七話「選択」
眩しい・・・。そうか、朝が来たんだな。
俺はゆっくりと瞼を開き起き上がる。いつもなら平凡な毎日は望まないが今日ばかりは平凡な毎日を望む。昨日の件はどうなったのだろう・・・。そう考えてみるが俺は超能力者ではないので当然分かるわけでもない。一階へ降り久しぶりにテレビをつける。そこに写っていたのは昨日の事故の事だった。
どうやら今日も平凡に過ごせない予感がする。
そう思いながら俺は支度をする。リュックに全て詰め込み背負う。今日は多くの教科書やノートを入れているためか肩が重い。どうして教室に置いてはいけないのだろうか。それは取られたら困るから・・・よく考えてみろ、これをとってなんの意味があるんだよ!と、特に意味を持たない言葉を心の中で並べていく。
腕時計を付け身なりを整える。さてと・・・今日こそ何も無い実につまらない日々を過ごしたい。
俺は玄関を開け外へ出る。今日の天気は雨・・・最悪だ。俺はもう一度家に入り傘を取る。傘を差して外へ出て玄関の鍵を閉める。雨の通学路は嫌いだ、ジメジメしているうえ事故が起こりやすい。昨日みたいな事がなければ良いが・・・。俺はゆっくりと歩を進め学校へ向かう。
この時期の雨は少し蒸し暑い。地上の熱が空へ逃げられないため熱は雲と地上の間で流れる。天候が晴れは晴れで暑い…。そう思いながら学校の道を歩く。
「今日は雨だね〜」
「もう本当テンション下がるわ〜」
近くを通る女子同士の会話が耳に届く。
門を通り抜け校舎に入る。今日は雨の日だからかいつもより遅く学校に着いてしまったため他の生徒もかなり見かける。俺はいつもよりも長く感じる廊下を歩いていた。
「お、いつもより遅せぇじゃん!」
俺の肩に手を乗せながらこのうざい口調で話すやつと言ったら俺の知る限り1人しかいない。宮崎翔平だ。
「なんだよ。朝っぱらから構うな」
俺は宮崎に冷たく言い放った、はず・・・。なのに宮崎は「ねぇねぇ、そんなこと言うなよ〜」と言う。正直怒りを通り越し呆れが先に来ている。俺ははぁっと言う短い溜息をつき方に置かれているてを振り払った。俺はそのまま教室へ入り席へ座る。
「あらら、な〜んか御機嫌斜めだね〜」
俺の机の上に座っているのは水本美穂。
「どけよ」
俺はそう言い美穂を睨みつけた。ハッキリ言って昨日の事もあり苛立ちが増えている。だからあまり話しかけないでほしい。
「ヤダ」
美穂は得意気な顔で俺を見下ろしていた。俺の眼光は更に鋭くなり美穂を睨みつける。美穂はヒィっと言う小さな悲鳴を上げすぐに俺の机から降りた。俺は鞄を机の上に置き整理する。その間美穂はこちらをずっと見ていた。
「何?」
俺がそう言うとしどろもどろしている。気まずいならいなきゃいいのに。俺は内心そう思いながら整理ができた鞄を横にかけ机の中から一冊の本を取り出し読む。読んでいる途中横からの気配が消えチャイムが鳴った。俺は本を閉じ視線を前に向ける。そこには教師が出席簿を片手に何か言っている。どうせ大したことではないだろう。俺は視線を教師から窓の外へと移す。今日は雨のせいかいつもよりも暗く何より湿っぽい。何年生きても雨は好きにはなれない。いや、違うな。雨は好きでも嫌いでもない。時には静寂を生み出し時には涙を隠す。見たいな台詞がよく本に出てくる。俺は雨の音が多少なりとも好きだ。
俺は雨の音をBGMに目を閉じ思いを巡らした。この先の未来なんて見ない。例え見たとしてもそれは絶対とは限らない。死ぬ方法があるなら試す、でもそれは願望であり不死のこの体には不可能なことだ。不可能なことを望んだって仕方がない。未来を見ない。過去を振り返らない。今流れている時間に身を任せるだけ。そんな日々を今まで送ってきた。自分の想いなんて滅多に通じない。神にもう一度問おう。死んだ弟を…最愛の弟を求めて何が悪い。絶望の淵から救ってくれるのが神なんじゃないのか?俺は、ずっと昔の俺は神さまとやらを信じ疑わなかった。だが、裏切られた。家族を亡くし信じていた神までもが俺を見捨てた。神は無慈悲だ。どうして争う世界を創ったのだろうか。
「ここ答えてみろ。影山」
思いを巡らしている中教師が俺の名字を呼び問題を指定した。その問題は数学で簡単な問題だった。
「…56xです」
俺はそう言いもう一度目を閉じた。ドラマや映画ならハッピーエンドと言うものが存在する。どちらかを選択し未来を変える。そう言っても同じことだろう。だが俺は未来を変えようとも思わない。それが定められた道だとしたら変えられないから…。俺はバッドエンドを選択してしまったから未来を変えようともしない。これ以上ややこしくならないように静かに生きる道を選択する。だって俺は…。
そこで授業終了のチャイムが校内に響き渡った。俺は日直の起立の号令とともに立ち上がり礼をする。席に座り俺は机の中から先ほどと同じ本を手に取り読み始める。コトコトと言うリズミカルなローファーの足音。俺は音のする方に視線を少し移し音源を確認した。俺の机の右斜め前に立っているのは美穂。その表情はどことなく気まずそうな感じだ。俺は美穂を確認するとまた視線を本の中にある文章へと移し替えた。
「…裕翔」
俺は本を閉じ美穂へと視線を移す。
「何」
美穂はしどろもどろしていた。何を言えばいいのか、どうしたら最善を尽くせるのか。まさにそのような感じだ。本を閉じてまでしていると言うのに一向に次の一声を出そうとはしない。
「用がないならどっか行って、気が散る」
俺はそう言い本に手をかけようとした時だった。
「ごめん!」
教室内に美穂の謝罪の言葉が響き渡る。
おいおい、冗談だろ?
