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毛むくじゃら 15

 9月15日が中秋の名月であると知ったのは、前日の昼過ぎだった。

 スーパーに行くと1人のご夫人が、和菓子コーナーで月見餅を選んでいたのだ。

 そうか、明日なのか……。

 去年の十三夜と、今年の流星群は、見ようと思って外に出て、空を見上げたにも拘らず雲しか見えなかった。

 しかし、去年の十五夜は綺麗に見ている。

 果たして今年も見られるだろうか?

 曇り空しか見る事が出来ない大きな理由は、俺が雨男だから。それでも去年の十五夜を見られたのは、俺が1人だったから。

 十三夜と流星群の時、俺は1人ではなく、もう1人の雨男と一緒にいた。

 毛むくじゃらだ。

 果たして、今年の十五夜を見る事は出来るのだろうか?

 そして9月15日の夕方、毛むくじゃらに宛ててメールを送った。

 「一緒に夜空を見上げよう」

 返信は意外とスグに来た。

 「またかい」

 どうやら月見に興味がなかったようなので、

 「一緒にコーヒー飲も」

 と、誘い文句を変えてみた。

 するとまたスグに返事が来た。

 「行くから待ってて」

 こうして待つ事数時間。

 毛むくじゃらは12時を過ぎた頃にやってきたので、これでは9月15日の月ではなく、16日の月なのでは?とは思ったが、月が沈む前なら十五夜だろうと考え、駐車場にいる毛むくじゃらの元へ急ごうと外に出た瞬間、

 「ふっ……」

 声が漏れてしまった。

 ザッザッザ。

 歩いて来る音が近付いて来たので視線を向けると毛むくじゃらがいて、挨拶等を飛ばし、

 「半袖や。冷えへん?」

 と、良く分からない心配をされた。

 風は確かにひんやりとしているが、寒いと感じる程ではなくて、心地良い。曇っていてジメッとしているから、歩いているうちに蒸し暑くなる感じの気温。

 外で半袖を着る事はないから、単純に驚いているのだろうか?

 「半袖でえぇと思って……太陽出てへんし、暗いし」

 日焼けの心配もないだろうし、こんな夜中じゃあ知り合いとも合わないだろうし、着替えるのが面倒だった事もあるし……。

 そっか、と納得した毛むくじゃらは、仕切り直すようにニコリと笑い、

 「凄くない?コレ」

 と、空を指差した。

 見上げた夜空一面には雲。何処に月があるのかも分からないほどの、分厚い雲。

 自動販売機でコーヒーを買って、飲みながらしばらく待つ事にしたのだが、いつまでも分厚い雲は分厚い雲のままだった。

 ここまで惨敗続きだと、なんとしても2人で綺麗な夜空を見てやろう!と言う闘志が芽生えてしまう。でも、今日の十五夜が見られなかったのに、十三夜を見てしまったら片見月になって縁起が悪いか?その場合は十日夜を見れば良いのかな。

 なんにせよ、晴れてくれなければ見る事は出来ない。

 「今日は無理やなぁ……。十三夜も一緒に見上げる?」

 「雲を?」

 多分ね!

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