地球
福岡?春日?聞いたことない地名がでてきた。
しかしヴァイスは一つの可能性を思いついた。ここは自分のいた世界ではないと……
ヴァイスがそう思いついたのはわけがある。ヴァイスが暮らしていたアクリア王国の友好国の一つであるレイナント王国、そこで千年前勇者召喚という異世界から勇者を召喚する儀式が行われそこで召喚された勇者が日本の東京と呼ばれる場所から召喚されたという伝説がある。
伝説といっても勇者が持ち込んだ知識であの世界の暮らしが豊かになっており、勇者が知識を総動員して作った和の国と呼ばれる国が存在していたからだ。
よってヴァイスは異世界があるということは理解していたし、この場所が和の国ではなくて地球だということは周りの景色から感づいていた。
「あなたはだーれ?」
ヴァイスがそう聞くと「私は早河彩音!向こうのイケメンが早河信二!
私達は夫婦よ!坊やの名前は?」
「…………わかんない………」
ヴァイスはそう答えた。この世界の人達は伝説によれば魔法も魔物も見たことないとそう伝えられていたからだ。それにヴァイスはもうわかんないのだ。先程死にかけていたはずなのに今まったく知らない場所で知らない人から話しかけられてる状況、そして知識がこの場所を自分のいた世界ではないと教えていること。そしてなにより両親から捨てられたことによる生きる意味の喪失、確かに生きたいと願ったが生き残ったことによりこれからどうすればいいのか?という目標の喪失。
さまざまなことが重なりヴァイスはもう自分が何なのかわかんないのだった。
「わかんない……か、記憶喪失なのかな?両親が探してるかもしれないし、よし!とりあえず坊や!家に来なさい!」
そう言うと彩音はヴァイスを抱き抱えて車にのせた。
「……誘拐ではないよね………」と信二は呟いていたが。
そして彩音はヴァイスを家に置いて信二にヴァイスを見ているように言ってどこかに出掛けていった。
「急にごめんね?彩音は一度決めて動き出したら止まらないんだよ。
けど間違ったことは絶対にしない。僕はそう思ってるし今までもそうだったから安心して!とりあえず何か食べながら待ってようか。」
そう言うと信二はなにかを作り始めた。そして20分ぐらいしたら
「できたよ!味は大丈夫と思うけどよかったら食べてね!」
それはチャーハンだった。ヴァイスは恐る恐る口に運んで一口食べるとバクバク食べ始めた。
美味しかった、そして暖かかった。自分の為に作ってくれた…そう思うと涙が出るほど美味しかった。
「どうしたんだい坊や?急に泣き出して……」
知らない内に涙がでてたようだ。
それは……とヴァイスが答えようとしたとき
「ただいま!」
と声が聞こえたと思うと彩音が部屋に入ってきた。
「お帰り。そしてどうだったんだい?」
信二が訪ねると彩音は
「坊やはこれから私達の子供にするから!」
……………え?