毛むくじゃら 25
ドラックストアには薬は勿論、ティッシュや化粧品、シャンプー等の日用品やお菓子などの食料まで、かなりの品揃えがある。
お昼過ぎ、俺はそんなドラックストアにブロックタイプの栄養食品を買いに行く事にした。その序にチューハイも買おうとしていたので、本当に1人で行くつもりだったのだが、何故か付いて来た毛むくじゃら。
「何か買うん?」
用事もないのに来る訳がないだろうと思いつつ、目当ての栄養食品とチューハイ1本をカゴに入れ、後はなにか必要な物がなかっただろうか?と店内をゆっくりと1週した。
ふと毛むくじゃらが立ち止まったのは、シャンプーや鼻パック、洗顔料に至るまで、男用と書かれた商品が並べられている棚の前。並んで立って棚を眺めて目に留まったのは鼻パック。
「コレ、普通のとどう違うんやろ?」
と、後ろの棚にあった普通の鼻パックと、男用の鼻パックを手にとって見比べてみるが、パッケージが違う。位しか分からない。
「肌弱い人はメンズ使わん方が良いって聞いた事あるで」
横からヒョイと男用鼻パックを奪った毛むくじゃらは、ソレを陳列棚に戻しながら追加で、
「普通のも使わんでえぇけど」
とか言いながら、普通の方も奪った。
特に使おうとは思ってなかったのに、とか思いながら他の商品を眺めていると、香水コーナーがあった。
テスターが5種類あり、その1つを手にとると無言で差し出される右手。なので掌に1プッシュ。
クンクン。
「うん、結構良い匂い」
と、2つ目の香水を手に取って差し出される左手。
掌に1プッシュ。
クンクン。
「あ、こっちのが良い」
3つ目を手にとってズイっと差し出された右肩。
遠慮なく1プッシュ。
クンクン。
「ん~~~」
4つ目では左肩を差し出してきたので、1プッシュ。
クンクン。
「これ爽やかでめっちゃ良い!」
とか言いつつ最後の1つ。
一体何処を差し出すのだろうか?と注目していると、
「フン」
と胸を突き出してきた。
ここまで来ると申し訳ないなぁ、とか思いつつ思いっきり1プッシュ。
クンクン。
「くっさ!コレくっさ!つか、色々混じってお前くっさ!」
「酷っ!」
ただのノリである。
「俺、これが良い。毛むくじゃらは?」
聞くと彼方此方を嗅ぎ始め、
「左手が1番」
と。
散々香水をかけてしまったのだから、ここは1つプレゼントしよう。
で、左手……左手につけたのはどれだったっけ……。