美穂は深々と頭を下げ謝罪している。これだったら俺の立場が危ういっての…。残りの休憩時間は後3分程度。しかしこのままの状態でいたら、いや今も俺の立場は最悪なのだからすぐさま美穂の腕を引っ張り教室を出た。出るときに聞こえるのは最低とか外道などの俺に向けた暴言だった。
こんなのは別に慣れてる。だけど…。
俺は美穂の腕を強く握りしめていたのか途中美穂が痛いと言うので腕から手を離した。俺が向かったのはもちろん屋上。話をするのはここがちょうどいいからな。それに雨も止んでいる。
「裕、翔…?」
俺は内心苛立ちながらも美穂を視認する。
「お前なぁ。俺をそんなにも怒らせたいか?謝罪するしないはハッキリ言って関係ない。俺は1人を望んでいる。それの何が悪い。お前たちは俺の望みさえも叶えさせない気か?友人を作っても最後は悲しい思いをする。恋人を作ってもそれは疑いがなくなった存在とは限らない。所詮は他人。傷つけようが貶されようがそれはただの他人の戯言。俺は他人を信用できないししようとも思わない。結果お前らは俺に多大な迷惑をかけている。さっきのことでお詫びをしたいと言う気持ちがあるなら二度と俺に近づくな」
…言ってしまった。俺の思っている全てを美穂1人にぶちまけてしまった。でもこれで離れてくれるのなら結果的には善。
美穂はその場に立ったまま動かない。…きっとフリーズしたんだろうな。別に後悔も反省もない。俺は美穂をその場に教室に戻ろうか時計を見た。残り1分。走ればギリギリ授業には間に合うだろう。ドアノブに手をかけ屋上を去ろうとした…その瞬間。
「お前なぁ女子に向かって言う言葉じゃねぇだろ」
屋上の屋根の上。俺がいつもいる場所。この聞き覚えのある声は…。
トタン、と言う音と共に降りてきたのは翔平。面倒だ。
「お前には関係ないだろ?なら放ってくれれば嬉しいのだが」
俺の眼光は無意識に鋭くなり見せない刃物でも突きつけているかのように感じる。でも、翔平は屈しなかった。普通のやつらは全員逃げた。根性なしの弱虫だった。
「関係ない?関係あるだろ!友達なんだから放っとくわけにはいかねぇ」
こいつは違う。虎を敵に回した小さな猫。しかし猫でもプライドは高いのだろう。俺はドアノブに手をかけていたがそれを離し翔平に向き直った。
「お前には分からせた方がいいな。二度とは向かわないよう心の奥底まで折ってやるよ」
俺の苛立ちはピークになった。口角を少し上げ眼光をより一層鋭くする。まるで虎が獲物を狩る時のように…。
「お前今友達って言ったな?それはこいつのことか?ならさっさとそいつを連れて帰りな」
これが最後の忠告。これが最後のストッパー。これを切れば俺は最低なことを言うだろう。
「お前も友達だ!放っとくわけにはいかない。それにお前は男として言ってはいけないことを女子に言った」
切った…。こいつは最後の忠告を無視し自らの意見を曲げなかった。まだこんな世の中にいるんだな。
「だから?…だから何?言ったらダメ?んなこと知らねぇよ。男だから?じゃあ女が言ったらお前は俺と同じように説教しないってか?ハッ遊ぶのも大概にしろ、お前も思ってるんだろ?人間を信じきることは不可能だって、裏切られたら怖いもんな〜。信じていたものが突然裏切ってきたら怖いよな?」
俺は若干半狂乱になりかけているが知ったことではない。今はこのストレス源を潰す。
「あぁ、思ってる。だがな、信じなきゃ何にも始まらねぇだろ!」
「お前はあるか?心から信じたものに裏切られたことが」
「は?その言い様だとまさに自分が裏切られましたってか?ならなおさらそれを人に向かって言わないだろ!お前は何がしたい」
「言っただろう?1人を望む。そのためならどんな暴言だって言ってやるさ」
このままじゃ平行線。どうしたら俺は正解なのだろう…。
はいどうも!今現在見ている人がいるのかと思う私だ!
まぁ今回はタイトルどうり選択肢かな。見ている人がいるのなら選んでほしい。多かった方を綴ろうか。
《ハッピーエンド》《BADエンド》この2つだね。
まぁ来なかったら来なかったで自分で考えよ。それじゃあまた次に語る物語の中で会いましょう