三話「イジメ」
……眩しい。俺は光を遮るように手を動かし瞼を開ける。
また…同じ朝。不老不死者になりこの朝を何度も繰り返した。俺はベッドに手を突き起き上がる。壁に掛かっている時計を確認する。
「・・・朝の6時か」
俺は欠伸をしながら制服を取りに向かう。クローゼットを開けるとそこにはいくつもの種類の違う制服が綺麗に並べて掛けられていた。今思うとよくもまぁお金が足りたものだ。俺は時々バイトをしているがそれは肉体労働が主にされており時給は2000円。金額だけを見ると良いバイトだと思うがそこは肉体労働が激しく危険も多いので雇われて3日で辞める者も少なくはない。言うなればブラック企業と言うものだ。
俺は貴校が指定した制服を取り出し着る。机に置いてある腕時計も付けた。朝食は…いいか。昼だけ食えば良いし…。本音を言えば昼も食わなくてもいいのだが、食べなければ不自然すぎる。俺は今日の授業の教材を鞄に詰め込み家を出る。
腕時計を確認すると6時半を表示している。いつも通りだ。俺はゆっくりと通学路を歩いて行った。学校に近づくにつれ生徒の数が増えていった。朝の部活や委員会の仕事、何もする事が無いが早く来る奴などいろいろの目的だろう。俺の場合は何もする事が無い部類に入る。俺の日課は屋上から学校を見渡す事、まぁ良い暇潰しにはなる。俺は門を通過し自分の教室である3階を目指す。朝にこの階段は少し辛いとよく言うが俺にとっては普通に平面の地面を歩く感覚だ。自分の教室に入ると時刻は7時半になっている。教室には数人の男女がいた。朝から何をやっているのやら…。俺はそれらを無視して自分の席へ荷物を置く。置いた後は屋上へ向かう。他の教室からは話し声が多少聞こえる。コツコツと足音を響かせながら廊下を歩き、階段を登り屋上へと辿り着いた。屋上へ出ると少し冷たい風が俺の身体を包む。俺は屋上の屋根に登り辺りを見渡す。
他人から見たら落ちたら危ないと言われそうだが生憎俺には怖いと言う感情は持ち合わせてはいない。そこそこ広いグラウンドを見渡すとサッカー部、野球部…は今日はトレーニングルームでか。ほとんどサッカー部が占領しているような形になっているが、陸上部もいるようだ。もう1つあり少し小さめのグラウンドではテニス部がボールを打っているのがわかる。今日も平凡で退屈で実につまらない日々が、始まる…。俺は欠伸をしながら空を見上げる。今日の天気は晴れ、少々雲が目立つが雨は降らないだろう。
時刻は午前8時、少し賑やかになってきた。俺にとっては雑音にしか聞こえないから黙ってて置いてほしいのだが…。と、そろそろ時間だな。俺が屋上の屋根から降りようとすると誰かが入って来る気配がしたので一応隠れておく。面倒事には巻き込まれたくはない。
ガチャリ…入ってきたのは男性が2人女性が2人のグループとその中に見覚えのある人物がいた。確か…宮住由衣夏。2学年の奴らと言う事になるのか。これはいかにも関われば面倒臭いですよ感が半端ない。
「おい、どうするよ。ここなら誰もいないだろうしw」
「え、え?聞いちゃう?w」
この言い方、表情。これは他の学校にもあった“イジメ”だ。人間は人間同士助け合う生き物だ。だが、あいつが気にくわない、こいつがウザいだのとちっぽけな理由で集団で1人の人間を対象に暴言暴力嫌がらせを与える。助けようとすれば次は自らターゲットにされかねない。そう思い救おうとする奴はなかなかいない。由衣夏は俯き何も言わない、いや、言えない。言えば理不尽な暴力を受けてしまうから…黙っているのは自分を守る為の行動なのだろう。
「さて、水住由衣夏さん?どうしてここに来たか…分かるよね?w」
その言葉に由衣夏は肩を少し揺らし言い出せないまま俯く。そんな事したら余計時間がかかるじゃねぇか。
「分からない…」
小さな声で言った言葉はあいつらにも聞こえたようでニヤニヤしてた顔が一瞬にして曇る。
「はぁ?分からないって言った?巫山戯んなよ!」
男性が蹴りを入れる。由衣夏は避ける事も受け身をとる事も出来ずその場から2メートルくらい飛び地面と衝突する。
「頭も良くてお金持ちなんでしょ?ならお金頂戴?そしたら今日はこれで済ましてあげる」
お金の請求となるとかなり前から受けていたとみた。序盤は教師の目を気にしているが慣れて来ると人間はずる賢くなる。手際が良く悪い事には頭の回転が速くなる。無駄な知識だな。
「それは…」
俺は腕時計を確認する8時10分…本格的に始まるのは25分からだが俺はそろそろ教室へ戻りたいのだが。すると男性が声をあげたので視界をそちらに移す。
「あ”!?この野郎!」
男性が右拳を振り上げた。そこまでして手に入れたいのだろうか、よく分からないな。俺は屋上の屋根から由衣夏の目の前に着地し突き出された右手の手首を掴み捻る。男は小さな悲痛の声をあげながらその場に蹲る。
「お前らなぁ、ここでやられるとすごく迷惑だし人としてどうかと思うぞ?“イジメ”は」
「何なんだこいつ、一旦教室に戻ろうぜ」
男性の声を合図に集団はいなくなった。その場に残ったのは俺と由衣夏だけ。本当、一体なんだったのか。
「何で…」
由衣夏が俺に小さな声で聞いてきた。面倒だな…。
「邪魔だった」
俺はそれだけを言い教室へ戻った。
ここまで読んでくれてありがとうございます!
今回はまた由衣夏と遭遇させました。正直に言うと行き当たりばったりの作品なのでこの先考えてません!w
まぁ成るように成るでしょう。それと文章で「…」か「・・・」どちらが良いのか良ければ教えてください。
それとこうした方が良いんじゃないか?と思う意見があれば気軽に行ってください、参考にするかはこの先の物語に関わりますが良ければお願いします(*^^*)
堕天使
ヘッドフォンで聴いていると耳が痛いです。