第6章 政変…のはずですが(12)
そして夜があけた。
「彩乃さーん。壬生寺に行きませんか~」
Xデーが近づくにつれて朝から緊張しまくっている僕とは裏腹に、総司がのんきな声で彩乃を誘いに来る。
僕が斉藤に剣を習っている間、彩乃は総司と出かけていた。その行き先が壬生寺。聞いたら子供たちと鬼ごっこだの、かくれんぼだのしているというので一緒に行ったことがある。
暑い中で、子供たちは元気に走りまわっていた。僕は日光の下に出る気になれなくて木陰にいたけどね。最初に聞いたときにはびっくりしたけど、デートとは言え馬鹿みたいに健全だから、まあいいやと思っていた。
彩乃は子供と一緒に遊べて大喜び。そんな彩乃を見て、総司も大喜びで、目を離すとすぐに二人で遊びに行っている。
「あ~、今日は僕も行く」
「は?」
総司の目が丸くなる。
「今日は斉藤との稽古は休みにしたから」
「えっと、巡察は…」
思わず僕は吹き出した。
「僕が巡察だったら、君もでしょ。組長さん」
「あ」
バツが悪そうにへにゃりと笑う総司。
ごめんよ。でも今日はダメ。目を離せない。
壬生寺の境内は陽が差していて、鳥が鳴いていて、のどかで。暑い。
「もう~いい~かい」
子供の声が響く。僕はぽけら~と日陰になっていた境内の石に座って、遊ぶみんなを見ていた。
あまりにのどか過ぎる。5つか、そのぐらいの女の子が目の前に立った。
「おじちゃんはやらないの?」
むっ。
「おにいちゃんって呼んでよ。やらないけど」
「え~。一緒に隠れようよ。あたし、いい場所知ってるよ?」
そう言って、その子は僕の手を引っ張る。ぐいぐい。結構力強い。
仕方なく僕はその子に手を引かれて、木が茂っているほうへと向かった。
「あそこ!」
女の子が指差したのは、高い木の上。
いやいや。普通だったら登れないから。僕だったら背丈があるから登れると思ったのかなぁ。
「あそこは高すぎるでしょ」
「でもあそこ行きたいの! 登って!」
女の子は必死の目をして僕を見る。
「いつも総司おにいちゃんも、彩乃おねえちゃんも、木の上にいるんだよ。あたしも登るの」
あ、そういうこと。自分も真似したいんだ。
僕は枝ぶりをじっくりと見た。まあ、人間でも登れなくはないか。最初に飛びついて、身体を上げれば、あとは登れなくない。




