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毛むくじゃら 19

 俺の身長は、低い。なので当然手もそこそこ小さい。

 毛むくじゃらの身長は、かなり高い。なので、手なんかもかなり大きい。

 手の大きさを比べようとして手を合わせてみると、子供と大人、位の差があったりする。

 毛むくじゃらの小指と、俺の親指が似たような太さと言えば想像しやすいだろうか……。

 俺が小さ過ぎるという訳ではないし、毛むくじゃらが大き過ぎるという事もなく、平均よりも俺が小さく、平均よりも毛むくじゃらが大きいと言うだけ。

 土曜日の夜、晩酌を始める少し前の事。

 コンビニまで買い出しに行こう。とか言う小会議を行う事もなく、俺は毛むくじゃらの手をとってしっかりと握り締め、親指で親指を押える。

 「1,2,3,4,5、負けた者が買出しな。6,7、8……」

 パッと手を離される。

 「負けた者が奢る事な」

 毛むくじゃらが新しいルールを追試し、再び手を握る。

 単なる指相撲なのだが、毛むくじゃらはセコイ事に人差し指を駆使してくる。そんな俺は押さえ込まれたら手を振って、一旦手を離すという荒業を繰り出す。

 「1,2,3,4,5……」

 数える時はお互い高速である。

 手の大きさのハンデがあろうとも、親指の間接部分を力いっぱい押えればギリギリ勝てるので、一応対等な勝負方法。

 これが腕相撲なら両手を使っても勝てないと言うのだから、情けない。

 こうして格闘する事数分、やっと親指を押えつける事に成功した。後は10まで数えれば俺の勝ち!

 だったら、もう1つルールを追加しよう。

 「1,2,3、俺が勝ったらチューハイ5本な。4,5……」

 毛むくじゃらは、お酒大好きな俺に「チューハイは1日1本まで」とか訳の分からない事を言って来るので、それを止めてもらおうというのが狙いだ。

 「は?5本?」

 パパッと手が離れていった。

 「途中放棄すんなや」

 手を握ろうとすると、両手を後ろに回した毛むくじゃらは、

 「本気なんはアカン。手加減できん」

 と。

 「そんなんせんでえぇから」

 無理矢理手を握り、親指を押さえ込んだ所から試合再開させ、そこから更に数分後。

 「手の色悪っ!」

 慌てて手を離した毛むくじゃらは、俺の掌や親指ではなく、手首の辺りを眺めている。

 普段と何も変わらない色だ。しかし、指や掌が熱を持って赤いのでその白さが際立ってしまったのだろう、正直、自分でも生きている人間の色ではないと思った。

 血流がどうにかならないかとグーパーを繰り返していると、毛むくじゃらは俺の手をとり、大きな両手の親指で手をマッサージしてくる。

 そして密かに聞こえて来る、

 「1,2,3,4,5,6,7,8,9,10」

 しっかり勝ちにきやがった。

 「せっこー」

 「後で俺がコンビニ行って来るわ。んでもチューハイは1本やで」

 「ライムな」

 はいはいとコンビニに向かった毛むくじゃらを送り出し、俺は台所に向かい、氷を拝借して親指に当てた。

 毛むくじゃらは普段本当に手加減をしていたのだろう、手加減なしで挑んだ指相撲の最終結果は、俺の親指負傷と言うオチ付で終わったのだった。

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