表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/639

第6章  政変…のはずですが(16)

 しばらく歩いて止まったところで、近藤さんが皆の前に出て声を張り上げた。


「これより会津候預かり壬生浪士組は、御花畑の警護をいたす!」


 …。

 え?


 まわりも一瞬ざわめいた。


「我らが警護すべきは御花畑。一同ご油断召されるな!」


 あ~。本気なんだ。御花畑って、本当にあの花がたくさん咲いている花畑のことかなぁ。でもほら、御所っていろんな名前があるからねぇ。門の名前だって特殊だし。


 とか思いながら、僕らがついたところは、本当に花壇の前だった…。


 御所の南門である建礼門の前にあった御花畑の前に陣をはり、とりあえず警護。っていうか、待ち?


 困ったね~。何もすることが無いんだよ。でも警護という以上、遊んでいるわけには行かないから、みんな立って、じっとしている。こそこそと話をしたりするけど、あんまり大声で話すわけにもいかない。


 警備員さんとか、街角のおまわりさんとか。実は結構大変なんじゃない? と思う。正直、ここにいると何が起こっているか、さっぱりわかりません(笑)


 そこへ弓の名人の早太郎くんが通りがかる。一応、連絡係とかで、役付きの人たちは局長と平隊士の間をうろうろしていた。


 ちょいちょいと手招きすると、人のよさそうな顔で近づいてくるので、こっそり聞く。


「どうなってるの?」


「御所は会津藩と桑名藩で固めてるらしいっす」


 よくわかんないけど、とりあえず御所を守れと。それで、全員集合~って感じか。実際、善右衛門さんから聞いた話を総合すれば、今、会津の藩兵は二倍いるわけで…。警護をするには好都合だよね。


「この後どうなるのかな?」


「さぁ」


 あ、やっぱり。


 結局、一日以上拘束されて、解散。僕たちがやったこと…ずーっと立ってて、途中で居眠りとかして、座り込んだりとかして、また立ってて。


 いや~。これは大変だわ。僕は基本的に眠らなくてもいいけど、とにかくヒマ! 



 なんか納得がいかないまま、もう警護はいいという話になったらしくて、とりあえず整列して屯所に帰ることになった。行きと同じく行列が辛い。


 ようやく屯序に着けば何もしていないのに疲れきった僕たちを、彩乃が心配そうな顔で出迎えた。


「お兄ちゃん?」


「話は後ね」


 とりあえず近藤さんから慰労の言葉を聞いて、僕たちは解散した。



 そして僕たちの部屋。


 まわりから聞こえるのは爆睡してるいびき声。


「どうだった?」


「何もなかった」


 え? と驚く彩乃。


 僕は思わず深いため息をついた。緊張しまくっていたのが馬鹿みたいだ。


「御花畑の前で、ぼーっとしてただけ」


「え? 御花畑? 花壇のこと?」


「まあ、そんな感じ? 結局待機だけで終わったんだよね~」


 彩乃がほぉっと息を吐いた。


「みんな無事で良かった」


 あ、そうか。そうだよね。


 まずはそこを喜ぶべきだった。僕は緊張しすぎて、かえって拍子抜けしちゃったから、おかしな感じだったけど、みんな無事だったんだよね。


 思わず彩乃の頭をなでようとして、ペシと手をはたかれる。大して痛くはないけれど、反射的に手をさすりながら、僕は彩乃に笑いかけた。


「彩乃の言うとおりだね。良かったよ。みんな無事で」


「うん。そうだよ。良かったね」


「そうだね」



 こうして僕たちの「八月十八日の政変」は終わった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