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毛むくじゃら 10

 日曜日の朝、普段ならこんな早くには目覚めないだろう時間に俺は多少の違和感で目が覚めた。

 なでなで。なでなで。

 何故だろうか、俺は毛むくじゃらに頭を撫でられているのだ。

 寝起きでボンヤリとしている頭で、寝惚けているのだろうか?と考えるが、毛むくじゃらは俺から離れて行くと櫛を手に戻ってきて、俺の髪をとかし始めた。

 何をしているのだろう?

 それに俺達はお互い気まずくて、ろくな会話もしてなかったじゃないか。それなのに、朝からなんだ?この異様さは。

 「あ、起きた?」

 そりゃ起きるわ。

 「何してるん」

 「ん~……なぁ、どんな夢見てたん?」

 先に俺の質問に答えてから質問をしろ!それに夢を見ていたのかどうかなんて起きた瞬間の衝撃ですっ飛んだわ!

 「覚えてない……なんで?」

 「ズット魘されてたで」

 魘されていた?どんな夢を見ていたんだろう?

 いや!待て。

 魘されているからと言って、お前は人の頭を撫でるのか!?髪をとかす意味はなんだ!?

 「なんで髪?」

 「なんとなく?はい、バンザーイ」

 良く分からないのに掛け声と共に両手を上げた俺のシャツの裾を掴んだ毛むくじゃらは、ぐいっと捲り上げてきた。

 セクハラで訴えてやろうか……。

 チョンチョン。 コンコン。 ギュッギュッ。

 毛むくじゃらは俺の胸、肋骨をグイグイと容赦なく押してくる。しかも無駄なく確実に痛い所だけを突いて来る。

 「っ!そこめっちゃ痛い!」

 「ここやろ?」

 チョンチョン。

 「痛いって……痛っ……」

 「見て分かるわ。もっさ腫れとる」

 そこまで言うほど腫れてはない。それに、熱もないから骨は折れていない……と思う。

 「安静にしてたら治るわ」

 「そう言うてから何日経つよ?1ヶ月くらいちゃうん?」

 「治るまで安静にしてたらええだけやろ?」

 「魘されてんのに?」

 痛いから魘されてる訳ではないと思うが……。にしても人の頭を撫ぜるのはやり過ぎだと思う!

 そんな濃い朝を迎えたのだが、後は普段通りのんびりとした時間を過ごし、そろそろ帰ろうかと言う所で毛むくじゃらにレジ袋を1つ手渡された。

 結構な大きさの袋の中にはカルシウム成分たっぷりなウエハースと、ゼリー飲料と、ブロックタイプの栄養補助食品が入っていた。

 「なんで?」

 受け取りを拒否する俺に、毛むくじゃらは自分の肋骨をチョンチョンと指し示してくる。それはまるで受け取らなければ肋骨を突くぞ。と、言っているかのようで。

 「……ありがとう」

 受け取るしかなかった。

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