表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/639

第7章  人の命(6)

 肩で息をする総司と平助。その場で立っているのは僕たちだけで、敵は皆、地面で事切れていた。


 つかつかと平助が僕に寄ってきて、胸倉をつかんだ。


「お前なっ! いい加減にしろよ」


 ひるむ僕に平助が言葉を続ける。


「敵は殺せ! 斬れ! 避け続けたって、消えてくれないんだぜっ!」


「でも…」


「でも、も、ヘチマもあるかっ! 結局、お前が避けた敵は俺か総司が斬るしかねぇんだからな。分かってんのかよ」


 あ…。


「俺らに斬らせて自分は逃げるだけかよ」


 まぁまぁまぁ…と総司が割って入る。


「人を殺すのは、最初は躊躇するもんですよ。私もそうでしたしね」


「ちっ」


 総司のとりなしに平助は舌打をすると、「折角、風呂入ったのに、血だらけだぜ」とぶつぶつ言いながら、先に行ってしまった。


「俊」


「ん?」


「平助が言ったことも、事実ですよ」


「うん…」


「逃げても敵は消えてくれません。斬るしかないんです」


「うん」


「大丈夫。最初は戸惑うかもしれないけど、彼らは敵なんです。まずは斬ってください。そのうち殺すことにも慣れますよ」


 そうへにゃりと笑って言うと、ちらりと彩乃のほうを見た。


「彩乃さんも、隊士でいる以上は、人を斬る覚悟が必要ですよ」


「…」


「今度、『死に番』というのを定めるそうです」


  しにばん…って何だろう。話の展開が見えなくて、僕はじっと総司を見た。彩乃も隣で総司の言葉を待っている。


「一番に敵に突っ込む役ですよ。怖気づく人が多いですから。そうすると生き残れるものも、生き残れなくなる。だから腹を括らせるために、順番に特攻役を作るんですって。土方さんの提案なんですけどね」


 総司はふっと笑った。


「怖い怖いと思って怖気づいていると、敵が異様に強く見えるものですからね。逆に自分が突っ込まなければと思っていれば、相手をよく見ようとするものです。だからじゃないですか。生き残るための一つの術ですよ」


 さぁ、行きましょうか…と独り言のように呟いて、総司は僕らに背中を向けた。



「お兄ちゃん」


「ん?」


「どうする?」


「うん…」


 僕は曖昧に頷いて会話を終わりにした。死に番の話を聞いても怖くはない。相手はたかが人間だし、彩乃だって遅れを取るようなことは無いだろう。


 それでも躊躇するのは、ここで戦うことが人を殺すことにつながる可能性があるからだ。僕の中での答えはまだ出ていない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