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望まぬ不死の冒険者  作者: 丘/丘野 優
第15章 山積みな課題

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第526話 山積みな課題と忍び歩き

 一応、昨日の夜にもちらっと確認しておいたのだが、朝になって状況が変わっているかもしれないと、まずは丘の上から村の様子を確認する。

 見張りはジリスたち村の男達が夜の間も交代で行っていたのは知っているが、やはり彼らは基本的にただの村人だからな。

 狩人の経験がある程度あるといっても夜目が特に利くというわけでもないし、俺が自分の目でしっかりと確認しておくべきことだろう。

 

 村は事前にリブルに聞いていた情報通り、二十軒に満たないほどの家屋がある程度の間隔を保って建っている程度の規模でしかない。

 その家々の間を歩き回る落ちくぼんだ眼窩を持つ白い物体の姿が丘の上からはよく見えた。

 誰も村人のいなくなった村を、ただ骨だけを構成物とする存在がゆっくりと闊歩する姿は何か虚しいような、恐ろしいような不思議な気分になってくる。

 この世の終わりを見ているようでもあるし、もの悲しい夢の中にいるようでもあった。

 ともあれ、そんな感傷に浸っていても話は始まらない。

 まずは骨人スケルトンたちの人数を数えてみる。

 一、二……三、四……五、と。

 短い時間で確かに五体の骨人の姿が俺の目にも確認できた。

 ただ……。


「……これは……五体だけじゃないな。弓を持ってる奴と槍を持ってる奴が、他にそれぞれ一体ずついる……」

 

 俺は独り言のようにそう呟く。

 これは事前の情報にはなかったことだ。

 ジリスも俺の横でうつ伏せになって村の様子を見つめ、俺が指さした辺りを確認すると驚いた顔で頷いた。


「……確かに、おりますな! なぜ……昨日まではあんなものはおりませんでした。皆もそれは確認しております」


「昨日今日で増えたということですか……。放っておくともっと増えていく可能性が高いですね」


「そ、それは困ります……どうにかなりますでしょうか!?」


「あそこにいる骨人に関しては先ほど決めた通りにやれば大丈夫でしょう。幸い、あの弓と槍を持った二体は骨兵士スケルトンソルジャーです。通常の骨人より強力な魔物ではありますが……そこまでの心配はいりません」


 人だった頃の俺ならまず言えなかった台詞だ。

 骨人が数体いればそれで逃げることを考えなければならないような力しかなかったからだ。

 しかし今なら……なんとか出来ると言える。

 もちろん、油断してはならないが。

 付け加えて俺は言う。


「ただ、弓持ちですから……皆さんの危険は増えたと思ってください。なるべく弓持ちの個体については先に倒しますが、絶対とは言えませんので……」


「はい……承知しました。みんな、聞いたな」


 後ろを振り返って、戦う準備を整えた村人達にジリスはそう言った。

 それにしても骨兵士は誤算だったな。

 特に弓を持っている奴だ。

 通常の骨人は錆びた剣や短剣程度しか持たず、その技量の程度も低い上、戦い方は単調で読みやすいものばかりだ。

 しかし、骨兵士は……。

 人に近い合理性を持った戦い方をする存在が増えてくる。

 槍や弓の技量もある程度あり、他の骨人に対する指揮能力も持ち始める。 要はパーティーリーダーのような個体なのだ。

 ただの骨人が十体いるよりも、骨人五体と骨兵士二体がいる方がずっと手強いだろう。

 心してかかる必要がある。

 俺一人だけならある程度、致命傷を受けても回復できるから一気に突っ込んで倒す、ということも出来るだろうが、ジリスたちが見ている前でそれをするわけにはいかないし、彼らも参加する気満々だからな……。

 よくよく注意しないと……。

 ともあれ、敵の戦力は大体分かった。

 見る限り、他にはいないようだし……。


「……では、そろそろ行きましょうか。皆さんは手はず通りに」


 そう言って俺は先導するように歩き出した。

 村人たちも足音を立てないように静かについてくる。

 この辺りの技量はやはり森で生活する村人らしい。

 

 ◆◇◆◇◆


 一人で村の中に入る。

 ジリスたちは村の外の少し離れた位置から俺の動きを注視している。

 骨人が襲ってきたら矢を放つためだ。

 まぁ、それでも出来る限りジリスたちに参加させることもなく終わらせる方が望ましいので、そちらの方をまず試すつもりでいる。

 ジリスたちには色々言ったが、結局それが一番だからな……。

 幸い、村には隠れ場所になるところがたくさんある。

 骨人たちも、骨兵士たちにそういう指示をされているのか、それとも自主的なのかは分からないが、村をバラバラに見回っていて、うまくいけば全員個別に倒せそうな感じだった。

 とりあえず俺は家屋の影に隠れつつ、最初の骨人が近づいてくるのを待つ。

 

 ――カラカラ……。


 と、骨と骨がぶつかり合いながら動く、骨人特有の音色が耳に近づいてくる。

 家屋の角からちらりと見つめてみれば、そこからはゆっくりと近づく骨人の姿が見えた。

 何かに気づいている様子はなく、これなら目の前に来ると同時になんとか出来そうに思える。

 一撃で倒す必要があり、かつあまり音を立てない方がよいだろうと剣には気を注いでおく。 もっとも剣に切断力を与えられるのは気であるからだ。

 魔力の方でも同じくらいの切断力を与えることは不可能ではないが、消耗が激しく、ただ切れ味を追求するなら気の方が合理的なのだ。

 もう少し……もう少し近づけば……よし、今だ。

 そう思った俺は家屋の角に隠れていた俺に気づかず素通りした骨人の背後から飛びかかった。

 それから剣を振りかぶり、その頭蓋をなで切りにする。

 ちょうどその中には骨人の動く原動力なのだろう魔石が収まっていて、剣で素早くえぐるように抜き取ってしまう。

 そうすると、骨人は今までその体が接合を保っていたのが嘘のように動きを止め、バラバラと崩れ落ちた。

 簡単だな……。

 音もさほど鳴らなかった。

 地面がマルトのような町と違ってむき出しの土だからな。

 衝撃を吸収してくれる。

 ただ、ここに骨を放置しておくと他の骨人が見回ったときに気づかれてしまうだろうから……。

 剣に魔力を込め、土を操って骨人の亡骸を地面に簡易的に埋めた。

 それなりに素材として使えるので後で分かるようにあまり深くは埋めないが。

 俺は特に必要ないというか、持って行ったところでそこまで金にならないからいらないのだが、村の再建には使える建材だろうからな……。

 こうして村の中を歩くと分かるが、骨人たちにそれなりに荒らされているのが目立つ。

 立て直しが必要な家屋も複数あるし、素材はいくらあっても足りないだろう。

 

「……じゃあ、次行くか……」


 そして俺は次の建材を確保するため、再度骨人から身を隠しつつ、次の獲物探しへと向かった……。

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新作 「 《背教者》と認定され、実家を追放された貴族の少年は辺境の地で、スキル《聖王》の使い方に気づき、成り上がる。 」 を投稿しました。 ブクマ・評価・感想などお待ちしておりますので、どうぞよろしくお願いします!
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