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オカンと鳥と逆鱗様 ~6~

お久しぶりです。ようやくドラオカも投稿出来るようになりました。

 まあ、また暫く諸事情で書けないんですが....。でも完結まで、頑張ります。


「ああ、そういや不思議だったんだけど」


 ママたまを見上げながら、千早は首を傾げる。


「大樹の国は王国なんだよね? なんでエルルーシェは王子(王の子)じゃなくて、皇子(皇帝の子)なん?」


 幼女の疑問に、ユフレはしばし考えてから、ゆっくり口を開いた。


「この世界は名も無き皇帝陛下が統べておられるという伝説があるの。その方の次代は大地に存在する全ての国々から選ばれるとなっていて、どこの国々にも可能性があるため、王家の子供らは全て皇子皇女と呼ばれているのよ」

「ほえー」


 なるほど。名も無き皇帝陛下か。いずれ世界を回るチャンスがあればさがしてみたいな。


 久しぶりに聞いた伝説系の話に、幼女の瞳が煌めく。

 そこへ逆鱗様に乗ったシメジな女神様が現れた。


《あらあら。懐かしい御話をしているのね》

「懐かしい?」

『そうさな。かれこれ八千年ほど前の話か』


 女神様をのせたまま、逆鱗様は千早の頭にポフンととまる。


『一億年ほど前かな。まだ神々が地上で暮らしていた頃だ。動物らが進化の兆しを見せ始め、各々国を作り争いも始まった』


 剣呑に眼をすがめ、爺様は人類の創世から話し出した。


 地上には神々がおられ、それぞれの神々は自分の土地に住まう人間らに恩恵を与え、人々はみるみる発展し、今よりずっと高度な文明を築いていたらしい。

 

 幼女が爺様から教わった古代魔術や術式はその頃の物なんだとか。


 しかし多くの国々が争い、血を流し、穢れを嫌う神々は、いつしか姿をみせなくなった。

 それでも人々の戦いは終わらず、最終的に大樹の国があったあたりに存在した国が他の国々を支配下におき、一大帝国を築き上げる。

 強大な魔力と技術をもった帝国は、魔獣野獣海獣が蔓延る大地や海でなく、大空を渡る技術を持ち、この世界の隅々まで踏破していた。

 だが慢心した帝国は新たな力を得るために、精霊王の住まう世界樹に手を出し、精霊王は世界樹から逃げ出したのだ。


 その暴挙に精霊達は怒り狂い、帝国とそれに与する国々から全ての精霊が消え失せる。結果、帝国は魔術を失い瓦解した。

 下手に文明が進みすぎていたために、魔術が使えない状況では生きていけなかったのだ。

 結局生き残ったのは、帝国に見向きもされなかった僻地や辺境の小さな国々だけ。あとは僅かに生き残った帝国の強者達。


《たぶん、その時生き残った帝国の人々が伝えた伝説でしょうね。名も無きではなく、今は無きですが》

「ほむ。古代帝国の話だったんか。お間抜けだけど、浪漫はあるなw」

《帝国はなくなりましたが、遺産はありますよ》

「遺産?」


 女神様は頷いた。


《遥か遠方に魔力がなく魔術が使えない大陸があるのです》

「魔術が使えない? なんで?」

《それが古代帝国の遺産です。未だに動いている唯一の古代魔術具。アルカディアのタランテーラ》

「タランテーラ?」


 首を傾げる幼女に、シメジな女神はフルフルと石附を揺らす。


 聞けば魔力を吸い上げ魔石を作る機械なのだという。大陸全ての生き物から魔力を奪うので、その大陸では魔術が使えない。

 ゆえに当然、大陸にも近海にも魔獣はいない。

 

「そんなん土地として成立出来るんか? 人が住めるん?」


 魔力と魔術で成り立つ異世界だ。魔力がなくば精霊もおらず大地が痩せ細るのではないか?

