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俺 3

 旧母親から事前告知があった。

 31日の午前中に、姉と甥と姪が来る。

 そう言うので俺は食料を買い溜め、冷凍保存していたし。米だって10キロ買い足した。それでも足りない気がして肉のブロックやインスタントラーメン、冷凍コロッケ等々用意した。

 お年玉があげられる余裕がないので、変わりに練習を重ねたシフォンケーキとクッキーでも焼いておこうと、ここまで決めていた。

 なので30日の夜中にクッキーの下準備をして。姉が来てから実演的な感じでシフォンを!とか、勝手に計画を立てていた。

 にも関わらず。

 30日の午後10時過ぎ、甥と姪の2人が家にやって来た。

 いきなり予定外過ぎる!

 え?子供だけ?こんな時間に?どゆ事!?

 弟によると31日に来る予定だった姉が風邪を引いたらしく、だったら子供達だけでもと言う事になったらしい。そのため弟は仕事帰りに旧母親の家に寄り、甥と姪を連れて帰ってきたと言うのだ。

 今日30日なんですけど?

 え?お年玉代わりにクッキーとシフォンを焼こうと思ってたんですけど!しかも明日来ると思ってたから今日、何も作ってませんけど!

 「コレ、オカンから」

 と、弟から手渡されたのは370mlほどの飲みきりサイズ白ワイン。

 物凄い圧を感じる……。

 とりあえず晩飯だ!と冷蔵庫を開けると、弟が甥と姪に何食べたい?と聞いた。だから手のかかるものでない限りは作ろうと思ったし、無理そうならコンビニにでも、と考えていたのだが、姪は

 「マヨネーズがけゴハン」

 と、衝撃的な回答をした。

 1夜明けての31日。

 例の如くあまり眠れなかった俺は、自室にてテレビをボンヤリと眺めていた。

 小説でも、と思っても、他人の気配がする中では落ち着いてパソコンに向かう事が出来なかったのだ。だからと言って予定していたシフォンやクッキーを作ろうにも、ダイニングでは親父達の飲み会が始まっている。

 親父は久しぶりに見る甥と姪を歓迎して魚を焼いたり、ジュースを勧めたりとしていた。

 こんな中で俺がダイニングに出た所で、する事はなにもない。

 良いのだろうか?とは思いながらも部屋から出ないまま過ごし、気が付けば夕方に。ダイニングではまだ親父達が飲み食いをしているが、流石に腹が減ったので部屋を出た。

 「やっと引きこもりが出てきた」

 随分と出来上がってしまった弟が声をかけてきた。

 誰が引きこもりだ。

テーブルの上を見ると大量のお菓子。

 甥と姪はそれらを食べながらジュースを飲んでいると言う不健康極まりない事になっていた。

 何故おでんを食わない!?

 いや待て、親父や新母親がいる中で下手に口を出すのは間違いだ。台所仕事は、今となっては新母親がしている事だし、おでんを作ったのは親父。それなのに引きこもりである俺が前に出るべきではない。

 それよりも、今はお菓子でも何でも良いから食べよう。その序に、今後の事をそれとなく聞き出さねば。

 ワインとチーズを口に運びながら聞き耳を立てていると、親父が甥と姪に、

 「初詣行くか?」

 と聞いていた。それに対する答えは「うん」どうやら泊まるらしい。と分かった所で、俺に出来る事など特にない。

 引きこもり続行するべく部屋に入り、寝正月の予行練習を熱心に行う。

 そして代わり映えもなく1月1日。

 1番に起きてきたのは親父で、続いて姪。弟は「午前中には家に送る」と言っていたらしいが、前日に夜更かしし過ぎたらしい、起きてきたのは11時頃だった。

 コンコン。

 弟が甥と姪を連れて家を出て、それから少し経ってから聞こえてきたノック音。なんだろうか?と出て見ると親父がいて、

 「これお前の」

 と、2枚の年賀状を手渡してきた。

 年賀状?

 くれるような人物に心当たりがないので、不思議に思いつつ差出人の名前を見て、

 「ぶっ!」

 壮大に噴出した。

 毛むくじゃらと1代目からだったから。

 で、ハッピーニューイヤァ~ンと、アフォな事がちゃんとした年賀ハガキに書いてあったのだ。

 そのお返しにと数時間かけて絵を描き、メールで送って少し、2人から別々に返事が届き、同じツッコミを受けてしまった。

 「サル年のサルは猿じゃなくて申!」


挿絵(By みてみん)

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