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1代目 10

 その日は朝からツイていなかった。

 顔を洗おうとして洗顔料のチューブを握るが、残り少なくなっていたので出ない。

 ギュッと根元を掴んで搾り出そうとして飛び出る洗顔料。

 朝食にと食パンを焼きながら、久しぶりにラテを淹れようと牛乳を温め、ミルク泡立て器を出してスイッチオン。

 電池が切れていて動かない。

 仕方なくそのままカフェオレにした後、トースターから取り出した食パンは、黒く焦げてしまっていた。

 折角朝に起きたと言うのに、ちっとも三文の徳がない。

 だったら無理矢理にでも清々しい気分になろうではないか。そう思ったのがまた駄目だったようで、頭から液体洗濯用洗剤を被ってしまった。

 目に入っては大変だとスグに目を閉じ、手探りで台所へ向かい顔を洗い、その序にと流し台で髪も洗う事に。

 ゴシゴシと洗剤を流し、泡立たなくなった所でシャンプーのボトルを1回押した。

 ビュッと勢い良く出たシャンプーは、俺の掌にではなくズボンに着地。

 床にたれる前にズボンだけを脱ぎ、改めてボトルを1回。

 こうして無事に髪を洗う事が出来たのだが、洗濯用洗剤で随分と痛んでしまったようで、ギシギシと指通りが悪くなった。

 弟の誕生日だったのでクッキーを焼いたのだが、オーブンで子指を火傷。その上焼き加減をみるためにクッキーを4枚食べただけで胃が痛くなった。

 ついてない。

 こんな日は外に出ず、ゆっくり寝るに限ると言うのに、買い物に行かなければならない。

 ゆっくり歩いてスーパーに向かい、2千円を少し越えるだけの買い物をした。

 「このレシート1枚で抽選が出来ますよ」

 レジの人にそう声をかけられ、指し示された方を見ると、確かに小さな抽選会場が設置されていた。

 どうせハズレ賞のポケットティッシュか飴玉だろう。

 そんな気持ちで三角くじを1枚手に取り、開く前からハズレの文字を頭に浮かべる。

 しかし、開けた紙の中央には3等の文字が書かれていた。

 カラ~ン カラ~ン カラ~ン♪

 目の前で鳴らされるベル。

 「おめでとうございます!」

 こうして当たったのは、ガラス蓋付片手鍋18cm。

 朝から散々だったのは、この運をためておく為だったのか!

 と、言う事があっての土曜日。

 俺は自転車の前カゴに包装されたまま開封していない片手鍋と、クッキーを入れた袋を入れ、毛むくじゃらと1代目の家に向かっていた。

 2人の家に行くのは3週間ぶりだったので、物凄く行き辛かった。どんな顔をすれば良いのかも分からなくなっていた。だけど、今日は手土産があるんだ。

 行って、迷惑そうにされたら片手鍋だけ渡して帰れば良い。

 何度かそう考えて押した呼び鈴。

 物凄く緊張していた俺は、久しぶりですね。と笑顔で言いながら迎え入れてくれた1代目により救われた。

 「今日はお土産を持ってきました」

 そう言いながら袋をテーブルの上に置くと、

 「開けて良いんですか?」

 と、首を傾げてくるので、良いですよと頷く。

 箱を開けた1代目は、片手鍋を手におぉ~!と声を上げている。

 毛むくじゃらと1代目の家には、電子レンジしかない。

 冷蔵庫の中には調味料的なものも入っていないし、この2人は本当に料理をしない。

 それなのに、片手鍋。

 外食はあまり体に良くないと言うし、これを機会に自炊してくれれば良いな。とか偉そうな事を思っての事ではなくて、抽選で当たったから。

 インスタントラーメンを作る程度にしか使われなくても、使ってくれるだけで嬉しいな。と。

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