 そんな千早の疑問に逆鱗様が答えた。


『そなたの故郷と同じだ。魔力がなくとも人は暮らせる。無いものは必要とされない。彼の大陸は、そういう場所だ』


 つまり地球と同じような暮らしをしてるって事か。なるるん。


「でも、なんで古代人はそんな土地を作ったんだろうね?」


 何の気なしな幼女の呟き。女神様と逆鱗様は顔を見合わし、少し眼を潜めた。


『...流刑地だ』

「え?」

《罪人を送る場所として作られたのです。死ぬまで魔力を奪い続ける土地を。彼の国には大陸一面に広大な樹海しかなく、飛空艇で送り込まれた流刑者は、大陸を囲う大海原が天然の檻となり、魔術も使えず、逃げ出す事も出来ず、ただ魔力を生産し奪われる贄となるしかない場所です》

「....そして作られた魔石を帝国が回収するか。えぐいな」


 思わず顔をしかめる幼女に、シメジな女神様はクスクスと笠を揺らした。


《昔の話です。今は咎人の子孫が普通に国を作り、普通に暮らしています。相変わらず魔術は使えませんが、無いものは無いという認識で♪》


 でも魔石はそのまま生産されているらしく、大陸の地下に眠ったままになっているらしい。ゆえに女神様は古代人の遺産と言ったのだ。技術とともに一財産だと。


 八千年分の魔石か。想像も出来ないな。


 決戦前夜。伝説を寝物語に、秋津国の夜は更けていった。


 


「じゃ、頼んだよリカルド」

「おうっ」


 翌日、幼女に連れられ、リカルドらは北の氷河に転移した。

 

「まずは拠点の構築を。全員転移させたら作戦開始だ」


 てきぱきと千早が指示を出し、リカルドと共に連れてきた敦が、アイテムボックスから物資を取り出す。

 それを確認し、幼女は次々と人々を氷河に転移させた。


 しかし百人ほど転移したあたりで状況が変わる。


「敵がいない?」


 驚く千早に、斥候として現場を偵察にいった探索者が神妙に頷いた。


「現場は夥しい死体で溢れていました。その中央に、さらなる死体の山があり....たぶん、集団自決かと」


 自殺? 奴等が?


 意味がわからない。


 だが唖然とする幼女の横を、金色の風がすり抜ける。そして、天高く舞い上がると、遥か遠くの一点に吸い込まれていった。


「姉様? ....なんだ?」


 しばらくすると金色の風が吹き上がり、そのまま千早の元へ女神様がやってくる。その姿はへにょりと萎れ、ただ事ではない様子だ。


《....間に合いませんでした。虹の庭園の世界樹が枯れています。もう...怨念と穢れが、世界樹を....》


 これが狙いかっ!!


 幼女は辛辣な眼差しで氷河の向こうを見据える。


 たぶん、こちらの動きを察知されたのだろう。我々が乗り込んで来る前に虹の庭園を穢そうと、奴等は自決して自らを穢れに足したのだ。

 ただの死体ではなく、明らかな殺意を持った怨念と穢れは迷うことなく虹の庭園に向かい、世界樹を滅ぼした。


 しくった。甘かった。どうする??


 苦悶に顔を歪める千早に、逆鱗様の静かな呟きが聞こえた。


『残るは一つだ。最後の世界樹に向かうしかない』


 ばっと人々の視線が逆鱗様に集まる。まだ手があるのだろうか?

 真摯な眼差しの集中砲火に苦笑し、逆鱗様は首を横に振った。


『正直、不可能に近い。最後の世界樹は.... そなた、昨夜の話を覚えておるか?』

「昨夜? 名も無き皇帝陛下の?」

『そうだ。その話にあった流刑地アルカディア。そこの樹海に最後の世界樹がある。しかし、魔力を奪う古代遺産を止めないと足を踏み入れる事は出来ない。向かうなら魔族の国ディスバキルから船で行けるが、最短でも十日はかかる』

「空からは? アタシが行って魔術具を止めるよ」

《昨夜話した通り、大陸および周辺は魔術が使えないのです。途中で墜落します》

「泳ぐよっ、手があるならやれるだけやらないとっ」

《....神に近い千早ちゃんでは無理なのです。何故に古代帝国が精霊王を世界樹から追い出せたと思いますか? 彼等は神殺しと言われる魔術式を開発したのです。その魔術式の前では神々は無力化されます。泳ぐ事すら、ままならないでしょう》

「まさか.... それが魔力を奪う古代魔術?」


 シメジな女神様は、こくりと頷いた。


 言われてみれば、神々は魔力の塊のような物だ。根幹を脅かされればひとたまりもない。


 北の大地が絶望に満たされる。


 フクロウの余命は後4日。精霊王の命は風前の灯火だった。

 

ここからは《悪役令嬢やめますっ!!》とリンクしていくので、ネタバレに注意しながら書いていきます。数日空く事もありますが、ごめんなさい::::

 

あと、感想にブクマとお星様、ありがとうございます。

電子の海の片隅でワニがお星様をジャグリングしております♪

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