毛むくじゃら 9
初めて梅酒を漬けてみようと思う。
そう宣言したものの、果実酒用の瓶を持っていなかったので、日曜日に毛むくじゃらと2人でホームセンターに行ってきた。
梅の時期だからだろうか、小さい物から大きい物まで様々な大きさの瓶が売られていた訳なのだが、どれを選べば良いのか分からない。
金額の事を考えると、当然小さい物が良いのだが、小さい物では1.8リットルのホワイトリカーが全て入らない。
だったら3リットルのを買えば問題ないかな。
「あー、持たんでえぇ!」
毛むくじゃらは俺に、割れ物には触るなと五月蝿く言うので、
「じゃあ3リットルのん」
と告げて持ってもらう事にしたのだが、毛むくじゃらは、はいはい。とか返事したくせに4リットルの瓶を持った。
「それ4リットルやで」
「うん。知ってる」
知ってる!?
「3リットルのんやって」
3リットルの瓶を指差しながら訴えても毛むくじゃらはニヤニヤしているだけだ。
「酒何リットルって?」
「1.8。やから3リットルあったら余裕でいけるって」
「俺の言う事聞いて4いっとき。な?」
な?とか言われても……いや、でもこんなにも毛むくじゃらが頑ななのは何か理由があるんだろう。
でも、だからって結構値段も違うし、ちゃんと理由が知りたい!
「なんで?」
「酒が1.8やろ?で、梅は1キロなんやろ?」
うん。それでも2.8になるんだからギリいける。
「3でもギリいけるって」
「そんで、氷砂糖は?いくら入れるん?」
あ……。
「500グラム位……」
「で、3リットルでいけるん?」
「……溢れた」
毛むくじゃらは、しばらくの間ニヤニヤしていた。