表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/100

トリオ 18

 片手鍋しかない調理器具をどうにかしようと、3人でホームセンターに行く事になった。

 車に乗っての移動になるので、乗り物酔いの激しい俺は朝食を抜く事にしたのだが、何故かそれを毛むくじゃらと1代目が真似しようとしてくるもんだから、俺は2人分の朝食を作った。

 きっと2人は朝食を作るのが面倒だったのだろう、作ってしまうと大人しく食べてくれた。

 こうして朝の11時過ぎ、ホームセンターに向かうべく車に乗り込んだ。

 運転席には毛むくじゃら、後部座席に俺と1代目。どっちかが助手席に行くのが普通だとは思うのだが、毛むくじゃらは助手席に誰かを座らせる事を嫌がる。

 なんでも、事故が起きた時、助手席が1番危険だと聞いたからだとか。

 事故らなければ問題ないんじゃなかろうか?と言ったのだが、

 「自分が気ぃつけてても、相手からぶつかってくるかも知れんやん」

 と、熱く拒否された。

 相手からぶつかってくる場合、何処に乗っていようとも危険なのでは?とは思ったが、大人しく後部座席に座るようになっていた。

 特になんともなく無事にホームセンターに着き、目当てのホットプレートが売ってあるコーナーに向かったのだが、隣には誰もいない。

 毛むくじゃらも、1代目も、それぞれ自分の興味のある売り場に行ってしまったのだ。

 どうせ毛むくじゃらは家電売り場の何処かにいる筈で、1代目は……はて、何処にいるのだろう?

 そう言えば1代目の興味があるものを知らない。

 何処にいるのか、探してみようじゃないか!

 まず向かったのは家電売り場、もしかしたら毛むくじゃらと一緒にいるのでは?と思ったからなのだが、そこには電子レンジを眺めている毛むくじゃらしかいなかった。

 工具売り場、ペットコーナー、目覚まし時計や掛け時計の置いてあるエリア、文房具売り場、洗剤やシャンプーと言った消耗品コーナーまでをくまなく見て回ったが、何処にもいない。

 こうして最後の最後に足を向けたのは、健康器具売り場。

 マッサージチェアーに試し乗り出来る広いスペースの横にはちょっとしたスポーツ用品も売っていて、色んな物がお試しで使えるようになっている。

 そこで体を動かしているのだろうと足早に向かったマッサージチェアー広場。そこには確かに1代目がいた。

 ダンベルを持っている訳でも、ルームランナーを試している訳でも、ぶら下がり健康器にぶら下がっている訳でもなく、ただ熱い視線をマッサージチェアー広場に向けていた。

 広場には普段、高額なマッサージチェアーがズラリと並んでいるのだが、その日、広場の隅には1台のロデオマシーンに似た健康器具が置かれていたのだ。

 きっと、物凄く乗りたいのだろう……。

 巻き込まれたら大変なので、俺は1代目に見付からないようソッとホットプレートが置いてある売り場に戻った。

 無事に買えたホットプレートには、焼肉プレートと言う魅惑のプレートがついていた。他にもたこ焼きプレートが付いていたのだが、焼肉と見た時から俺達の頭には焼肉しかない。

 そんな訳でホームセンター帰りにスーパーに立ち寄る事になった。

 駐車場に車を停めて、車を降りて。

 スーパーの入り口に向けて歩きながら3人で「初めて使うホットプレートだし、最初は軽く拭いてから使おう」とか「布巾はあっただろうか?」とか「いくら分の肉を買おう?」とか他愛ない話をしていると、毛むくじゃらと1代目が急にピタッと歩くのを止めた。

 何かあるのだろうか?

 そう不思議になって見渡した俺の視界には、コッチに向かって走って来る1台の車が映った。しかも結構なスピードである。

 毛むくじゃらと1代目が立ち止まった位置から既に数歩歩いてしまっている俺は、確実に行くか戻るかしなければ轢かれてしまう位置にいる。

 戻る方が距離的には短いが、前に進もうと3歩目を中途半端に出している状態、前に行った方が早いか?

 4歩目を前に出すか、後ろに出すか。

 頭の中でそんな事を思っていると、毛むくじゃらと1代目は同時に声をかけてきた。

 「行け!」

 「戻って!」

 俺は、

 「どっちやねん!」

 と、ツッコむ為に2人の元に戻ったのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