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望まぬ不死の冒険者  作者: 丘/丘野 優
第16章 港湾都市
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閑話 ロレーヌの従魔師修行6

ちょい短いかも。

 必要なことは概ね聞いたし、実際にどのようにやるのかも見せてもらった。

 あとは実践するだけ……。

 そう思ったのだが、これがやってみると意外にというか、当然にというべきか、かなり難航した。


「……血液に魔力を溶け込ませる、言ってしまえばたったそれだけのことがこれほど難しいとは」


 私が自らの指先から滴り落ちる血液に集中しながらそう呟くと、インゴが言う。


「いや、魔力を溶け込ませること自体は出来ているぞ。やはり錬金術師であるだけある。普通ならそれだけでも数ヶ月、時には数年とかかるものだからな。私がかつてこれを教わった時は……一年かかった。これだけでだ」


「私の場合、それこそ錬金術で似たような技法は使いますから。ただ……溶け込ませる魔力量、強度、それに血液中の濃度を一定に保つように、という要求が厳しいだけで」


 そう、ただ魔力を溶け込ませるだけなら出来るのだ。

 むしろ簡単だと言っていい。

 しかし、従魔術に使う場合、精度が段違いに要求されるのだ。

 インゴがやっているときはアバウトにやっているのかな、とか、その割には随分と丁寧にやるものだ、とか思っていたのだが、とんでもない話だった。

 実際に自分が同じことをやる段になって、言われた通りのことをやろうとしても出来ない。

 しかしインゴは何度やっても同じバランスで血液に魔力を溶け込ませるのだから凄い。

 全くブレないのだ。

 これは才能もあるだろうが、それ以上に愚直とまで言えるくらいの繰り返しがなければ……。

 けれど私にはそんな繰り返しをやる時間はない。

 これからの人生、長い時間を割いてやってもいいのだが、従魔術を学べるのはインゴからだけなのだ。

 定期的にここに通ってもいいが、インゴはこれで村の長である。

 通常の仕事も忙しいだろうし、あまり時間を奪うわけにもいかない。

 そう考えると、私は可能な限り早く、技術を吸収しなければならないのだ。


「……まぁ、とりあえず今日のところはそれはある程度のところでやめておいて、今後鍛える、でも構わんぞ」


 インゴも流石にすぐには出来るようになる、とは思えなかったのか、そう言ってくる。


「それで問題ないのでしょうか?」


 私はこれが出来なければ魔物を従えることなどできないと思っていたのでそう首を傾げると、インゴは言う。


「スライム程度なら十分だろう。他の魔物……高位の魔物になればなるほど、この作業は正確性を要求されるから、初めからそれを教えているわけだが、スライムを従えるための触媒としては、今くらいの精度でもなんとかなる。まぁ、その分、後の作業が少し厳しくはなるのだが」


「そうでしたか……そういうことなら、次にすすませてもらってもいいでしょうか? この作業については、今後、自ら練り上げていこうと思いますので」


「何事でも弟子や生徒がそういう風に言う時は、後で本当に頑張ったりするかどうか怪しいものだが、ロレーヌについてはその心配はなさそうだな。むしろ、根を詰めすぎないように気をつけることだと言いたい」


「それは……」


 確かに、家に戻り次第、出来るようになるまで徹夜でやってしまうかもしれない自分の性格のことを思う。

 インゴとの付き合いは、まだ、短いが、すでに私の性格をある程度理解してくれているらしかった。

 言葉に詰まった私に、インゴは苦笑し、


「まぁ、その辺りはレントの方にでも言っておくとしようか。あまりにもロレーヌが夢中になりすぎている場合には、一旦ストップをかけるように、と」


「言わなくてもレントは止めるでしょうね。いつもそうですから」


「お、そうなのか? 少し意外だな。あいつはあれで、意外に他人とは距離を取るから」


「そうなのですか?」


「一見、誰に対しても分け隔てないし、親切なんだが……最後の一歩を踏み込みにくいところがある。だから、人にもそう接したりな。分かりにくいが」


 確かに、それは私から見ても感じられるところではある。

 普段はまず問題にならないけれど。

 例えば、神銀級冒険者を目指す、という目標についてだってそうだ。

 それについて他人が踏み込むことを容易には認めない。

 拒絶していると言ってもいい。

 誰が何を言おうと気にも止めずに、ただひたすらに自分の決めたことに向かって邁進する。

 それがレント・ファイナという男なのだった。

 私はそれを思って、インゴの言葉に頷き、


「分かります。でも……」


「でも?」


「私に対しては結構、遠慮なく踏み込んできますね」


 その言葉にインゴは、ほう、と言う顔をしてから言った。


「レントは本当に、マルトでいい相棒と出会ったものだな。息子のことをこれからもよろしく頼むよ」


 果たしてどう言う意味で言ったものか少し考えてしまったが、これに対して首を横に振ることなどあり得ず、


「もちろんです。私にとっても……レントはとてもいい相棒なのですから」


 そう答えたのだった。

昨日11月25日、「望まぬ不死の冒険者8」が発売されました!

以下、なろうの書報になります。


https://syosetu.com/syuppan/view/bookid/4434/


八巻も出せるなんて書き始めた当初は考えてもみませんでしたが、

読んでくれる方、ご購入してくれる方のお陰でここまで来られております。

可能な限りこれからも書籍を出していきたいので、

もし出来れば、書店などで購入してくださるとありがたいです。

どうぞよろしくお願いします。


また、コミカライズ六巻の方も同時発売ですので、

両方手に取っていただけるとさらにありがたく思います。


特典などについては、前回の後書きや活動報告の方に記載してありますのでよろしくお願いします。


★などいただけるとさらにありがたく思います。

ブクマ・感想もお待ちしておりますので、どうぞよろしくお願いします。

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新作 「 《背教者》と認定され、実家を追放された貴族の少年は辺境の地で、スキル《聖王》の使い方に気づき、成り上がる。 」 を投稿しました。 ブクマ・評価・感想などお待ちしておりますので、どうぞよろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
[一言] 二人の関係は醤油とかを阿吽の呼吸で相手が欲しい調味料を無言渡ししあうような長年連れ添った夫婦感すらあるから相棒という表現も間違いではないな
[良い点] レントの嫁は素直じゃない [一言] この魔力を一定に保つ作業はロレーヌよりレントの方が得意そうかな? 昔は吸血鬼も普通に生活してたってことなら、この従魔術もやっぱり吸血鬼から構想かな?
[一言] おかしい、もう嫁だったのではなかったのか(錯乱)
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