毛むくじゃら 24
日曜日の午後、夕食の買出しに行ったその帰りに、小さな黒い物体が目に入ってきた。
車道の真ん中に小さな窪みがあって、そこに入り込むようにして小さな物体は綺麗に納まっていた。
なんだろうか?よく見えない。
近付いて目を凝らしてみると、黒い丸っこい物体に、黄色い何かが付いている。
あれは何だ?
更に更に目を凝らしてみると、
「危ないやろ!?」
隣にいた毛むくじゃらに腕を捕まれた。
顔を上げると、そこは車道。
しかし、それ所ではない。あの窪みにいる小さな黒い物体は、鳥だ!
鳥の独特な動き方をしているし、黄色い嘴だし、間違いない!
「あれ、鳥!」
指を差して毛むくじゃらに教えても、
「え?どこ?」
とか言うので、俺はそのまま救助に向かおうとした。
怪我をしていたらどうしよう?
良く分からないけど、飛べるようになるまでは保護した方が良いのだろうか?
それとも近くに親鳥がいないか探した方が?
腕を掴んでくる毛むくじゃらを振り払っていると、向こうから1台のバイクが走ってきた。
真っ直ぐこっちに走ってくるバイク。
このままでは鳥のいる窪みの上を通過してしまう!
「わあぁー!」
火事場の馬鹿力とは恐ろしい、俺はその場で大きく手を振ってバイクに止まれと合図を出していた。
「あぁー……。なんでもないです」
そんな隣では毛むくじゃらが愛想の良い笑顔で会釈して、バイクに行ってくれと合図を出し、バイクに乗った若者は首を傾げて走り去ってしまった。
それでも窪みを避けて行ってくれたから、俺は急いで鳥に向かって行き……。
「あれ?」
窪みの中には、風の力で物凄く鳥っぽく揺れている……黄色いピンが突き刺さった黒い毛糸の塊が入っていた。
「あはははははは」
後ろから、大笑いが聞こえる。