがあるじゃん」


 千早は軽く腕を挙げると、ドラゴンからもらった腕輪を示す。ドラゴンの眼が軽く見開いた。

 ドラゴン自身、気づいていなかったのだ。

 ここは異世界と地球を繋ぐ狭間の空間。どちらの世界からも例の魔法陣には転移可能なのである。

 女神様が作られた狭間を繋ぐダンジョンが異質である事を理解していなかった。

 ドラゴンの力では時空を渡る事は出来ない。その先入観が腕輪の可能性に気づかせなかった。

 言われてみれば可能だろう。

 そして当たり前のように、その可能性を理解していた幼子を、驚愕の眼差しで見つめる。

 にししっと笑う無邪気な幼女。彼女の発想や想像力は計り知れない。


『ほんに.... 先が楽しみじゃのう』


 これが地球人というものか。


 あちらの停滞した世界で良い活性剤になるだろうて。ドラゴンは、うっそりと笑った。


 あちらこちらでワイワイやってるなか、草部らも某か話をしている。


「俺らを記録に残す?」


 首を傾げる草部に、神埼は頷いた。


「世界初の渡りですよ。許されるなら生配信したいですが。どうです?」


 草部は軽く思案する。ダンジョンの良いデモンストレーションになるだろう。チラリと幼女を見ると、彼女も同じ考えなのか、にっと口角を上げた。


「良いみたいだ。ただしインタビューとかはなしな。そのままの風景を流すだけで」

「了解です。詳細やコメントは字幕で入れます」


 神埼と木之本は全体が映る位置に数台のカメラを固定し、何度か切り替えながら映りを調整する。

 

「駄目だ、映らないみたいだ」


 地上には届かないらしい。

 

「生配信は諦めるか。編集してから地上に流そう」


 そうこうしているうちに時間がきた。草木も眠る丑三つ時。今が一番人気の無い時間だろう。


「じゃ、行くね爺様。ちょくちょく遊びに来るから」

『うむ、達者でな』


 ドラゴンの鼻面に抱きつきながら、千早は暫しの別れを告げた。

 するとその真上で風が渦を巻き、ポンっと女神様が顕現する。


《あらあらまあまぁ。沢山のお見送りね。嬉しい事ね、千早ちゃん♪》


 女神様初見の隊員達は呆気にとられ、驚愕の眼で踊るシメジを凝視していた。

 しかしそこに鋭い号令が走る。


「全員整列! 日本のダンジョン開発に多大な貢献と助力をしてくださった最上氏と、同じく多大な貢献を残してくれた草部班長の門出を祝って、敬礼っ!!」


 ざっと音がたつほどの機敏さで一斉に敬礼を受ける。草部は寂しさに面映ゆさが混ざり、なんとも複雑な顔で敬礼を返していた。

 三人同じ場所に渡るには接触している必要があるという女神様の指示に従い、三人は千早を挟んで手を繋ぎ、件の祠の中へ入っていく。

 その後を木之本がカメラを持って追いかけた。

 すると暫くして敬礼していた隊員達の七割ほどが、驚嘆の声を上げる。


「え? あ?」

「なんだ今の? スキル?」

「お前もか? 俺も聞こえたっ」

「全属性精霊支援小?? マジか...」


 騒然とする彼らをチラ見し、ドラゴンはほくそ笑んだ。アレはもう、半分神の領域に脚を踏み入れておるからの。

 敬礼とは祈りの型違えだ。恩赦を得る効果のある儀式。まだ加護とはいかぬが、人々に恩恵を与えるくらいは出来よう。


 千早に敬愛や親愛を持ち、ただ感謝の気持ちで祈れば恩恵を得る。知らず知らずに千早は世話し世話になった拠点の隊員達に、得難い置き土産を残していた。

 

 素知らぬ彼等は件の祠奥で魔法陣の前に立つ。すると女神様が舞い踊り三人にキラキラした胞子を振り撒いた。

 初見の二人は呆然とし次に火花が散ったとき、草部は軽く悲鳴を上げ、親父様は微動だにしない。

 

「綺麗だ。....な?」


 薄く笑む親父様に千早は頷いた。


《準備完了です。私の祝福にインベントリ。あとは鑑定をつけました。あちらで恙無く暮らせますよう》


 ピコピコ笠を揺らしながら女神様が深々とお辞儀する。シメジだけど。


「さあ、行こうか♪」


 木之本と女神様に見送られ、三人は足取りも軽く魔法陣に飛び込んだ。

 途端、視界が歪み目映い光が周囲を包む。思わず眼を瞑った千早は、ガシャンと言う甲高い音に驚いて眼を開ける。

 そこは薄暗く無機質な石造りの建物。荘厳な祭壇の中央辺りに千早達は立っていた。....檻の中で。


「は?」


 訳が分からない。何故あたしらは檻の中にいる?

