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トリオ 20

 31日が月曜日なので、ハロウィンパーティーは今日やってしまおう。

 そう意気込んで土曜日の強制外泊に向かった。

 もちろんハロウィンには然程興味のない毛むくじゃらや1代目の事、日曜日ならまだしも、土曜日は普通の日と思っているだろう。

 毛むくじゃらと1代目の部屋に向かう自転車の前カゴには4分の1個ほどのカボチャと、タッパーに入ったペースト状のカボチャ。

 目的地に着いたのはいつもよりも大分早い時間で、誰もいないとは思いつつ、

 ピンポーン♪

 一応チャイムを押して10秒待ってからお邪魔した。

 カボチャを持って台所に立ち、冷蔵庫からバターを取り出して菜箸で白っぽくなるまで混ぜ、砂糖を加え、卵黄を加え、カボチャのペーストを加え、混ぜる。そこへ小麦粉を入れてザックリと混ぜてラップに包んで冷蔵庫の中へ。

 4分の1個ほどのカボチャを食べやすい大きさに切って鍋に入れ、ヒタヒタにつかるまで出汁を入れて落し蓋代わりのアルミホイルを乗せて火にかける。

 カボチャに火が通るまでの間に、カボチャのペーストの残った半量をボールに入れ、少しずつ牛乳を加えながら混ぜ、最後にコンソメを少し。出来上がったスープをボールのままラップをかけて冷蔵庫の中へ。その序に冷蔵庫に入れていたクッキー生地を取り出す。

 鍋からグツグツと聞こえてきたので醤油とみりんを加え、クッキー生地をまな板の上で伸ばす。

 包丁で四角に切り分けた後、パン粉を取り出してクッキングシートにまぶし、オーブンで焼き色が付くまで焼き、その余熱が残っているうちにクッキー生地を入れて焼く。

 残っていたカボチャのペーストを取り出し、適当な大きさに千切って丸め、狐色に焼いたパン粉を表面に付けた。

 こうして仕上げた夕食は、カボチャの煮物とカボチャのスープ。カボチャのなんちゃってコロッケに、食後のカボチャクッキーの4品。

 食事の支度が出来た後は、去年大好評だった傷口メイク!

 今回はより本物っぽく見せるために人差し指の付け根に小さく施す。カボチャを切る時に手を切ってしまった。とか言う笑えない裏設定も作り、後は2人が帰って来るのを待つだけ。

 ガチャン。

 帰ってきた。

 軽快な足音は、真っ直ぐリビングに近付いてくるとドアを開け、

 「ただいまー」

 と。

 ここは普通「いらっしゃい」じゃないのか?いやいや、ペースを乱されては駄目だ。

 「……お帰りなさい」

 ソファーに座ったまま、深刻そうに俯いて返事をすると、

 「え……何かあったんですか?」

 と、ソファーまで歩いてきた1代目。

 「言いたい事が、あるんです」

 そこで顔を上げて顔を見ると、1代目も俺に注目していた。

 「なんですか?」

 そして隣に。

 「1代目」

 ゆっくりと名前を呼び……

 「……はい」

 絡み合う視線。

 よし、今だ!

 「ハッピーハロウィーン」

 「えっ!?」

 ふっ、どうやら開幕式は成功したようだ。

 1代目から遅れる事30分後に毛むくじゃらも帰ってきたので、同じような感じで「ハッピーハロウィーン」と言ってから夕飯を食べた。

 夕飯中、指に施した傷口メイクを見付けた毛むくじゃらに「それビックリするから止めろ」と本気の注意を受けたが、ハロウィンだからと説明して事なきを得た。

 食器の片付けをして、お風呂に入って、就寝準備を整えて。

 綺麗に傷口メイクも落とせば、毛むくじゃらはハロウィンに託けた俺のイタズラは終わったと思っただろう。

 だけど、最後にもう1つ地味なのを用意している。

 「おやすみー」

 そう言って明かりを消してしばらく、毛むくじゃらからは規則正しい呼吸音が聞こえてきた。

 寝たか?

 ソッと起き上がり鞄を開けて、持参した飴を取り出す。

 ガサガサと結構な騒音がした筈なのだが、起きる気配がない。だったら起きる前にやってしまおう。

 飴を手に立ち上がり、寝ている毛むくじゃらの枕周りと顔周りに並べる。1粒ずつ包装されている飴なので、置く度にカサッと音がするが、それでもやっぱり起きないので、作業は手早く終わった。

 夜中、トイレに起きた毛むくじゃら。

 俺は寝た振りをしながら、どんな反応だろうか?と楽しみにしていたのだが、毛むくじゃらから聞こえてきた言葉は、

 「……」

 特になし!

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