五話「蘇るココロ?」
俺は教室へ戻り次の時間の授業を確認した。
「次は社会科か」
今やっている社会科はちょうど第1次世界大戦真っ最中だ。俺が産まれて多分15になるんじゃないか?
「社会科とかまじで無理だわ〜」
「なんで第1次世界大戦とか習わないといけないんだよ〜」
後ろの方で会話が聞こえた。確かにこの時代は戦争なんて言うものとは限りなく離れている。だけど当時の人間は理由も考えずに戦争の道具として働かされていた。いつ攻撃されるか分からない日常であっただろう。今は記憶が掠れてしまっているが恐怖の毎日だったのを覚えている。
「本当、戦争なんて馬鹿らしいよなw」
馬鹿らしい・・・か。まぁそうだな、馬鹿らしいな。でも、そうでもしなければどこかの国に乗っ取られて今のような自由な生活は出来なかっただろうに・・・。人間は欲が深い生き物だから仕方ないのだろがな。
キーンコーンカーンコーン
チャイムがなる。
「やべ、席につかないと・・・!」
会話していた奴らは急いで自分の席へ戻って行った。こうしてまた同じように繰り返しの日常を過ごしていた。そして6時間目が終わり帰宅しようと荷物をまとめる。
「・・・・・」
ふと窓の外に目がいった。そこにはあのグループとあいつがいた。・・・関係ない。助けたところで何にもならない。そう自分に言い聞かせるが人間だった頃の良心と言うものが働こうとしていた。
どうもこれは自ら抑えることは難しいようだ。俺はすぐに鞄を肩にかけ早歩きで校舎を出た。
学校から少し離れた場所にある路地裏に入っていく姿を視認すると俺は急ぐ事もゆっくり行く事もなく歩いていた。こう言うのは小説の中のヒロインだけで十分だ。人間にはそれぞれ生きる権利がある。誰かに追い詰められて前を向けなくなる。それは権利を奪う事に匹敵する。
そこの角を左に曲がり入る。
「あの男はなんなんだよッ!」
少し経つと声が聞こえた。あの男・・・多分俺のことだろう。
「文句があればハッキリ言ったらどうですか?先輩?」
俺は壁にもたれかかりながら少し、ほんの少し口角を上げ目を細める。まぁ要するに恐怖を覚えさせる顔だ。人間一度やられた顔は覚えている。ならば俺の顔を覚えている事になる。
「な、なんでお前が・・・!さてはお前!」
「違うさ、ただなんか面白そうな雰囲気だから来た。別にそいつを助けようとは思わない。でもなぁ、昼にあんだけ痛いめ見ても学習しない馬鹿が気になってな」
そう言うとグループ、主に男性の顔がドンドン青ざめていく。そんなに怖いならやめればいいのに・・・。
「で、文句あるなら言えよ」
俺が前に一歩出るとグループのメンバーが後退する。由衣夏は何がどうなっているのか分からない様子。まぁ分からなくてもいいか。
「言ったよな?次は無い、と」
見ていて胸糞悪い。いっその事こいつらの骨を半分程折りたいところだが、そうしてしまうと後が面倒だ。となると、気絶させるか片腕を奪うか・・・。どちらにせよトラウマプレゼンツしねぇとな。
「な、なんなんだよお前!いきなり現れて、こいつとなんの関係があるって言うんだ!」
泣きそうになりながらも威勢が良い。
「関係なんてない、ただ、生きる権利を奪おうとするお前らが気に食わないだけだ」
「偽善者野郎が・・・」
偽善者・・・か。まぁそうだな、こいつを助けてなんのメリットもない。でもなぁ
「世の中には生きる自由がある。死にたくても死ねない奴とかな」
そう言い終わるとスタスタと男性の元へ歩いていく。ヒィッとか小さな悲鳴をあげているが気には止めない。こいつらと出会って人間の感情が戻って来たのかそれとも只々気に食わないからやるのか・・・。自分でも分からなくなってきたな。
「く、来るなぁ・・・」
男が涙を浮かべ俺に言う。俺は男の1メートル手前で止まる。
「お願いだ・・・や、やめてくれ」
「やめてくれ、か。他人の意見も聞き入れない奴に言われてもなんも思わないな。ただ、気分が悪いだけだ」
言い終わると俺は右手を握りしめ拳を作る。そして振り上げ殴ろうとした時、俺の視界が眩んだ。後頭部に鈍い痛みがあった。多分鉄パイプかなんかで殴ったのだろう。俺はフラつきながらも壁に背をつける。
「は、はは、所詮は人間なんだ。このまま死んでくれよ・・・!」
そう言い男は俺の元へと近ずいて来る。これで死ねたらどんなに楽だろうか。だが、結論は出たな。俺の視界も回復してきた時、男は手に持っている鉄パイプを振り下ろす体制になっていたので俺は左に回避する。
「な・・・!あれだけの衝撃を受けて動けるようになるの早すぎるだろ・・・!」
「人間よりかは丈夫すぎるんでね」
俺は振り下ろされたままの鉄パイプを右手で掴み奪う。さてと、どうしてくれようか。
「さて、ここで質問です。つい先ほど俺がやられていたことをお前らに倍返ししたらどうなるでしょうか」
俺は殴られた場所を軽く撫でてみると生暖かい液状の何かが手に触れ確認する。血だ。別に驚きはしないが、いくら不死者だとしても痛覚はある。俺はその血を持っていたタオルで拭き取りメンバーの方を睨む。
メンバーは逃げようと腰を抜かしながらも必死に這い蹲っている。
「滑稽だな。自分から仕掛けておいて立場が悪化すれば逃げる。まさにクズの鏡だな」
俺は無表情で唯一の出入口である場所に立つ。これで逃げ道はない。
「さてと、おいお前。こいつらにどんな事された」
俺は由衣夏を指差しながら言った。由衣夏は少しビクビクしながらもハッキリとした声で言った。暴力、暴言、金、嫌がらせ・・・。とことんクズの塊だ。
「クズであるお前らはゴミと変わりない。じゃあゴミはどうするか?」
俺は持っていた鉄パイプで俺を殴ってきた男の背に一撃いれる。軽く骨が折れたかヒビくらいは入っただろう。その場で唸りもがいている。でもまぁ死なすわけにはいかないので男は骨を一本ずつ、女は頰に一発。これでも俺としては優しい方だ。
「おら、お前も早く帰らねぇと怒られるぞ」
そう言いながら俺は路地裏を出ていく。イジメは早く対処しなければ取り返しがつかない。死ぬことは自由だ。でも、周りの奴らは悲しむだろうな。少なくとも家族は・・・。
あぁ、もう今日は調子が狂う。俺ってこんな感情的だったか?めんどくせぇ・・・。
俺はそのまま家に帰り風呂へ入る。殴られた場所は髪に血がつき固まっている。そこにお湯を浴びせ血を溶かしながら洗う。少し痛いが苦痛ってほどではない。明日・・・明日こそは普通のつまらない生活ができますように、なんて思ってしまう。情が戻ってまた辛い思いをするのはゴメンだ。俺は湯船に浸かりながら思う。その後は何事もなく寝た。
今回は遅くなりましたが決してサボったと言うわけではありませんよ?ただ、六話目を書き終わらせてやろうかと思ってt(殴
え〜と、待たせてすみませんm(_ _)mこれからも気分で出していくのでよろしくお願いします。
感情が戻ってきた裕翔。だが、裏切られるのが怖い、そう感じた裕翔は感情を切り離そうとするが・・・