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俺 8

 スーパーで買ったのはビールのロング缶6本入りが2箱と、弟のチューハイ2本。子供ら用にと買ったサイダー1.5リットルが1本と野菜ジュースのパック。そしてスナック菓子が2袋。

 相当な重さになる。それなのに弟が全部持とうとするから、

 「俺もなんか持つわ」

 そう名乗り出てみたのだが、

 「じゃあ、俺の傘持って」

 と、傘だけを手渡されてしまった。

 スーパーから姉の家までは5分程。その間に弟は1回袋を下ろして休憩したので「持とうか?」と声をかけても、頑なに「余裕余裕」と言い張るから、応援だけしておいた。

 姉の家に着いて真っ先に目に入ったのは、テーブルの上にドンと用意されていた鍋のセット。雨が続いていて少し涼しかったから鍋にしようと思ったらしい。

 そんなテーブルの上に親父は買ってきたビールとお刺身を置くと、素早く飲み会を始めてしまった。

 「かんぱーい」

 親父達が乾杯するから、俺は手渡された紙コップに野菜ジュースを注いで乾杯の輪の中に入ってみた。

 お刺身を食べ終えた後は、鍋。

 最後は雑炊にするか、うどんにするか。と言いながら鍋に具材を入れて行く姉の手元を注意深く見つめる。

 出汁は味噌ベースではあるが油っぽくはない上に、市販の出汁ではないので問題なく食べられそうだ。

 具はレタス、もやし、きのこ、ささ身、焼き豆腐と、かなり美味しそうだというのに、最後の最後に入ったサーモン。

 魚が入ったので、アレルギーを持っている俺には少々危険な鍋になってしまったのだが、完全に鍋奉行と化した姉により、俺の器の中にドンドン野菜やきのこが入ってくる。もちろんサーモンも。

 魚のエキスだけでも少々不安がある中、魚自体を食べるのは恐ろしく危険。ならば必殺の。

 「食べて」

 弟の器の中にサーモン移動。

 鍋の中が徐々に空になって来ると、いよいようどんの出番。

 の筈だった。

 もう少しで気になっていたシメのうどんを食べられると思っていたのに、

 「10時には帰るからな」

 親父の言葉だった。

 「え?うどん……」

 この時点で9時50分、後10分でうどんが出来上がれば1口は食べられるが、残念な事に鍋の具はまだまだ残っている。

 「暑いんやし、雑魚寝でもええやろ?」

 姉は泊まって行くようにと遠回しに言うが、親父は帰ると引かない。それに完全夜型である俺も泊まるよりも帰りたい。しかし、うどんは食べたい。

 親父を見送り、うどんを食べてから帰る?

 しかし、親父の帰宅に便乗する事が1番問題なく、自然に帰る事が出来る方法。それを逃したら帰ると言い出す事すら難しくなるのではないか?

 残り10分、鍋の具を食べ尽くして、うどんを1口でも食べるぞ!

 「おーい、そろそろ帰るぞ」

 待って。まだ10時まで5分あるじゃないか!

 「俺泊まってくわー」

 グイーっとチューハイを飲み干した弟。すると親父の言葉を完全無視した姉が、

 「もうチューハイないわ。お前らビール飲めるか?」

 と、俺と弟にビールを勧めてきた。

 「飲まれへん事はないで」

 そう弟が答えるから、姉は俺に注目する。

 「帰りの電車で酔わんように飲まんとく」

 嘘ではない。

 だから、早くうどんを……。

 「SIN帰るで、用意し」

 えぇ~……。

 「うどん……」

 「俺が変わりに食っとく!」

 良い笑顔で親指を立てる弟。

 「……俺の分まで、頼んだ」

 「任せろ!」

 こうして帰宅する事になった訳だが、地元の駅に着いた所で親父がスーパーに寄ろうと言い出した。

 駅前にあるスーパーは夜の12時まで開いていて、冷凍食品が安いのだとか。

 なので行ってみると、確かに安い。

 「急がして悪かったな。なんか買ったるわ」

 十中八九お酒の事だ。

 俺はお酒売り場に行こうとする親父を引き止めると、ジュースが売っている冷蔵庫の前で立ち止まり、

 「これ、美味しそう」

 と、砂糖不使用カフェオレを手に取った。

 「それでええんか?あぁ、野菜ジュースも選び」

 良いのか!?

 無事に帰りついた後、親父は夫婦の部屋に。俺は自室に。時間はまだ11時前だったので、ここからの強制外泊を言われる事も覚悟していたが、何もない。

 なにはともあれ、難題かと思っていたお酒を断り続ける!と言うミッション、無事にコンプリート!

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