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トリオ

 先週の日曜日、1代目が突然しみじみとこう言った。

 「本当に仲良いですね、喧嘩とかした事ないんじゃないです?」

 と。

 毛むくじゃらとは中学からの友達なので付き合いが長い。長いと言う事は、その分数え切れないほどの喧嘩をしてきた。

 今から思い返してみれば、ただの小競り合いではあるのだが。

 「めっちゃしたで。なぁ」

 同意を求められて頷くと、1代目は「信じられない」とか笑いながら小競り合いの原因などを聞いてきた。

 「喧嘩ばかりじゃあ1代目も嫌でしょ」

 俺はそう言ってこの話を締め括ろうとしたのだが、毛むくじゃらは更に話を続けた。

 「もし、俺らが喧嘩してたら、どっちの味方する?」

 味方も何も、正しい事を言ってる方に賛同するだろ。

 「喧嘩の内容によりますよ」

 1代目は少し申し訳なさそうに正論を言って、今度こそ本当にこの話は終わった……に見せかけ、俺は少しだけ気になってしまった。

 もし、俺達が本当に喧嘩をした時、1代目はどうするのだろうか?

 と……。

 俺は携帯を持っていないので、毛むくじゃらや1代目と連絡を取り合う時、SNSを利用している。

 世間話的な事を楽しげに喋っていると言う訳ではなく、連絡事項のみ。

 例えば「土曜日に行く」と言う確認作業だったり「飯ちゃんと食った?」とか言う心配事であったり。

 水曜日だったか、木曜日だったか。3人で軽いやりとりをしていると毛むくじゃらがこう発言した。

 「日曜、休日出勤になった」

 と、打ち合わせ通りに。

 普通ならばそこで「じゃあ土曜は行かない方が良い?」と確認作業をする所だが、俺も打ち合わせ通り、

 「そうなんやー」

 と、話を流した。

 こうして向かえた土曜日、いつもなら家を出ている7時半過ぎに、俺はまだ自分の部屋で待機していた。

 親父が帰ってきて弟が出て行って、少し経ってから夫婦の夕食が始まっても、俺はダイニングから聞こえて来る溜息やら咳払いを無理矢理に無視して自室待機。

 8時を少し過ぎた頃だろうか、駐車場から部屋の窓をノックする音が聞こえた。

 これがドンドンと言う音ならば姉、コンコンと普通の音なら他の人。しかしコツコツと爪だけで叩いて来るこの軽い音は、間違いなく毛むくじゃらだ。

 カラカラ。

 窓を開けると、思った通り毛むくじゃらが立っていた。その背後には車。

 「早ぅ出て来いや」

 晩酌を始めていた親父達の横を疾風の如く走り抜け、外に飛び出して駐車場に回ると、毛むくじゃらは車に乗り込んでいた。

 ガチャっと車のドアを開けて乗り込み、マンションへ向けて出発。

 「部屋に入る前から機嫌悪い方がえぇよな?」

 「んでも階段で言い合いしてたらご近所迷惑やろ」

 「殴る振りしよか?」

 「軽く当ててくれたら大袈裟に痛がるわ」

 ニヤニヤと2人で作戦会議。

 俺達が喧嘩を始めた時、1代目がどうするのか……そう気になっていた俺は、それを見る為にドッキリを仕掛ける事を思いついた。それを毛むくじゃらに言うと、意外にもノリノリで協力してくれる事となり、こうなった。

 喧嘩の切欠は「休日出勤」と言うSNSでの発言、喧嘩をする理由は意見の食い違い。

 毛むくじゃらは「休日出勤やから、夜寝る時は1代目の部屋を使って」と言う意味で発言し、俺はそれを「休日出勤やから家には来ないで欲しい」と受け取り、ネットカフェに行こうとしていた。

 いつまで経っても部屋に来ない俺にイライラし始めた毛むくじゃらが車で迎えに来る。

 と、多少強引な設定。

 しかし、俺が気を利かせて3週間マンションに行かなかった時、毛むくじゃらは少々不機嫌だったようなので、強引な設定とは言え真実味はある。

 さぁ、後は笑わないように実行するのみだ!

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