トリオ 11
捻挫している事がばれないよう、出来る限りソファーに座ったまま動かずにいたのだが、トイレに立った時に指摘された。
「足痛いんですか?」
態々1代目が声に出すから、毛むくじゃらも俺に注目する。
俺の中では捻挫をバレないように過ごす、と言うトライヤルが発生しているので、誤魔化すしかない。
「足、痺れてるだけ」
こうして左足でポンポンと跳ねてトイレまで移動し事なきを得たのだが、その直後買い物に行こうという事になり、スーパーまでの徒歩移動。
ゴールデンウィークだから散歩を兼ねて、とか言う毛むくじゃらなりの考えがあっての事だったので、断り辛い。
1歩1歩慎重に歩く俺と、景色を眺めながらズンズンと歩く毛むくじゃらと1代目の間は、徐々に開いていく。
なので毛むくじゃらが振り返ってきた時、その姿はかなり小さく見えていた。
「足痛いん?」
俺には捻挫がバレては駄目と言う遊びをしているんだから、聞かれたって誤魔化すしかない。
しかし「痺れている」と言うのは不自然過ぎるし、景色を眺めていたとか言ってもスーパーの中でも俺は慎重に歩き続けなければならない。
捻挫だとバレなければ良いんだ。
「少し痛い」
「ちょっと待ってって声かけぇや。あのままやったら俺、地の果てまで行く所やで?」
地の果てって何処だ?
「そん時は、1週回って来るの待つわ」
「1週回らんし」
「じゃあ、何週するん?」
「5週」
「それ、回ってますよね!」
意味もない俺達の会話に全力でツッコミを入れてきた1代目は、笑っていた。
「昼寝1回分の笑いですね」
「えぇ!?」