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第7章  人の命(1)

「散れ!」


「逃がすな!」


 怒声と共に逃げる男たちと、それを追う僕たち。政変の後、尊皇攘夷派の残党を京から駆逐するべく、僕らは見回りを強化していた。


 真っ昼間の街中。必死で走る数人の後ろを、僕はとりあえずついて走る。彩乃も僕とほぼ並んで一番後ろを走っていた。


 できれば怪我しない、怪我させない、そして絶対に死なない、殺さない。味方はもちろん。できれば敵も。


 なんか標語みたいだけど、とりあえず彩乃と僕の合言葉。

 


 これがなかなか厄介だ。何しろ敵は死ぬ気でやってくるから、怪我で済まそうとしているのに、諦めてくれない。


 それでもなんとか僕と彩乃は本気を出さずに、のらりくらりと、壬生浪士組の一員としての体裁は保ちつつ、敵と対峙するのを避けていた。


「俊、そちらへ」


 総司の指示に従って、脇の道に入る。挟み撃ちだとやばいなぁ。


 僕としては逃がす気満々なんだけど、敵さんが殺る気(やるき)満々の場合があるわけだ。



 敵を正面から先頭切って追いかけているのは、本日の合同チームメンバーの一人、平助。さすがあだ名の通りの「さきがけ先生」。とにかく敵に向かって突っ走る。


 僕は角を曲がったとたんに殺気を感じて後ろに跳び退った。その瞬間にヒュンッと音がして、刃物が首の位置に走る。さすがの僕も首が飛んだら死ぬよ。


 ふぅ、危ない。


 息をつく間もなく、次の刀が飛んでくる。


 どうやら敵方は散り散りになったらしく、僕の目の前にいるのは荒い息で刀を振り回しているもじゃ髭の男だけだ。


 銀色のきらめきが目に入って、慌てて僕はもう一度刀を避けた。


「俊!」


 敵の後ろから声がしたかと思うと、敵の動きが止まる。斬り上げた切っ先に沿って、血しぶきがあがり、その向こうに平助が見えた。


 やるなぁと思って、ぽけらと見ていたら、つかつかと歩いてきて、平助は僕の襟首をつかんで揺さぶり始めた。


「お前な! 刀抜けよ! 死にてぇのかよ。馬鹿野郎!」


 思いっきり耳元で怒鳴られたよ。うう。耳痛い。


「大体、お前」


 さらに文句を続けようとしたところで、平助の後ろに剣先が見える。思わず平助を片手で抱えて、とっさに1mぐらい飛び退いた。


 とたんに落ちてくる真っ向斬りの刀。もう一人いたわけだ。


「きぇ~」


 そんな奇声をあげて、敵は八相に構えて斬りかかってくる。あ、やばいね。平助は状況が飲み込めてないみたいだし。


 軽くトンと平助を後ろにはじくと(それでも結構な力だったらしくて、どさりと尻餅をついた音がしたけど)、飛んでくる刃を半身で捌いて僕は抜き打ち様に相手の顔に斬り付けた。いわゆる人中という鼻の下の急所を狙う。


 これは斉藤に教わった形だ。習っとくもんだね~。


 人中には入らなかったけど、頬を斬られて相手がひるんだ。その隙に上段の構えをとって相手を威嚇する。


上段というのは頭の間上の構え。

八相というのは、肩というか頭の横、耳のあたりでの構えです。

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