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オカンのお父ちゃん ~前編~

それぞれの思惑により各々が動き出します。....お父ちゃん、数ヶ月でダンジョン踏破早すぎww 草部達、涙目ですww

 あとブクマ五つ目頂きました。ありがとうございます、電子の海の隅っこでワニが小躍りしております。

♪ヽ(´▽`)/


 秋も深まり季節が移り変わろうとする今日この頃。

 

 近頃、裁定の間がとても賑やかです。希少素材の豊富な至高の間に入ろうと、連日客人が絶えません。

 裁定の間の人数制限は八人。部屋の前には次を待つ列が幾ばくか出来ているようです。


 こんにちは、最上千早でございます。


 今日の御仁は些か趣が異なり、爺様と口論になっているようです。

 白髪混じりのオールバックな男が満身創痍でドラゴンに食って掛かっています。


「たかが蜥蜴の分際で人間様に楯突くかっ!」

『そのたかが蜥蜴に伸された貴様は何だ? 猿にも劣る。さあ、四の五の言わずに出てゆけ。次がおる』

「わあぁぁっ」


 ドラゴンの尻尾に軽く凪ぎ払われ、男達は扉の外に吹き飛ばされる。

 それを横目でチラリと一瞥し、次の挑戦者が裁定の間に入っていった。

 吹き飛ばされた男達は薬品も乏しいらしく、周囲の探索者に薬を売ってくれと頼んでいた。

 しかし、誰しも余裕がある訳ではない。

 昨今のダンジョン事情では、中層で薬品を溜め込み下層に挑むのがセオリーになっているらしく、薬が足りないという事自体が探索者として失格なのだ。

 にべもなく断られ、意気消沈した男達の前に草部達がやってきた。何時もの希少素材補給である。


「松前博士? 何やってんすか」

「おまえら、薬持ってないか? 相場より高く買うぞ」


 吹き飛ばされた男達は以前に千早と揉めた松前博士のパーティだった。


 日本では草部達がダンジョン踏破してからというもの、薬品や資源の供給が進み、神埼率いる医療部隊が飛躍的な成果をあげている。

 逆鱗様を連れて多くの医療班員に魔法や薬学、錬金などの知識を広め、素養のない者は定期的に行われるお遍路で必要な神々の加護を得る。

 人々を救う力が欲しいとの真摯な祈りは神々に快く伝わり、比較的容易く加護を取得出来ていた。

 他も同様で、力が欲しいと望む探索者達にも神々の御加護が振り撒かれている。一部の例外を除いて。


「薬を作りにきたのに余分な薬なんか持ってる訳ないでしょう。中層で確保しなかったんですか?」

「.....」


 その一部な例外の松前は黙り込む。

 松前のパーティは雇われ探索者だ。当然、セオリーにのっとり薬を溜め込んだ。

 しかし、松前が多少の怪我でも勝手に使ってしまい、足らなくなったのだ。

 周囲の冷たい眼差しをモノともせず、松前は勢い良く立ち上がる。


「そうだ、貴様らが私を共に連れてゆけば良い」


 如何にも名案と言わんばかりに眼を輝かせ、松前は草部達に詰め寄った。


「出来ますかねぇ」


 草部達の後について裁定の間を通り抜けようとした松前は、再びドラゴンの尻尾に吹き飛ばされ、今度は満身創痍の重体になる。

 駆けつけた神埼がパーティメンバーを含めて治癒し、呆れたメンバーに引きずられるように松前は上層へと帰還した。


「アレはあかんか?」

『駄目だな。自力ではなく人を頼り、さらには癇癪をおこす。成りがデカイ分、子供より質が悪い』


 呆れを通り越して乾いた笑いしか出ないな。

 うんうんと頷く敦達のが、まだ大人や。

 しかし、それとは別に爺様は顔をしかめ、アレは力があっても通せんと低く呟いた。

 鑑定持ちは神妙な顔で小さく頷き、同意する。


 ジロウ マツマエ 67歳 レベル6

 職業 科学者 快楽殺人狂 


 奴は人殺しだった。


 何をどうしたら、こんな職業が生えるのか。千早はうんざりと溜め息ををつく。

 職業となってるからには一度や二度ではあるまい。魔が差した過ちで快楽殺人はしないだろう。

 あれじゃ、どんなに真剣に祈ったところで神々の加護はもらえまいて。


「上には報告してあります。が、全く証拠もなく、誰が被害者かすら断定出来ません。しかし鑑定を欺く事が不可能なのを上も知っているので警戒しています」


 忌々しげに吐き捨てる木之本は、採取した鉱石をリュックに詰めていた。

 それを見て思い出したかのように、千早は家の中から大きな段ボールを持ってくる。

 