 視界を遮る格子に触れながら、千早は親父様を見上げた。すると親父様は上を指差す。


「落ちてきた....」


 さっきの甲高い音はそれか。どうやら親父様はあの光の中でも眼を開けていたらしい。

 千早は足元にある薄い板を鑑定した。

 感圧式トラップか。私は回避出来ても親父様達は出来ないから反応したかな。

 しかし、ここは教会なはずだ。なんでこんな物騒な物が?

 あれこれ思案する千早の耳に複数の足音が聞こえる。慌てて千早は檻を吊り下げていた鎖をカマイタチで切って、檻そのものはインベントリにしまい込み、二人と手を繋いでそそくさと物陰に隠れた。

 しばらくしてあちらこちらに灯りがつき、数人の男性が現れる。祭壇を確認して周囲を見渡し、焦るかのように足早に散っていった。

 その会話の端々から来訪者を捕らえようと画策していた事が分かり、千早は剣呑に顔を歪める。


 ナイわー。なんちゅう奴らじゃ。


 千早は隠密をフルで稼働し、彼らの会話に聞き耳をたてた。

 微かだった声音が、ハッキリと聞こえてくる。


「来訪者様が来られたのは間違いない。どこへ行かれたのか」

「罠は作動しています。我々が思っていたより強者だったようです。ほら、この太い鎖が一刀のもとで切られている」

「こちらは危険な世界だからと力ずくで保護しようとしたのは間違いだったのでは?」

「来訪した途端檻の中では、心象は最悪でしょうね」

「しかし、我々が確保しないと。未知なる文明から来られた来訪者様が、どのような叡智をもたらされるか分からないのだ。他に渡す訳にはゆかぬ」


 あれやこれや言い合う彼らの話を総合すると、女神様より祝福を受け来訪する異世界人を、自分らで確保し、その文明の恩恵を独り占めしたいという事だった。


 バカ臭ぇ。


 渡る世間はバカばかりか。まったく。


 教会が利権を独り占めするのは、かつて地球でも良くあった話である。


 千早は隠密をかけたまま二人の手をひき、なに食わぬ顔で教会関係者の横を素通りすると、駆けつけてくる人々と逆行し、道なりに教会入り口から出ていく。

 

「今のは?」

「権力欲に満ちたバカ」


 訝るような敦の問いに幼女は短く答えた。


「いや、そうでなく。それもだけど、あいつら俺らに気づかなかったよね? 真横通ってきたのに」


 そっちか。


「私のスキルだよ。隠密極。手を触れているモノにも効果あり」


 以前地上に戻る時にも使ったスキルだ。人間の肉壁に阻まれて途中で解いたが。

 

 千早達は教会から出ると幾つか通りを抜け、薄汚い裏道まで来てから三人の隠密を解いた。

 うーんと伸びをし、あらためて千早は、しげしげと周囲を見渡す。

 なるほど、確かに。地球の西洋に似た街並みである。幾分重厚で、ドイツやイングランドのような古き貫禄を感じさせる。

 しかし中世特有の不潔さはない。

 薄汚い裏道であれど汚物が放置されたり、残飯が山と捨てられてたりといった未文明の無知による無法は見当たらなかった。


 取り敢えず金銭が必要だな。


 出鼻を挫かれた感はあるが、せっかくの異世界だ。まずは観光と洒落込みたい。

 

「んーと、両替商はやってないよね。現物で宿屋って泊まれるかな」 

「酒場で夜明かしのが良くないですか? ぶっちゃけ怪しいと思いますよ、俺ら」

「酒場...駄目。....千早」


 こちらの常識や基礎知識は爺様から習っている。しかし異世界であろうと常人は深夜に出歩かない。

 爺様から習った裏技いくか。

 千早はドラゴンのある看板を探した。


「あれかな?」


 草部が町外れにある小さな教会の柱にドラゴンが彫られているのを見つける。

 それを確認し、千早は扉の呼び鈴を静かに鳴らした。

 すると中から老人が顔を出す。温厚そうな口髭を携え、一見サンタクロースのようだが、その身体は痩せ細り今にも折れそうだった。

 千早は老人の前で両手を合わせて指を折り曲げ、爪と爪が合わさる独特な合掌をする。


「悠久の知己を持つ旅人です。一夜の宿を賜り下されば一日の労働をいたします」


 老人は眼を見開き、三人をジッと見つめた。

 そして相好を崩して微かに涙ぐむ。


「幾久しく見ぬ古き作法。ドラゴン様の御友人とあれば是非もない。あばら屋ですが夜露は凌げましょう」


 老人は三人を喜んで受け入れてくれた。


 看板にドラゴンを刻む者はドラゴンの知己。横の繋がりが非常に強く、御互いを助け合うドラゴンの教えを頑なに守っている。

 

 異世界来訪早々、現地の人間に拉致されかけ、爺様の友人に救われると言う、平穏からかけ離れたスタートを切る一行である。


 やはり千早の周辺は、平穏から程遠いようだった。

 

幸先悪すぎて不安ですな。でも爺様の教えを守ればなんとかなるなる~?ww

( ̄▽ ̄;)

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