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望まぬ不死の冒険者  作者: 丘/丘野 優
第13章 数々の秘密
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第345話 数々の秘密と聖気

「魔力を俺から引き出せるのは分かった。だが他の力……気と聖気はどうだ?」


 俺がそう尋ねると、リナは、


「……気はちょっと分からないですけど、聖気の方はいけそうな気がします。うーん……」


 うなりながら何かを試すリナ。

 しばらくすると、俺からリナに向かって聖気が流れていった。

 やっぱり量は大したことがない。

 大体、俺が銅級冒険者だったころに扱えた聖気の量くらいだろうか。

 つまり、汚れた水を浄化するくらいが関の山だ。

 それはそれで遠出すると重宝はしたのだが、聖者や聖女の起こす奇跡と比べるとしょぼいのは否めない。

 若干イザークがリナと俺から距離をとっているのは、やはり聖気の気配が苦手なのだろうか?

 尋ねてみることにした。


「イザークはやっぱり、聖気は……?」


 すると苦々しそうな顔で、


「……あまり気分は良くないですね。骨人スケルトン程度の魔物とは違って、吸血鬼ヴァンパイアは少し浄化をかけられたくらいでどうこうなることは流石にないのですが、それでも……なんていうんでしょう、いぶした煙の中にいるような感じと言えば分かりますか?」


「あぁ……まぁ、言わんとすることは。それは嫌だろうな……」


 そうそう死にはしないにしろ、出来ればその中にいたいとは思わない。

 そんなところか。

 とは言え、一応調べないとならないから少し我慢してもらうしかあるまい。

 イザークもそれは分かっているようで、


「気を遣っていただかなくても大丈夫です。これくらい離れていればそれほどでもないですから」


 そう言ってくれているので、お言葉に甘えることにした。

 しかし、イザークはダメでもリナは全然平気そうだし……やっぱりリナも、俺の眷属ということで一般的な吸血鬼ヴァンパイアとは色々ことなるのだろうな、という感じがする。

 俺はリナに言う。


「聖気を操ることは出来るか? 浄化や治癒、それに武具に流したり出来そうかってことだが……」


 聖気は魔力とは違う。

 その理論や構成を知らなくても、なんとなく使い方が分かる。

 ただ、それは自らの力で、というかしっかりと神や精霊に加護を与えられたかもしれず、そういうわけではないリナには出来ないかもしれない、と思って尋ねた。

 まぁ、エーデルが出来ていたのだから、出来る可能性は高い、とは思っていたけど。

 リナは言う。


「なんとなく、やり方は分かるような気がします。えっと……」


 やってみようとして、何を対象に浄化なりなんなりをかけようか迷ったのだろう。

 そんなリナに、ロレーヌが言う。


「……適当に使ってみればいいんだ。こんな風に」


 そう言って、地面から生える雑草に向かって浄化をかけた。

 彼女もまた、ヴィロだかゲトだかに信徒扱いされて聖気を宿されたうちの一人だ。

 聖気を使えるようになっているのである。

 つまり、宗教団体から見ると、紛うことなき聖女ということになるが……聖女って感じではないよな。

 どっちかと言えば魔女っぽい……。

 ま、あの神霊さまは存在が小さいからなのか、大した量の聖気があるわけでもないが。

 それでも、浄化と軽い治癒くらいは使えるのである。

 ロレーヌが浄化をかけた雑草は若干汚れがとれて綺麗になり、さらに数ミリだけ成長した。

 出張肥料の俺からするとまだまだな感じだが、彼女もまた、植物系の神霊の加護を得ているということがよくわかる。

 まぁ、彼女の場合は雑草に聖気宿る、みたいなことはないのだが。

 そう言う意味では俺はまだ特殊なんだよな……。


 リナはロレーヌのやり方を見て、


「なるほど……」


 と頷き、同じように近くにある雑草に浄化をかけた。

 すると、ロレーヌがやったときと同じように雑草が少しばかり綺麗になり、数ミリばかり成長した。

 聖気は……やはり、宿ってはいない。

 試しに、俺が同じことをすると、雑草は数十センチ伸び、さらにぼんやりと聖気を発し始めた。

 イザークがそれをみて、酷く臭う花を見たかのように眉をしかめた。

 相当きついらしい。

 

「……すまない。持って帰った方がいいよな、これ」


 そう言うと、イザークは、


「……まぁ、庭でも端の方ですし、ラウラ様でしたらぜひ置いていけ、と言いそうなので、そのままでも……」

 

 と返してきた。

 ラウラは……そうだった、珍しい魔道具集めが趣味だったな。

 これも一応、大きく見ればそのカテゴリの中に入りそうだ。

 そうではないとしても、魔道具作りの素材とかにはなりそうだし、だとすれば置いて行けと言いそうだというのは頷ける。

 

「ならそのままにしておこうと思うが、なにか問題がありそうだったら連絡してくれ。すぐに回収するから」


 一応それだけは言っておくと、イザークは頷いていた。

 それにしても、リナは普通に魔力と聖気は俺から引き出して使えるのに、気は出来ないんだな?

 なんでなのか……。


「気は全然引き出せそうにないのか?」


 リナにそう尋ねると、うーん、と唸って何か頑張ってくれるのだが、


「……やっぱり、無理そうです」


 とがっくりとしてしまう。 

 不思議に思っていると、これについてロレーヌが考察を口にする。


「おそらくだが、気については通常通り、修行が必要なのではないか? もともと、戦士が自らの肉体を強化するために身に付ける力で、そのためにはかなりの修行を必要とするわけだろう? リナがもともと使えていた魔力や、身に付ければ使い方がなんとなく分かる聖気とはその辺りが違うのではないか」


 なるほど、それは分からないではない。

 自分の知らない力を引き出そうとしても出来ないというところかな。

 しかし、そうだとするとエーデルはもともと、ある程度は気の使い方を理解していたということになるが……。

 まぁ、思い出すに、もともとエーデルは小鼠(プチ・スリ)にしては若干手ごわかった。

 少しだけだったかもしれないが、気が使えていた可能性はないではない。

 別に人間にのみ発現する力という訳ではないのは、その源が生き物に宿る生命力を基礎にした力であることから分かることだ。

 それか、リナにはまだ慣れが足りないとかそういうことかもしれないが……。

 その辺りは今後、調べていけばいいかな。

 リナに気の使い方を教えてもいいし。


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新作 「 《背教者》と認定され、実家を追放された貴族の少年は辺境の地で、スキル《聖王》の使い方に気づき、成り上がる。 」 を投稿しました。 ブクマ・評価・感想などお待ちしておりますので、どうぞよろしくお願いします!
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