トリオ 16
夕飯に味噌汁が飲みたい。と言った毛むくじゃらが買い物に行った。
出て行ってしばらくすると1代目の携帯が鳴り、具は何を入れたら良いのか?と意見を求められた。
冷蔵庫の中には殆ど食材がないから買出しと言う事になっていたので、味噌から買わなければ味噌汁が作れない。
「とりあえず、味噌と出汁。具は……ワカメかな」
貝類を入れたら旨味が出るのだろうが、俺は魚貝類がアレルギーで……待て、なにをシレッと俺の事情を押し付けようとしてんだよ!
「アサリとか、しじみとか入れても美味しいと思う!」
慌てて付け加えると、1代目はそれらを文章にして毛むくじゃらにメールした。返事は来なかったが、ちゃんと買ってくるだろうと待つ事しばらく。
ガチャ
帰って来た。
買い物袋をテーブルの上に置いた毛むくじゃらは、手を上げて軽く挨拶をしてから自室に着替えに向かい、その間1代目は買い物袋の中から材料物色。
毛むくじゃらは味噌を買ってきていた。その上で豆腐を1丁と、乾燥ワカメ。そしてねぎ。出汁の素となる物はなかったが、問題なく味噌汁は作れるだろう。何故なら、毛むくじゃらが買ってきた味噌は、お湯を入れれば出来上がるインスタントの味噌汁だったから。
そこへ豆腐をちょい足しするのか?
「今日は俺作るわ」
リビングにやってきた毛むくじゃらは、不安しかない言葉と共に台所に立つと、恐ろしい手付きで豆腐を切り、ネギを切る。こうして出来上がったのは冷奴。
味噌汁はどうしたぁ!?
次に出て来たのは1代目用にと作られたインスタントの醤油ラーメン。その横にはインスタントの味噌汁もある。
チン♪
レンジで暖められたご飯が、茶碗にすら盛られずにドンと俺の前に置かれる。そして味噌汁と冷奴。その隣には、納豆。
見事に大豆定食だ。
「体調悪いんやろ?とりあえず生活習慣を改めよか」
体調が悪いなんて一言も言ってない。それに、本当に体調が悪いのは食中毒を起こして間もない毛むくじゃらの方なのだ。
それが分かっているから1代目だけ別メニューなんだろうけど……。
「納豆そんな好きちゃうし」
アレルギーを持っている訳でもないし、味が苦手と言う訳ではないのだが、どうしたってあのいつまでも絡み付いてくるようなネバネバは好きになれない。
「あぁーあ。今、納子ちゃん泣いたわ」
誰。
毛むくじゃらは多分色々と調べたのだろう、納豆がいかに優れた食品であるかを説明し始めた。
納豆をグルグル混ぜながら。
なので、説明が終わる頃にはトロトロと言うのか、もっさりと言うのか、とにかく物凄い糸引く物体となっていた。
納豆巻きなら食べられるし、混ぜる前の、あまり糸が引かない状態なら食べられる。多少混ぜた所で、生卵を入れて飲むように食べれば問題もない。
それなのに、納豆と卵を混ぜると折角の栄養素が台無しになる。とか言って卵を使わせてくれない。
「……自分で食べぇや」
「しゃーないなぁ。あーんしてみ?」
「ぶっ!」
俺達のやりとりを聞いていた1代目がむせた。
「自分で食えるわ!」
あ。
「言うたで?じゃあ自分で食べや」
くっそ。