「あたし明後日に異世界行くからさ。これ餞別ね」

「とうとう行かれますか」

 

 寂しげに神埼が微笑んだ。


「うん。だからこれね。ダンジョン内でしか使えないけど、中がマジックボックスなってるから」


 千早が持ってきたのは三つのリュック。空間魔法を利用したマジックボックスである。

 内部は亜空間が設定されており、リュックの口以上大きなモノは入らない。

 四トントラック一台分くらいのモノは入り、重さは無効。

 3日とあけずに、せっせとやってくる三人の努力への御褒美だった。

 

 うおおぉぉっと雄叫びをあげ、三種三様の驚きと喜びが至高の間を満たした。

 満足気に頷く千早に、草部は何故か心許なげな顔を向ける。


「いっちまうんだな。一人で大丈夫か?」


 物言いたげな草部に千早が答えようとした時、背後の森から音がした。

 ガサガサと繁みを掻き分けて現れたのは、サラサラな黒髪を無造作に束ねた若い美丈夫。

 驚く草部達の前で、担いでいた鹿をドサッと地面に下ろした。


「客?...か?」


 誰だよ、なんで疑問符なんだよ。しかも片言かよ。

 思わず眼を座らせる草部の疑問は、すぐに晴れた。


「親父様、大物やな」

「はい?」


 カクンと草部の顎が落ちる。


「えと....リアル?」

「んだよ。正真正銘、あたしの実父だ」


 にぱっと笑う千早の頭を撫でる精悍な男性。違和感なく親子してるが、幼女の中身が五十と知っている草部達には違和感バリバリである。


「最上さんの父上って事は少なくとも七十は....逆行者? 政府未確認の??」


 国民全ての逆行者は把握されているはずだった。高齢より若返った者は千早を含めて極僅か。

 草部も確認した中に目の前の男性はいなかった。

 確実に自分よりも若いであろう男性が、実は一世紀近く生きた老人とは、とても思えない。

 だが醸し出される落ち着いた雰囲気や薄く微笑みをはき微動だにしない表情は、なにがしかの経験を積んだ者特有の貫禄を感じさせる。


 唖然とする草部達に手を差し出し、親父様は自己紹介した。


「....石動(いするぎ)十流(とおる)だ。千早が世話になった?...かな?」


 のーさーっ!!!


 差し出された手を取り、草部達は自分達こそが多大に世話になりましたと今までの経緯をつまびらかに話した。半分涙目である。


「そうか。....まぁ、経験だ」


 そう言うと、親父様は鹿を縄で木に吊るし、サクサクと解体していく。

 何事も無かったかのようなその態度。なんかデジャゥ.....

そして意味がわからない。経験? なんぞや?

 

 呆然とする草部の袖を幼女が引っ張った。


「つまり、良い経験だ。いずれ身になるだろう。そう言ったのよ、親父様は」

「いや、言ってないよねっ?!」

「家の親父様、主語しか言わないから。補完は脳内でよろんw」


 なにその連想ゲームみたいな会話術!! 脳内で補完って、一歩間違えたら大惨事な綱渡りじゃんっ!!


 全く正反対に見える親子だが、その何事も無かったかのような自然な態度はそっくりだった。

 

 デジャゥな訳だわ。俺がやらかした時の最上さんと同じだもの。


 己の黒歴史にはにかみ苦笑した草部は、この後に鹿の丸焼きというワイルドなご馳走に再び唖然とする事になる。


「...デカイ肉は旨い」


 .....名言である。


 しかしバキリと鹿の後ろ足をもぎ取り、そのままかぶりつくのは如何なものだろう。

 仕方無さげに父親を見つめ、千早が手際よく切り分けてくれた皿を受け取りながら、草部は思った。

 異存はないが、物事には限度があるのではないかと。


 デカイ肉は旨いなとドラゴンと意気投合している男性は、間違いなく幼女の父親だなぁと草部は不可思議な理解をした。


 幼女のおおざっぱなワイルドさは遺伝だな。


 魔素で旨味の凝縮した鹿を頂きながら、最後になるであろう千早との晩餐の夜は更けていった。

千早が異世界に渡る前に、伏線回収の閑話がいくつか入ります。しばし本編は遅れるかもしれません。

( ̄▽ ̄;)

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― 新着の感想 ―
デカい肉は旨い・・・憧れるわぁ。 死ぬまでに一度は食べてみたい『骨付きのマンガ肉』。 "月が導く異世界〜"の主人公が堪能したあの肉。 親父様なら再現が可能なのでは無いかしら?
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