毛むくじゃら 20
夕食の準備が整ったので、俺は2人を呼びにそれぞれの部屋のドアをノックした。
「はーい」
出て来たのは1代目だけ。
もしかしたらヘッドフォンで音楽でも聞いているのだろうか?と、もう1度毛むくじゃらの部屋のドアを叩くが返事がない。
「開けるで?」
声をかけるが無音。
念のためにもう1度、少し強めにノックして数秒、反応がないので遠慮もなくドアを開け放った。
すると、そこにはパソコンに向かう毛むくじゃらがいて、なにやら真剣に動画を見ているようだった。
もしやセクシー動画!?と思っているとフイに毛むくじゃらが振り返り、慌てて動画停止ボタンを押した。
何を見ているのか気になったので身を乗り出すとサッと視界を塞がれた。そして
「見ん方がえぇやつ」
と。
俺が苦手なのはブツブツいっぱいの奴か、体液的なものか、グロか、心霊だ。
「なに系?」
後退りながら尋ねると、
「グロ系」
と答えられた。
食事前にグロて!とは思ったが、見たくないのに知りたいと言う不思議な現象。
見たら絶対に後悔すると分かっていると言うのに、知りたくてしょうがない。
「題名だけでも教えて」
聞かない方が良いと言う毛むくじゃらだが「どうしても」と頼むと、ため息と共に題名を教えてくれた。
「失敗したマジック」
うわぁ~!題名も聞かなきゃ良かった!と後悔している俺の頭をポンポンと撫ぜ、毛むくじゃらはリビングに向かっていった。
その後ろを追いかけながら、俺は必死に脳内変換作業に追われる。
「観客からネタの部分が丸見えで、完全にマジックになってないって言う壮大な失敗かも!」
そう言えば、
「それがなんでグロなん?」
とツッコむ毛むくじゃら。
だったら!
「マジックに失敗して……突き指!突き指したとか!」
どうにか平和な感じに出来ないものかと思ったのだが、
「刃物、やからな」
の言葉に敗北してしまった。