1代目 16
ホットプレートを購入してから少し経った頃の事、俺はちょっとした買い物をしてから毛むくじゃらと1代目の部屋に向かっていた。
ピンポーン♪
押して数秒、中から足音が聞こえる。
時間は6時を少し過ぎた辺り、今日は1代目がいると分かり、覗き穴を指で押さえてみた。
何の躊躇いもなく開けられたドアと1代目の笑顔。
「そんな事するの木場さんしかいませんもん」
だそうだ。
部屋に入り、早速夕飯の支度を始める。この日のメニューは焼きソバ。3玉100円と言う安売りをしていたのだ。
大食らいの毛むくじゃら対策としてもやしも買ったのだが、もやしの方がソバより高かった。
冷蔵庫から玉ねぎと豚肉とキャベツを取り出して切り、もやしを水洗い。下準備が出来た後、棚の奥からホットプレートを取り出し、軽く拭いてスイッチオン!
野菜と肉を炒めているうちから1代目はテーブルに着席して、熱心に火の通っていく肉を見つめている。
「油が飛ぶかも知れないので、もう少し離れてください」
声をかけると、ハーイと子供みたいに言った1代目は椅子の背もたれにもたれ掛かりながら、それでも熱心にホットプレートを見ている。
人が料理をしている様子なんて珍しくもないだろうに。
「今度、カツ丼作ってくれますか?」
突然過ぎるぞ!え?焼きソバ嫌いだったのか!?
「焼きソバ無理なら、今から卵丼作りますよ」
「焼きソバは好きですよ。木場さんバイトで賄い作ってたんでしょ?俺、食えてないですもん」
あ、好きだったのか。それは良かった。
それにしたって、バイトの賄い?いつの話を引っ張り出して来るんだ?けど、確かに俺が賄いを作るようになったのは1代目が辞めてからだっけ。
「じゃあ、明日はカツ丼にします」
「ヤッター!」
なんだろう……この、子を持った親の気分は。




