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1代目 18

 テーブルの上に桃缶が置かれている。

 そして、それを眺める1代目。

 「これって、おうごんもも?ききんもも?」

 どうやら黄金桃の読み方を考えていたらしい。しかし「ききんもも」はないだろう……。食べ物の名前っぽくないし、第一まずそうだ。

 「……ゴールデンもも」

 一応ボケてみると、

 「そこ英語ならゴールデンピーチでいいじゃないですか!?」

 と、ツッコミを入れてきた1代目は笑っているので、これを“笑わせて”に使えば良かったと後悔しつつ、

 「おうごんとう。ですよ」

 と正解を教えた。いや、ゴールデンピーチも正解なのだが……。

 こうしてしばらく後にやってきた眠気にソファーに横になると“笑わせて”と1代目がニコニコしながらやってきた。で、床に正座して顔を見てくる、

 「……笑ったら駄目ですよ」

 「はい!」

 「昔々あるところにお爺さんとお婆さんがいました」

 「はい」

 「お爺さんは山に芝刈りに、お婆さんは川に洗濯に行きました」

 「はい」

 「すると、川の上流からドンブラコ~ドンブラコ~とゴールデンももが……」

 「ぷぅー!」

 「おやすみなさい」

 30分ほどの仮眠を取って目覚めると毛むくじゃらが帰って来ていたので、夕飯を温め直して夕食を食べ、少しの談笑をして。お風呂に入ったり、歯を磨いたり。

 こうして着々と睡眠時間が迫ってくると、1代目はまたソワソワと俺の周りを行き来し始める。

 で、言う事は1つ。

 「寝る前に、お笑い劇場!」

 終に“笑わせて”に正式な名前が付いてしまったのだ。

 ソファーに座ると、いそいそと俺の前に座る1代目はまた綺麗に正座している。

 「……笑ったら駄目ですよ」

 話し始める前のこの声かけも、恒例になっている。

 「はい!」

 「昔々ある所にお爺さんとお婆さんがいました」

 「はい」

 「お爺さんは山に芝刈りに、お婆さんは川に洗濯に行きました」

 「はい」

 「すると、川の上流から桃が……そう、あのゴールデン桃が流れて……」

 「ぶぅ~!」

 「おやすみなさい」

 この後しばらくゴールデン桃で“お笑い劇場”を凌げた理由は、俺には分からない。

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