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毛むくじゃら 23

 いつもよりも随分と早くに毛むくじゃらと1代目の家に着いた俺は、何の気なしにテーブルの上を眺めていた。

 勝手に触っては駄目なので片付けるという訳でもなく、眺めるだけ。そうすると1通の往復ハガキが目に入ってきた。

 手に持って見るまでもなく、ソレは中学校の同窓会のお知らせだ。

 ○○年度卒業生同窓会のお知らせ。と書かれている事からクラスも関係なく同級生全員が集まる大規模な同窓会になる予定なのだろう。それに開催地は○○ホテルと書かれているから豪勢なのかも知れない。

 毛むくじゃらの所に来ていると言う事は、俺宛にも往復ハガキが届いているかも知れない。全く気が付かなかったが……。

 過去に同窓会へ参加したのは1回だけ。だけどそれは高校に入ってからスグに行われた中学校の同窓会で、開催地が中学の体育館って言う同窓会と呼んで良いのかも分からない集まりだった。しかも俺は参加しておきながらボッチで過ごし、途中で居た堪れなくなって逃げ帰っている。

 学生ではなくなってからは成人式にすら行っていないから、元同級生と集まって何かをするという経験がほぼない。

 だから、楽しい楽しくないは別にして、経験してみたい……。

 そんな気持ちが先走り過ぎていたのだろう、俺は毛むくじゃらが帰ってくるなり、

 「おかえり!同窓会行くん?」

 と、玄関先で聞いていた。

 それでもスグに察してくれた毛むくじゃらは、靴を脱ぎながら、

 「行かん」

 と。

 「俺は行ってみたい」

 俺は毛むくじゃらにとって物凄く意外な発言をしたらしく、即座に聞き返されてしまった。なのでもう1度行ってみたい事を告げると、色んな角度から「行かない方が良い理由」をプレゼンされてしまった。

 まずは会費が高額である事から。

 それなら1代目と3人で何処か食べに行った方が有意義だ。

 開催地が地元ではない事から。

 電車移動かタクシーになる事は必至。乗り物酔いをする俺が飲食を目的とする場所に行く意味がない。

 同級生に会う事から。

 そんなに仲良くなかった人間に、安くはない金額を支払ってまで会う意味はあるのかどうか。人見知りで人間苦手、その上人間酔いまでするのだから行っても後悔するだけ。

 物凄い正論を言われてしまったら、確かに行っても仕方ないと思えてしまう。だけど俺にだって行きたいと思える理由がある!

 「経験してみたい!」

 「行きたいなら行ったらえぇやん」

 そう言って毛むくじゃらは俺の目の前で欠席に丸を付け、その下に「いたします」と物凄く綺麗な文字で書いたのだった。

 こうして同窓会に関する話題は終わったのだが、しばらく経ってから真実に気が付いた。

 同窓会のお知らせの往復ハガキが、俺の所には来ないという事に!

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