俺 6
夜の7時頃、居候先から帰るとリビングには親父と弟がいて、なにやら話し合いをしていた。
喧嘩腰と言う訳ではないが、妙に静かに話す感じは聞いている方がソワソワする上に、内容が恐ろしく濃い。
弟の説明によると、旧母親は土曜日強制外泊を「子を家から追い出す行為」と、初めから良くは思っていなかったらしいのだが、いつまで経っても土曜強制外出が終わらない事で苛立ちに。
そして今日、旧母親は俺について弟に尋ねた。
「SINは何処行ってるん?」
半居候をしている事を親父にも、弟にも説明していなかったので、弟は少し前の情報を旧母親にした。
「ネットカフェ行ってるみたい」
「その金はアノ人らから貰えてるん?」
「貰ってないと思う」
ドカーン!
俺は、知らない間に旧母親の堪忍袋を突き破っていたのだ。
それで来週、旧母親がここに来ると言い出しているらしく、弟は親父に「どうする?」と相談していると言う訳だ。
どうすれば良いのか、俺が取るべき行動は明白。
「オカンの所、電話して」
弟が携帯で旧母親の家に電話をかけ、俺はそこで説明をした。
強制外泊のある土曜日には友達の家に行っている事と、毎週土曜日が楽しみである事を。すると旧母親は徐々に冷静さを取り戻し、
「ケンに、来週来る時に気をつけて来るんやでって言うといて」
と。
良かったと胸を撫で下ろした時だった、旧母親は言葉を続けた。
「その友達に会いたいから、連れといで。そっちの駅まで行くわ」
「え?」
「そうやなー……8時位に着くわ」
「え?」
「駅のファストフード店の前な」
プツッ、プー、プー、プー.
えええええ!?
友達と会う事で俺のした説明の真意を測ろうとしているのは分かるし、急がせた理由も小細工が出来る時間を与えないためなのだろうが、やる事が姉より酷いわ!それで行かなかったり遅刻したりしたら直接ここに来る気なんだ。
8時までに、駅前に行かなければ!
慌てて自室に向かってパソコンを立ち上げ、毛むくじゃらにメールを送る。
“至急駅前のファストフード店前に来て”