閑話 若き日5
お久しぶりで申し訳ない。
ちょろちょろ更新をしていきたいと思ってます……。
「本当か?」
俺がロレーヌに尋ねると、彼女は嬉しそうに頷いた。
その表情はやはり、というべきか、現代のロレーヌと比べると若いというか、あどけない感じがする。
「あぁ。ただ、少し離れたり、お前の手を放したりすると見えなくなるな……。これは、おそらく……ふむ……?」
色々と言いながら《歪み》を観察し、俺には理解できないような考察をブツブツと口にしていくロレーヌ。
そして一通りそれが終わると、
「すぐにはどうにもならなそうだが、これには周期性がありそうだ。細かくは測定機器が必要だが……」
そう言った。
「周期性?」
どういう意味かわからず首を傾げる俺に、ロレーヌは説明する。
「あぁ。歪みの大きさを見ていたのだが、徐々に広がっているのが分かる。僅かだがな。さらに向こう側の景色もどことなくはっきりとしていっているように感じる。主観で悪いのだが……」
「いや、そこはしっかりと機器で計測すれば分かることだろう」
「その通りだ。ふむ、どうも貴方はうちのレントよりも物分かりがいいな? いや、それはいいか……。つまりだ。歪みが大きくなっていくと向こうとの繋がりが強くなるのではないかと推測出来る。十分な大きさと繋がりの強さになれば、お前はもう一度ここを通って元の時代に戻れるのではないか、ともな」
「なるほど。本当に大きさに変動があるのならそうかもしれない。確証のない話ではあるが」
「そこのところは申し訳ないが、こんな現象は初めて見るのでな。仕方がない。ただ、自然発生した転移系のゲートなどではいくつかそのような事例があるとは読んだことがある。時間をも超えているという例は聞いたことがないが、類似した現象と考えれば……」
「そんなことがあるのか」
「あぁ。もっとも、滅多にないことだからな。帝国の書院でも奥まったところにあるマニアックな書物に記載してあっただけだ。誰も見向きもせん」
「ロレーヌ、よくそんなもの読んでたな……」
いくらロレーヌが有能な学者とはいえ、読める書物の量には限界があるはずだろう。
それも帝国の書院と言ったらその蔵書数は世界でもトップクラスを争う。
速読を身につけていたってその全てを読むにはどれだけの年月がかかるかわかったものではない。
それなのに。
「気晴らしにはそういうものを読むのがいいからな。たまたまだ。しかし意外なところで役に立つものだ……。いや、はっきりと役に立ったとはまだまだ言えんがな」
「手がかりが得られただけでも十分だよ。俺一人じゃ、何も思いつけなかった。せいぜい、ここでずっと張り込むとかそれくらいしかできなかっただろうし」
「結果的にはそれでも帰れた可能性があるという話になるがな」
「……言われてみればそうなのか」
「ただ、不眠不休で観察し続けなければ難しいから、現実的ではないだろうが」
「……そうだな」
ロレーヌとしては、冗談で言ったのだろう。
不眠不休でずっとここで、というのは。
けれどまさか本当に俺がそんなことを出来る体であるとは彼女でも想像の埒外にある。
まぁ、結局力技で帰ることは出来たのかもしれないのか。
ただそれにどれだけかかるか。
一週間か、一月か、一年か、それともそれ以上かは分からないので、その間ここにずっと《歪み》を見るためだけに張り込むのはゾッとする話でもある。
可能であっても率先してやりたい話ではない。
たとえ、不死者の体になって精神的に磨耗しにくくなっているとしてもだ。
一人の夜はそれなりに堪えるのだ。
「さて、それでは必要そうな機器をいくつか取りに戻るとするか。その前に、一応メジャーはあるから大雑把な大きさを測っておきたい。ちょっと手を繋いでてくれ」
ロレーヌがそう言ったのでその手を掴む。
それから彼女がメジャーで《歪み》を測っていく。
そしてそれが概ね終わったところで、
「……あれ? ロレーヌ? と……誰だ?」
そう声をかけられる。
顔を挙げてみると、そこには……。
「……レント」
ロレーヌがそう呟いた。
ちなみに、今日から「望まぬ不死の冒険者」のアニメがテレビで放送開始します。
具体的な時間帯については局によって異なるので、公式サイト等でご確認いただけると幸いです……。
一応、
AT-X 21:00〜
TOKYO-MX 24:30〜
サンテレビ 24:30〜
BS日テレ 火曜日23:30〜
となっております。
またNetflix、dアニメではすでに配信開始しており、12日からは他の配信系でも見られるようになりますので、そちらの方でも見ていただけるとありがたいです……。
他作品も含め、今年はとにかく頑張って更新していかなければと思っているので、どうぞよろしくお願いします。




