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第7章  人の命(10)

 ざっと何かが這う音がしたかと思うと、三人の男の腹や胸から黒い槍のようなものが突き出す。


 ドクン。


 自分の身体の中で、そんな音がした。 



 さらさらと音を立てて、男たちが粒になって崩れていく。着物と刀がごとんと音を立てて地面に転がった。


 そしてリリアの周りは、黒く滑った触手のような僕の()が、3つに分かれて取り囲んでいた。



「俊にい…」


 リリアのささやき声で、僕は我に返った。


 久しぶりだからかな。たった三人を飲み込んだだけなのに、身体が重くて、思わず膝をつく。


「やめて。リリア。人を殺さないで」


「俊にい…」


「僕のような…化け物にならないで…」


 尾がしゅるしゅると音を立てながら一つになり、僕の身体に戻ってくる。いつ感じても気持ち悪い。まるで悪魔のような、おぞましい僕の尻尾。リリアが、彩乃が怖がる僕の本当の姿だ。



「誰が化け物なの…」


「リリア?」


「俊にいは化け物なんかじゃないっ!」


 リリアが眉を寄せて顔を歪めながら、僕の傍に駆け寄って膝をついた。


「あたし、知ってる。昔、俊にいが、あたしを助けるために、この力を使ったの…覚えてる」



 そう。昔、まだ妹が小さいころ。両親が亡くなって、二人っきりで暮らしていた安いアパートで、真夜中に押し入った泥棒にリリアを人質にされた。


 気が動転した僕は、その泥棒を一瞬で殺してしまった。この力で。


 そのとき、初めて僕の尻尾を見たリリアは、驚いて、びっくりして、泣き出して。僕は泣き止むまで、ずっとリリアを抱きしめていた。だからずっと見せないようにしていたのに。つい出してしまった。



「あたし、びっくりしたけど、化け物だなんて思ったことないっ! 化け物なんて絶対思ってない!」


「リリア」


「今だって、あたしを守ってくれて。こうやって、力を使って。でも後悔して。しかも辛い思いして」


 リリアの瞳から雫が落ちる。ぽたり、ぽたりと目の前の地面に染みができた。


「それぐらいだったら、あたしが殺す」


 絞り出すような低い声。


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