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望まぬ不死の冒険者  作者: 丘/丘野 優
第11章 山奥の村ハトハラー
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第219話 山奥の村ハトハラーとレント探し

「……やっぱり少し酔ってたかもしれないな」


 レント対骨巨人ジャイアントスケルトン、レント対タラスクの両方を、リリとファーリに見せたときよりも三割増しくらいに演出過多に上映したロレーヌは、ぽつりとそう呟いた。

 とは言え、周りのハトハラーの村人たちの反応を見る限り、特に問題ないと言うか、大好評である。

 曰く、レントがこれほどまでに冒険者として頑張っているとは思わなかった、見直した、とか、かっこいい、村にいたらこっちから求婚したいくらいだわ、とかそんな言葉が交わされているのが聞こえる。

 ……やっぱりやりすぎたか。

 そう思うも、もうやってしまったものは仕方がない。

 とは言え、レントには叱られるかもしれないな……と思って周囲を見渡してみるが、レントの姿が見えないことに気づく。

 レントのことだから、ロレーヌが幻影魔術を使っているところを自分の目で確認しようとするだろうと思っていたが、そういうわけでもなかったようだ。

 もう英雄扱いは諦めたと言うことか……いや、この場にいると度を越してちやほやされそうだから上映が終わった瞬間、さっさと逃げたのかもしれない。

 

 さて、どこに行ったのか……。

 誰か見ていないかと思い、ロレーヌはリリの姿を発見し、彼女に近づく。

 彼女はロレーヌが近づいてくるのを見て、たった今、上映したレントの活躍を描いた幻影魔術について色々な方向から褒めてくれ、それをしばらく聞いてからロレーヌは、切り出す。


「そうそう、リリ。レントがどこにいるか知らないか? おそらくあいつも見ていたかと思うのだが、姿が見えなくてな。本人に出来の感想を聞きたい」


「え、レントいないの? うーん、さっきまでいたような気がしてたんだけど……逃げたのかもね」


 リリは周りを見て、ロレーヌと同じ結論に達したらしい。

 リリは続ける。


「まぁ、どこかにはいると思うから、探してみたら? 私も見かけたらロレーヌが探してたって伝えておくわ」


「そうか。悪いな。頼む」


 ロレーヌはリリにそう言って離れた。

 それからしばらくの間、ロレーヌはレントを探しては見たが、やはり櫓の周辺のどこにもおらず、見つけることは出来なかった。

 

「ロレーヌ殿、楽しんでおられるか?」


 そんなロレーヌのところに、そう言って村長、つまりはレントの義理の父であるインゴが近づいてきた。

 ロレーヌは言う。


「ええ、とても。村の方たちは皆、親切で明るいですし、食事も美味しいです。……これも非常に気に入りました」


 そう言って酒杯を見せると、インゴは目を見開いて、


「……女性でそれを飲んで平然とされている方は珍しい。しかし楽しんでくれているなら良かった。なにせ、ハトハラーは田舎ですから、都会の人には合わないのではないかと不安だった」


「いやいや、そんなことは……。むしろ、マルトにはないものがたくさんあって面白いです」


 食事や酒を抜きにして、この村の在り様は珍しい。

 学者としても、冒険者としても興味を引かれる村であるのは間違いなかった。

 

「そうなのか? それほど面白いものはないような気がするが……ずっと住んでいるとむしろ、わからないのかもしれん。ところで……」


「はい、なんでしょう?」


「先ほどから何かを探しておられるようだが、いかがされたか?」


 その言葉に、インゴがわざわざ話しかけてきてくれた理由が分かった。

 一人きょろきょろしているロレーヌの様子に、何か困っているようだと来てくれたのだろう。

 気遣いにありがたく思いつつ、せっかくだから尋ねる。


「ええ、ちょっとレントを探しておりまして。先ほどから姿を見かけないものですから、どこにいったのかと」


「レントが? ううむ……確かにこの辺にはいないようだ。となると……」


 きょろきょろ周囲を見て、確かにレントがいないことを理解したインゴは、そう言って考え込み始めた。

 ロレーヌはそれに、


「いえ、無理に探そうと言うわけでもないので、心当たりがなければそれで構いませんよ」


 と言うが、インゴは、


「いや、心当たりはある。おそらく、あっちの方にいるだろう。少し、見に行ってみてくれるか? あまり主役が不在だと、宴も寂しいのでな」


 と言って、村の奥の方を指さした。

 そちらは大分暗くなっていて、この時間帯だとかなり歩きにくそうだが、それはあくまで普通の人間の場合である。

 ロレーヌは鍛えられた魔術師であり、冒険者であるところ、この程度の暗がりは全く問題にならない。

 無詠唱で魔術の光球を生み出す。

 インゴはそれを見て少し驚いた顔をしていたが、ロレーヌが魔術師であることはしっかりと知っているから、すぐに通常の表情に戻った。

 それからロレーヌは、


「では、見に行ってみようと思います。教えていただいてありがとうございました」


 と言ってから、インゴの指さした方に歩き出した。

 足元をしっかりと光が照らしているので、何の問題もなく進む。

 それからしばらくすると、大きな建物に突き当たった。

 村の建造物の中では一番大きいかもしれない。

 それでも大したものではないが、装飾から見るに……。


「……教会か。宗派は分からんが、一応あるということかな」


 ロレーヌはそう呟いた。

 東天教のものでもロベリア教のものでもなく、他の大きな宗教団体のものでもない。

 まぁ、このような村だと普通だ。

 土着の神や精霊などを祭っている場合は、ただの大きな建物を教会とし、たまに集会が開かれるくらいのことが多い。

 

 しかし、レントの姿は見えない。

 こっちに来ればたぶんいると言うことだったが……当てが外れたかな?

 そう思っていると、教会の裏手の方に、ふと、人の気配を感じた。

 

 どうやら、外れというわけではなかったようだ。

 そう思ってロレーヌが教会の裏手に回ると、そこには確かにレントがいた。

 地面に直接腰かけている。

 ロレーヌはそれを見て、どうしようかと迷ったが、この距離まで近づいてレントが気づいていないはずもない。

 魔術によって生み出した光球を消してから、堂々と歩いていき、それから、レントの隣にレント同様腰かけた。


「……墓所か」


 ロレーヌが、レントの顔を見ず、ただ前を見つめてそう尋ねると、レントは目の前にある石碑を見つめながら、


「ああ。ここに親父と母さんが眠ってるよ。一応、挨拶しとかないとと思ってな」


 そう言った。


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新作 「 《背教者》と認定され、実家を追放された貴族の少年は辺境の地で、スキル《聖王》の使い方に気づき、成り上がる。 」 を投稿しました。 ブクマ・評価・感想などお待ちしておりますので、どうぞよろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
[一言] >女性でそれを飲んで平然とされている方は珍しい 男性より女性の方が酒に強くないか? 自分の人生で男の下戸は何人も吐いてるの見た事あるが、 女は一回もないぞ。男と違いふらついてるのすら見ない…
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