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間章  壬生寺にて

-------- 土方視点 ------------


 夏も真っ盛りとはこのことだろう。真夏の影は、ほんの気持ち程度だけで、太陽がここぞとばかりに照り散らかしている。あちぃ。


 かっちゃんこと近藤局長は、無事大阪から帰ってきたが、またしても芹沢さんが無茶をやったこともあって、相撲巡業って話になった。まったく頭がいてぇこった。まあ、終わりよければ全て良し。巡業も成功しちまえばこっちのもんだ。


 俺は夕暮れ時になったら、かっちゃんと飲もうと、冷酒を買い、そして棒振りから枝豆を買った。ぶらぶらと屯所に向けて帰る。


  壬生寺に通りかかったところで、目の前を数人の子供が騒ぎながら駆け抜けて行った。子供は元気なもんだ。


 そのまんま目で追うと、そこには目隠しをして子供を追いかけている総司と、手を叩きながら逃げ回っている子供と、あの女がいた。


 彩乃。


 人形みたいな外見だと思っていたが、今浮かべている表情は生き生きとしていて、人形どころか、生気あふれる子供と一緒だ。一心不乱になって、総司の周りで手を叩いている。


 子供もそれがわかるのか、彩乃を仲間のようにして遊んでいた。


「暑いのによくやる」


 俺は流れてくる汗を袖で拭って空を見上げた。これでもかというぐらい、いっそ潔いほどに晴れた空だ。


 もう一人いることに俺は気づいた。木の下で申し訳程度の影の中に座っていた。宮月だ。こいつの周りにも子供がまとわりついている。


 見ていると一生懸命、何かを作っていた。それは見る見る間に、横棒と縦棒の組み合わせになっていく。それをその男が両手で起用にひねると、つーっとそれは空に飛び出した。


 宮月の周りにいた子供が、それを追いかけて走りだす。器用な奴だ。



 俺はあちぃし、見ているのにも飽きたので、その場を離れようとしたときだった。ふっと奴の周りの空気が凍ったと思ったら、手に持った小刀を子供のほうに投げつけた。



 俺は一瞬ガキを殺したかと思って、肝が冷えたほどだ。


 次の瞬間、子供が泣き出して、宮月に向かって駆け出し、抱きついた。そのまま宮月が子供をあやしている。


 総司が気づいて、宮月が小刀を投げたほうに行って、何か紐のようなものを持ち上げた。



 縞がある毒蛇。


 …マムシだ。


 子供の足元に来た奴を、とっさに小刀を投げて殺すとは。


 


 小刀を投げて突き刺すのは、意外に難しい。俺もガキのころに練習したから、分かる。


 だがそれをいとも簡単に、投げつけ、仕留めてみせるとは…。


 強いかと思って打ち合わせてみれば弱い。わざと打たれてやがるふうじゃねぇところがなんとも言えねぇ。そのくせ、へんなところで妙に気に障る野郎だ。


 内心で舌を巻きつつ、俺はその場を後にした。


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