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第7章  人の命(3)


「俊!」


 街に入ったとたんに総司が駆け寄ってくる。その後ろに平助もいた。彩乃もいる。


「あ~、逃がした。ごめん」


 へらへらと僕が笑うと、平助が平手で僕の頭を叩いてくる。


「お前、中途半端過ぎ!」


「あはは~」


 笑ってごまかす。


「まあ、他の奴らも逃げちゃいましたけどね」


 総司がそういってへにゃりと笑った。それでもかなり斬ったんだろう。総司には珍しく返り血が顔にまで飛んでいる。


 見れば平助も羽織に派手に血が飛んでいた。慌てて彩乃に目をやれば、こっちは大丈夫だったようだ。血で汚れた雰囲気はない。僕の心配に気づいたのか、彩乃はにこっと笑って見せた。


「一旦もどりましょう」


 ふと見ると、向こうに他のメンバーも集まりつつあった。捕縛されたものをつれていたり、血が飛んだ羽織を着ていたり。怪我をしたものもいるようだ。まあ、あまり重症じゃなさそうだけど。


 屯所に戻って、見回りを交代する。


 僕は縁側で刀を出して手入れし始めた。刀ってさ、血を吸うんだよ。いや。マジで。


 男の頬を斬った切っ先の部分に赤く血がついている。もちろん鞘にしまうときに拭ったんだけど、それぐらいじゃ取れない。時代劇なんかで、ひゅって剣を振って、血を飛ばすじゃない。確かに血は飛ぶんだけど、それだけじゃ刀に残った血は消えない。


 刀って鉄でできているけど、その鉄の構造は目に見えない細かい穴が空いているようなものらしい。どうやらそこに血が溜まっているらしくて、まるで血を吸っているかのように見えるんだよ。


 一応、井戸で一度流してきたから、それなりに血は落ちているけど、そのまましておくと錆びるので、何度も打粉を振ってはふき取った。


「人を斬ったか」


 うぉ! 思わず飛び上がりそうになる。殺気はないから、純粋にびっくりしただけ。


 斉藤だよ。吸血鬼を驚かすことができる人間って、少ないと思うんだけど…。


「血曇りをしている」


「ああ。習った技が役に立ったよ。抜き打ちで敵を斬った」


「止めを刺したか?」


 あ~。う~。と僕は口ごもった。斉藤がじろりと睨んでくる。


「お前」


「あ、いや、刺そうとしたら、逃げちゃって」


 へへへと笑うと、斉藤はため息をついた。


「刀を抜く以上は、斬れ。殺せ。いつか、その甘さがお前自身を殺すぞ」


「あ~。うん」


 じろりと横目で睨まれる。怖いなぁ。


「覚悟が無いなら刀を持つな」


煮え切らない僕の態度に、斉藤が不機嫌になる。


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