毛むくじゃら
俺は人見知りである。
ちょっとやそっとの人見知りではなく、物凄い人見知り、もはや人間嫌いと言っても良い程だ。
慣れていないとどうしたって警戒してしまうので、何も喋れなくなる。
しかし、接客業をしていた頃はちゃんと受け答えが出来ていたし、セールスの電話なんかもちゃんとハッキリと「いらない」と言える。
1番苦手なのは、ちょっとした知り合い、だ。
例えば友達の兄弟や、良く行くスーパーのレジのおばちゃん。もちろんご近所さんも苦手だ。なので学校なんて所は恐ろしく苦手で、クラス会でビンゴゲームなんてあった日には、全力で揃わない事を心の奥底から願った。
あの「リーチ」「ビンゴ」の掛け声すら上げられないのだ。
人に慣れるのには時間がかかる。本当にかかる。いまだに1代目にすら緊張しているのだから1年やそこらでは慣れない。
慣れた人にはとことん馴れ馴れしくなるので、唐突に嫌われる事が多い。
折角慣れても結局嫌われる。そんな経験から余計に人に慣れ難くなったのだろう。
故に友達は1人しかいない。コイツしか残ってくれなかったのだ。
「な、毛むくじゃら」
「なにが!?」