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俺 14

 緊張で眠れない夜、眠る事を潔く諦めたのが12月30日の事だった。

 バイトも休みに入ったので、やる事など大掃除か年末の準備しかない。

 親父達は29日から旅行に行って不在なので、久しぶりの自宅警備兵のスイッチ全開である。

 とは言っても、下手に台所を掃除してしまうと、そこはもう既に俺とは無関係の戦場。料理を作る程度なら使用しても良いのだろうが、掃除となれば別の話。

 使いやすい所に調味料を置いているのだろうし、使いやすいように鍋やらフライパンの取っ手の向きも揃えられているだろう武器達は、使っている本人以外が見た所で分からない。

 分からない物には、触らない方が良い。そして、使った後は出来るだけ同じ向きにして直さなければならない。

 と、こんな事を延々と考えているのには訳がある。

 12月31日の朝。

 臨戦態勢だった俺の部屋に響くノック音。

 出てみると朝風呂からあがったばかりの弟が立っていて、

 「ねーちゃん。何時ごろに来るとか聞いてへん?」

 と。

 俺は31日姉が来る。と言う事を弟から聞いて知っただけなので、詳しい情報など何も持ってはいないが、朝に弱い姉の事だから昼頃になるのだろうと予想が付いていたので、

 「昼頃ちゃう?昼食済ませてくるとか」

 と、答えた。

 「食べて来んかったら?なんかある?」

 「白飯は炊いてるから、なんとでも出来る。それに、冷凍ピザもあるから問題ない」

 ビッと親指を立ててみせると、同じように親指を立てた弟は、ガシガシと髪を拭きながら2階にあがっていった。

 それから1時間程が経った12時ちょっと過ぎ。

 再びノック音が聞こえて、出てみると外出準備を整えた弟が立っていた。

 これから何処かへ?

 「ねーちゃん向かえに行く事になった。やから2時頃かな」

 「分かった」

 「酒屋寄ってくるから、なんか欲しいのある?」

 「ジン系。甘くなかったらなんでもえぇけど」

 「OK」

 こうして弟は出発した。

 酒屋に寄ってから帰って来ると言う事は、到着した瞬間に飲み会が開催される事になるのだろう。だったらダイニングのテーブルの上を広く使えるように片付けておくか……。

 ノンビリとダイニングで長い時間過ごす事になっている俺は、台所の使用について思いを馳せている。

 何故そうなったのか、簡単に言ってしまうと、来ないからだ。

 2時頃に帰って来ると言っていた筈の弟が、2時を過ぎても戻って来ず、3時になっても音沙汰がなく、4時になっても連絡すら来ない。

 弟が来るのではなく、弟が行く事に変更されたか?いや、それにしても連絡の1本位は欲しい所だが?

 弟は車で向かえに行ったのだからドライブを楽しんでいるのかも知れない。いや、だからと言っても、やっぱり連絡は欲しい。

 結局姉がやって来たのは、待ち草臥れて自室に戻って少し経ってからの5時前だった。

 「お邪魔―」

 そう言いながらドヤドヤと入ってくる姉と、甥と姪と、弟。部屋のドアをノックされて出てみる。

 去年の正月に遊びに来た甥と姪は、寒さに耐え切れずに風邪をひいてしまったそうで、軽くトラウマになっていたらしい。だから事前情報として“泊まるか泊まらんかは分からないけど、泊まらない可能性の方が高い”と、弟から聞いていた。

 それでも一応尋ねなければならない。

 何泊の予定なのか……食事の準備もあるから聞いておきたい。と前置きしておけば角も立たないだろうと、ちゃんと質問分まで考えていたと言うのに、ダイニングに出た瞬間、答えを見た気がした。

 姉達は、掛け布団を持参してきていたのだ。

 布団と言う大きな荷物があるから、弟に迎えを頼んだのか……じゃない。何泊の予定なのかを聞かなければ……。

 「先に布団2階に持って行こか」

 「そうやな、1階狭いしな」

 ゾロゾロと2階へ移動して行く姉達。

 あ、まぁ……いらっしゃーい……。

 聞き損じたぁー!

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