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毛むくじゃら 18
夏真っ盛りの頃の事。
毛むくじゃらは、風呂からあがると髪を乾かすよりも、服を着るよりも先にアイスを食べ始めた。
仕事帰りにコンビニで買ってきたバニラアイスを楽しみにしていたそうだ。
100円なのにかなりの量があるカップアイスを美味しそうに食べているのを少しだけ見つめる、
「いっつもソレやな」
何気なく尋ねると、
「どれでも味は変わらんし、安いのがお得でえぇやろ?」
と。
味が変わらない?いやいや、全然違うと思うけど!?
俺は毛むくじゃらからアイスを取り上げて冷凍庫の中に戻し、
「先に着替えてから食べや」
と声をかけてからスーパーへ向けて自転車を走らせた。
購入したのは100円で少し小さめのアイスと、300円ほどの高級アイス。2つともバニラ味だ。
こうして突如始まった利きアイス。
その結果、毛むくじゃらは「どれでも味は変わらん」とか言っておきながら全てを正確に言い当てた。
その後、
「やっぱコレが1番美味しいわ」
と、1番安物のアイスを選んだのだった。