1代目 3
毛むくじゃらと1代目が住んでいるのは2LDKのマンション。
この部屋を決める時、いくつかの候補があったらしいのだが、今の部屋を選んだ理由は1番広くて、家賃が1番安かったから。
マンションから最寄り駅までは、歩くなら至って普通に20分はかかってしまうし、夜道は非常に暗い。オートロックでなければインターフォンでもないので少々防犯意識の低い建物となっている。
それでも毛むくじゃらは車を持っているので駅までいくら遠かろうが関係ないし、道が暗くとも問題ない。
問題なのは1代目だ。
車も自転車も持っていないので、その20分はかかる駅までの道を毎日毎日歩いている。
何か理由をつけて自転車をプレゼントしようかな?
ボンヤリとそんな事を思っていたので、1代目に誕生日を聞いてみる事に。しかしとっくの昔に終わっていた。
1番近いイベントと言えばバレンタインがあるが、チョコではなく自転車は不自然な気がする。
俺の自転車を貸しても良いが、それだと警察に防犯登録確認をされた時、面倒な事になりそうだ。
ここは年上の余裕と称して“イベントはないけどプレゼントしよう大作戦”で行こうではないか!
だったら早速話を振ろう。
「ここから駅まで遠くないですか?」
尋ねると1代目はニコリと笑顔で、
「遠いですけど、良い運動になってますよ」
と言った。
そうか、良い運動だったのか。