俺 12
高校時代にバイトをしていた喫茶店は、家と学校の真ん中辺りにあり、ホームセンターに行く途中にある交差点で右を向くと店の看板が見える。
俺は切れたトイレの電球を買いに100均に行くつもりだったのだが、洗濯用洗剤も切れていたのでホームセンターに向かって歩いていた。
信号待ちで右を向いて見える看板。
いつもならここで高校時代の事なんかを思い出しながら信号を待ち、青になったら前を向いて歩き出す所なのだが、何故だか急に「挨拶をしよう」と店に向かっていた。
カランカラン。
全く変わらない店内の雰囲気。
珈琲の良い香りと、観葉植物の緑。そしてデッキ床と言うのか、歩くとコツコツと良い音がする。
店内はそんなに広くなくて、喫茶店ならばドーンとあっても可笑しくないサイフォンやウォータードリッパーは置かれていない。
ここは昔からペーパードリップで、注文を受けてからコーヒーミルで使う分だけを挽く。
「久しぶり。ブレンドやろ?」
マスターがニカリと笑う。
「はい。お願いします」
俺はカウンターの1番端の席に座った。
その場所は、スタッフ用の休憩席。
そこから窓の外を眺めると、外に張り出されている張り紙の文字が透けて見えて、それをボンヤリと眺める。
その左右反転に見える文字は読もうとしていなくても解読が出来て、頭の中で読んでみて心が少しザワツイタ。
バイト募集。




