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望まぬ不死の冒険者  作者: 丘/丘野 優
第13章 数々の秘密
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第329話 数々の秘密と支配の方法

「支配するって……支配できるものなのか?」


 《迷宮核》、そんなものがあること自体初耳なのに、それを支配すると言われても……方法がそもそも全く分からない。

 そう思って尋ねた俺にラウラは言う。


「可能です。現在《迷宮核》を支配するものを滅ぼした上で、《迷宮核》に触れることによって迷宮所有者の書き換えが行われるのです。ですから……」


「……今《迷宮核》を支配しているものというと……シュミニだということになるのか?」


 ロレーヌが続きを推測してそう尋ねると、ラウラは頷いた。

 

「おそらくは。そもそも迷宮化の魔術を使ったのは彼ですから、その主を自分にしないわけがありません」


 確かにそうだろう。

 そのために色々暗躍して頑張ったのだろうからな。

 その結果があんな化け物への変化、というところに少し疑問を感じなくもないが……もともとイザークに託すつもりだったようなことも言っていたし、そうなるとおかしくはないのかな?

 その辺りは微妙である。

 とりあえずは置いておくしかない。

 

 そうそう、今、ふと思いついたことがあったので、ラウラに尋ねてみる。


「……もしその辺の小鼠(プチ・スリ)とかを主にしていたらどうなるんだ?」

 

 シュミニがとても酔狂な性格をしていて、ペットの小鼠(プチ・スリ)に主の座を譲りたいとか考えていた可能性もゼロではない。 

 ……ゼロか。

 冗談はともかくとして、あえて《迷宮核》の主を分かりにくいものにして迷宮を他の誰かに支配されることを避ける、というのはありうるのではないか、と思ったのだ。

 これにラウラは、


「そもそも《迷宮核》を支配するのにはそれなりの格が必要なのです。具体的にどの程度かと言われると迷宮の規模にもよるのですが……今回のものは比較的規模が大きいので、普通の人間では厳しいでしょう。シュミニ自身が主になるしかない、と思います。同格の存在がいるのならまた話は別ですが、イザークに頼ろうとしていた時点でそう言った者はいない、と考えられます。それと、非常に規模が小さく小鼠(プチ・スリ)でも支配できるような迷宮だったとして、シュミニがそうしていた場合でも問題はありません。その小鼠(プチ・スリ)を倒して、所有者の書き換えをする、という方法が簡単なことは変わりありませんが、その小鼠(プチ・スリ)よりも大きな力を持つものが《迷宮核》に触れて、所有者の登録を塗りつぶし、書き換えることも可能ですから。ただ、これはかなり隔絶した力量の差がないと厳しいですし、色々と問題があとで出る可能性もあるので……シュミニが主である場合にはいささか難しいです」


 そう答えた。

 色々細かいところはあるが、要はあんまり心配しなくてもシュミニさえ倒してしまえばなんとかなる、というところだろう。

 当初と目的は変わらない。

 ただ、何も知らないでいたら、シュミニを倒して、なんだ、何も解決していないじゃないかとおろおろしていた可能性は低くない。

 聞いといてよかった……。 

 まぁ、ともかく……。


「これでやることははっきりしたな。じゃあ、シュミニのところに行くか」


 そう俺が言うと、イザークとロレーヌが頷く。

 さらにラウラも、


「わたくしも参ります。足手まといにはなりませんので、どうか」


 と言って来た。

 しかしそんなことを言っても彼女はドレス姿でとてもではないが戦える感じには見えない。

 見えないが……彼女は色々と知りすぎている。

 普通の人間の知ることの出来る情報を遥かに超越して色々と知っているのだ。

 しかも、イザークの主で……。

 本人の言う通り、足手まといには絶対にならないのだろうな、と思わせる凄味すら今は感じる。

 普段の穏やかで育ちの良さそうなお嬢様のような雰囲気はあえての擬態だったというわけだ。

 そんな俺の予想を肯定するようにイザークは言う。


「……私よりも主人の方が強いです」


 ……文句ないな。

 イザークより強いってそれはつまり、俺より全然強いってことだ。

 なんだかなぁ……ロレーヌも強いしニヴも強いし、マルトは女性の方が強くないといけないという決まりでもあるのだろうか?

 冒険者としてちょっと寂しくなってくるが、事実は事実として受け入れなければならない。

 ちなみにマルトには、女性には逆らうなという類の諺がちょっと思いつくだけでも十個以上あるので、もしかしたらこれはマルトの伝統なのかもしれなかった。

 

「じゃあ、一緒に行くとしよう。ロレーヌも構わないか?」


「ああ。男だけのむさくるしいパーティよりかはずっといいだろうからな」


 ロレーヌは肩をすくめつつ冗談交じりにそう言った。

 そこまでむさくるしくはなかったはずだ。

 イザークは涼しげなイケメンだし俺は……俺はむさくるしいというよりも怪しげな男という方が正しいが。

 まぁ、あくまで冗談だからあれだけど。


「ありがとうございます。皆さん。では、よろしくお願いしますね」


 ラウラがそう言ってお嬢様らしいカーテシーを見せる。

 可愛らしいし優雅だが、これで俺やイザークより全然強いとなると……人は見かけによらないな。

 武器も持っていないが……聞くのも野暮なんだろう。

 細かいことは後で聞くことにして、とりあえず、一つだけ必要なことを尋ねておく。


「……ちなみにだが《迷宮核》ってのはどんな形なんだ?」


 それが分からないと支配も破壊もない。

 破壊してはダメだけれども。

 ラウラはそうだった、という表情で、


「色々ありますが、主に宙に浮かぶ黒い球形の物体をしていることが多いですね。珍しいものだとそうではないこともありますが……先ほどの魔法陣を見る限り、そう特殊なものではありませんから、心配はいらないでしょう」


 そう言った。

 宙に浮かぶ、黒い球体……。

 それなら間違ってぶっ壊すということもなさそうだ。

 最近、この体になった影響なのか妙に破壊衝動が強いというか、ヒャッハーな気分になりやすいところがあるからな、俺は。

 そういう衝動をぶつける相手は、シュミニだけにしておこう。

 そう思いつつ、皆に言う。


「じゃあ、行くとしようか」


 全員がその言葉に頷いて、民家の中に入っていく。

 入り口は、その床下にあるからだ。

 なんだか締まらない感じはするが……こればっかりは仕方がない。


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新作 「 《背教者》と認定され、実家を追放された貴族の少年は辺境の地で、スキル《聖王》の使い方に気づき、成り上がる。 」 を投稿しました。 ブクマ・評価・感想などお待ちしておりますので、どうぞよろしくお願いします!
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