思春期
第一章
桜の咲く公園に隣接する公園で、快晴のもと、中学の入学式は行われた。
私は、新しい学校生活と、暗澹たる微睡みのなかで揺蕩うていた。私は暗闇の中に入っていくような気持ちだった。
私は中学受験の失敗で、失意から立ち直ろうと、勉強の準備をしていた。しかし、それは、小学校高学年の頃に自覚した性の目覚めによって瞬く間に崩れ去ってしまった。
私は女子をそんな風に観たくは無かった。しかし、それは徒労に終わった。性的な眼で気づけば見ていたようである。私の絶望は深かった。
その反面、学校生活は意外にも順調であった。
学級書記長になり、部活は吹奏楽部に入部した。吹奏楽部はAN高等学校に進学したTという先輩の勧めからであった。それがなければ、私はサッカー部に所属する予定だった。
友人にも囲まれて、私は順調な学校生活を送っていた。
前期の中間試験が行われた。
私は勉強していた。しかし、試験の成績は、よくなかった。私は、また泣いた。試験で十番以内に入れると思っていたからである。
私は、性の、あの自慰のし過ぎではないかと、自らを責めた。罪悪の塊、悪徳の象徴、そんなことを思った。呪詛は、その頃から始まっていたのかも知れないと思った。
もう既に学校のクラスでは、成績に拠る序列が始まっていた。
私は中の上の成績であったから、イジメはなかったが、それでも、憂鬱であった。
私は夢中で放課後、トロンボーンの演奏をした。
しかし、美しい友情もあった。
池の周りで級友のSと語り合ったり、合唱コンクールで皆と励ましあったり、楽しい日もあった。
私はSの自宅に呼ばれてお邪魔したり、友情というものを幾らか知った。
第二章
冬になった。私は、もう既に、学業に部活に、性に、疲れ切っていた。
私は学業を選択し、部活を辞めることにした。私は部活の退部届を顧問の教師に提出した。
その日、私はその教師に呼びだされた。私はその教師に叱責された。私は狼狽した。もうよく覚えていないが、退部届の文面に問題があったようだった。
私は体調を崩して登校拒否になった。
私は自宅で、本を読んだ。文学である。私の文学との邂逅は、学校という歯車からの落第であった。
二ヶ月後、二年生に進級し、クラスが変わる日に、久しぶりに学校に登校した。級友たちは心配した。私は、何故か憤怒の様子であった。
私を叱責した教師は他の学校に配属されていた。私は虚無の心に包まれていた。
私は、二年生に進級してから勉強した。遅れていた分勉強した。家庭教師もつけてもらい、勉強した。
成績も良いほうだったようである。私は安心したようであった。しかし、私は、既に文学の、あの魔に喰われていたようであった。文学の悪魔が私に取り付いていた。
永い暗闇の中に私は光明を求めていた。しかし、闇は深く、辺りは森閑としていた。